心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記 11日目 ③~

龍泉洞観光会館

期待以上、想像以上であった龍泉洞の内部を探検し、程よくお腹が空いたところでお昼の時間に。龍泉洞周辺にはいくつか食事をとれるところがありますが、今回は県道を挟んで龍泉洞の向かいに位置する、『龍泉洞観光会館』にお邪魔してみることに。

龍泉洞観光会館龍泉洞ビール

1階は大きなお土産コーナー、2階へ上がるとレストランと団体用の大広間といった、昔懐かしい雰囲気の施設。早速レジでお食事と飲み物を注文し、窓側の席へと着きます。

まずは、龍泉洞といえば美味しい水!ということで、大人用のお水を注文。龍泉洞の水を使って醸造されたビールは口当たりが良く、味もしっかりありながら変な苦みや癖がありません。嫌な地ビール臭さもなく、先程見た龍泉洞の地底湖の清冽さを思い起こさせる、すっきりと美味しいビールです。

龍泉洞観光会館いわな寿司とまつたけそば

美味しいビール片手に、こんな雰囲気のお店で食事するのも久方ぶりだなぁ、などと物思いにふけっていると、注文した品が到着。今回は秋ということで、まつたけそばといわな寿司を頼みました。

まずはまつたけそばから。観光客向けでお手頃なお値段だったので、まぁ秋の雰囲気でも、と思って注文したのですが、意外にも松茸の香りが漂ってきます。

松茸自体は今年の生のもの、という訳ではなさそうですが、歯ごたえもしっかり残っており、噛むと独特の香りと味がじんわりと染み出てきます。そばつゆも松茸の風味を邪魔しない程度の塩梅。

続いてはいわな寿司。使われているのは岩泉町産のいわなだそうで、軽く酢で〆られ、生とはまた違った凝縮感を味わえます。

失礼を承知で書かせていただきますが、いわな寿司の看板に惹かれて入ったものの、ザ昭和!といった雰囲気のレストハウスとメニューだったので、正直期待はしていませんでいた。

そんな中運ばれてきたのは、意外にもちゃんと美味しいお料理でほっと一安心。本当に失礼なこと、書いてしまった。でもその意外性がまた、旅の思い出のひとつであったりもします。

秋の龍泉洞木々に彩られた小川

昼食を終え、バスの時間までのんびりぶらぶら。龍泉洞の横を流れる小川も、負けず劣らずきれいな水がさらさらと流れています。

そんな清らかな水辺を彩る、秋の山里の景色。春の華やかさも、夏の爽快さも、冬の厳しさも。四季それぞれ心に訴えかける力がありますが、僕にとって秋はそれが一番強い季節。

向かうものへの期待より、去りゆくものへの感傷。自らの色彩を失いながら燃え尽きようとする草木の色合いに、何か特別なものを感じてしまうのです。

秋の龍泉洞澄んだ池を泳ぐ鱒

あまりそんなことを考えてしまうと、秋に対する感傷と、今日岩手を去るという感傷が干渉しあい、大変なことになってしまう。気分を変え、再び当てもなく付近を散策します。

すると、きれいな水を湛えた池の中をゆったり泳ぐ鱒の姿が。これを見て、美味〇そうと思ってしまったことなど、決して人には言えません。

JRバス東北龍泉洞発盛岡駅行き

そしていよいよ、岩手周遊を終え、ついに県都盛岡へと戻るときが。龍泉洞の目の前のバス停より、『JRバス東北』の盛岡駅行きに乗車。龍泉洞から岩泉町の中心地を経由し盛岡まで、1日4往復運行される路線バスです。盛岡から龍泉洞を目指すなら、このバスがとても便利。

JRバス東北龍泉洞発盛岡駅行き休憩所道の駅三田貝分校

バスは小本街道と呼ばれる国道455号を、川に沿ってひたすら登ります。周囲はどんどん山が近くなり、色づく木々に車窓が染まります。

龍泉洞から走ること50分、途中の停留場である道の駅三田貝分校に停車。路線バスといえど長時間走るバスなので、ここでトイレ休憩がとられます。

短時間の休憩のため中を見ることは出来ませんでしたが、道の駅だけあり、いろいろと名物や地のものが売っていそう。時間に余裕があれば、ここで一旦下車し一本後のバスに乗る、なんてこともいいかもしれません。

JRバス東北龍泉洞発盛岡駅行き小本街道は北上山地へと挑む

狭い谷を川と国道で分け合うようにし、そこを縫うようにくねくねと登ってゆくバス。その川もどこかへいってしまい、ついに険しい北上山地越えに挑む覚悟を決めたようです。

周囲はまさに紅葉真っ只中。八幡平から始まり幾度と眺めた紅葉も、そろそろ見納め。どうやら僕も、東京へと帰る覚悟を決める時間が近付いてきたようです。

落葉松が彩るJRバスの秋の車窓

太平洋側では曇っていた空模様も、北上山地を越え下りへ差し掛かる頃には陽射しが戻ってきました。これから夕方へと向かう太陽に照らされる、数えきれぬほどの色付いた落葉松。見渡す限りの黄金色に、心の芯まで染められてゆくよう。

JRバス車窓湖の先には岩手山

車窓は落葉松の放つ黄金色の輝きに溢れ、何となく僕の旅のフィナーレを祝福してくれているよう。すると、そこに大きな湖が。傾きかけた陽射しを映す湖面の先には、岩手山の姿。ここにきて、まだ岩手を離れたくないという気持ちが溢れてきます。

JRバスフロントから眺める岩手山

落葉松に包まれた高地を駆け降り、だんだんと人家が増えてきます。そうすると盛岡まではあと少し。カーブを繰り返すバスの窓には、遠くに岩手山が見え隠れ。

11日前のこの時間、僕はあの山の裾野に居た。あの山が紅葉に包まれた姿を、確かにこの眼で見た。でもそれは遠い昔のことであるかのよう。長くて短い、濃厚な旅の終わりの気配に、僕の心も黄昏れ始めるのでした。

心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記~

秋の大沢温泉山水閣豊沢の湯色とりどりの紅葉一幅の絵のような眺め
2015.10 岩手

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