心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記 11日目 ②~

龍泉洞入口と美味しい湧水

岩泉中学校から25分程のんびり歩き、ついにこの旅最後の目的地、龍泉洞に到着。小さい頃に知って以来、ずっとずっと来てみたかった場所。日本三大鍾乳洞として、全国区の知名度を誇ります。

鍾乳洞に入る前に、まずは湧水で乾いた喉を潤します。僕が子供の頃に龍泉洞を知ったというのも、この龍泉洞のミネラルウォーターがきっかけ。テレビの通販番組で紹介され、その際に映された内部を見て、あぁ!すっごい場所なんだなぁ、と思ったものです。

湧き出す水は、この時期にしては冷たすぎずの適温。含んでみると、しっかりと存在感を感じるまろやかで重ための口当たり。それだけミネラルが含まれているということなのでしょう。すっきりタイプの湧水とは違った印象です。それでも水の硬さは無く、喉をするりと下りていきます。うん、このお水は美味しい。

龍泉洞の入口を流れる大量の湧水

入場券を買い、早速『龍泉洞』の内部へと入ります。中の気温は、先程の湧水と同じくらいの9℃ちょっと。Tシャツ1枚だとひんやりとします。

足元からは、絶えず轟く水の音。下を覗いてみると、地底湖ならぬ地底河川、地底渓谷が形成されています。その水量はものすごく豊富。地下というロケーションも手伝い、少しばかり怖くなるほど。

龍泉洞天の裂け目のような回廊

入り口付近から早速狭隘な箇所が。天から裂けてできたような狭い隙間を進みます。

ここからは、龍泉洞の写真をメインにお伝えしたいと思います。

龍泉洞足元には澄んだ地底河川

足元には引き続き地底河川が寄り添いますが、その流れはだいぶ穏やかになり、そこが見える程の透き通った姿を見ることができます。

龍泉洞観光コースにしては狭い通路

道は時折かなり狭くなり、向かいから人が来たらすれ違えない程。閉所恐怖症の方は無理なのではないか?と思う圧迫感。

龍泉洞足元には底なしの地底湖が

足元へと目をやると、水を満々と湛えた地底湖が。水底を見ようと思っても、複雑な鍾乳洞の内部らしく、入り組んでいて見ることができません。一体どれほどの深さと奥行きがあるのでしょうか。

龍泉洞音無しの滝

周囲が開けたと思うと、そこには連続して多種多様な鍾乳石が並びます。

龍泉洞地蔵岩

こちらのお地蔵さんは、水の力が作った自然の造形。人の造ったものかと思ってしまうくらい、お地蔵さんの形をしています。

龍泉洞足元にたくさん生える石筍

足元には、石筍と呼ばれる鍾乳石がたくさん。その名の由来が手に取るように解かる姿に、妙に納得してしまいます。

龍泉洞妖しくライトアップらされる月宮殿

今通ってきた空間を振り返ります。ここは月宮殿と呼ばれる場所で、鍾乳石が織り成す空間が、月の世界のように見えることから名付けられたそう。

洞内はLEDによって刻一刻と色を変えられ、一人で来た僕はちょっとした恐怖すら覚えるほど。まさにこの世のものとは思えない、別世界が広がっています。

龍泉洞洞穴のカーテン

龍泉洞は洞窟全体が国の天然記念物。気の遠くなるような時間を掛けて、水と山が作り上げた造形が、手に取るほどの近さに感じられる貴重な空間。

龍泉洞吸い込まれるような青さと深さの第一地底湖

そして遂に姿を現した、第一地底湖。僕は子供の頃ここの映像を見たのでしょう。その時に感じた、戦慄すら覚える妖しい碧さ、深さがはっきりと蘇ります。

龍泉洞底知れぬ深さに戦慄する第二地底湖

ここからは、第二、第三と地底湖が続きます。地底湖を満たす水はものすごい透明度を誇り、地底湖を形づくる岩肌の質感まで伝わります。それでも見通すことのできない、水底。落ちた時のことを想像してしまい、背筋が一瞬凍ります。

龍泉洞階段の続く健脚向きコース

湖の底が深ければ、天井の高さも相当なもの。地底湖を見た後は、洞窟の屋根を目指して、急で長い階段が始まります。時間や体力が無い方は、地底湖で折り返した方が無難。このコースは、一般見学用にしては狭い場所や長い階段があり、健脚向きかもしれません。

龍泉洞階段を上り展望台から地底湖を望む

険しいみちのりを登り、展望台へ。覗いてみると、先程見た地底湖をはるか遠くに見下ろします。ライトアップされた鍾乳石と、遠くに満ちる碧い水。気をしっかり持たないと、吸い込まれてしまいそうな怖さがあります。

龍泉洞全体を覆う発達した鍾乳石

洞内の天井を伝うように進むこのコースでは、発達した無数の鍾乳石を間近で見ることができます。形成されるまでに相当な年月が掛かるという鍾乳石。龍泉洞は一体どれほど前からここに在り続けるのでしょうか。

龍泉洞展望台から眺める地底湖恐怖をあおる照明

やはり地底湖で折り返す方は結構いるようで、階段コースへと入ると人の姿も疎らに。そんなところでもうひとつ展望台が。奥の底から水が誘ってくるようで・・・。もうこの頃になると、一人ぼっちでやってきてしまったチキンな僕は、すっかり心細くなってしまいました。

龍泉洞地底湖も深いが天井も高い

自然に対する畏れ。人間の持つ本能をすっかり呼び起こされたところで、ようやく人々の賑わう声が。急な階段を下りきり、元のコースへと復帰します。

きれいな水と鍾乳石。これまで訪れた洞窟の感覚で入った、初めての龍泉洞。そこには想像を絶する空間が広がっていました。

コースをすべて回るなら、それなりの覚悟で行ったほうが良いでしょう。足腰にもきますし、サンダルやヒールでは無理。観光客相手と思いきや、本格的な探検気分を満喫しました。

未だ未解明計り知れぬ巨大な龍泉洞を抱く山

無事に地上の世界へと戻り、龍泉洞を抱く山を今一度眺めてみます。

この穏やかな山体に、龍ほどの長さを持つ鍾乳洞が隠れているなど、誰が想像できるでしょう。そう思える程の、普通の穏やかな山。

龍泉洞は、探索が開始されてからだいぶ経ちます。が、それでも最奥まで到達していないそう。一般の観光客に開放されているコースは700m。これも長い!と思うのですが、現時点で知られている総延長は、3600mもあるそう。

そして、知られていると書いた通り、その全容は未だ未解明。5km以上もあるのでは、と言われています。きちんと遊歩道が整備され、そこを歩いていても心細さを感じるのに、ここを探索しようと志す人々はどんな強さの持ち主なのでしょうか。僕には絶対無理。正直本当に怖かった。

秋の龍泉新洞科学館入口

外の程よく温かい空気で生気を取り戻したところで、隣接する龍泉新洞科学館に入洞することに。龍泉洞のチケットで入ることができます。

中は撮影禁止。なので入口の外観だけ。実はこちらの方が、ある意味もっと怖かった。龍泉洞に居たはずの人々の姿も無く、洞内僕一人ぼっち。通路もものすごく狭く、展示物もよりマニアックな感じ。そして、覆う空気感が物凄く昭和な感じ。いやはや、思う存分探検させてもらいました。

断片的な情報で知った美しい龍泉洞。実際に訪れてみて、その印象はガラッと変わりました。

さわりの安全な場所だけ見られる観光コースも、実際歩けば地底探検そのものの趣。700mもそのコースを辿れば、否が応でも自然の力、自然の怖さ、自然の神秘を感じるはず。

行ったことが無い人は行ったほうが良い。地上の世界から隔絶された、地球の内臓を垣間見てしまった。そんな感想を抱く、名実ともに立派な観光地でした。

心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記~

秋の大沢温泉山水閣豊沢の湯色とりどりの紅葉一幅の絵のような眺め
2015.10 岩手

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