心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記 4日目~

大沢温泉湯治屋自炊部窓を染める朝の紅葉

今日も目覚ましに起こされない自然な目覚め。思い切り寝てすっきりしたと思っても7時台の終わりころ。家に居るときには考えられない健全さ。

障子を開ければ、朝の光に照らされた紅葉が部屋へと色彩を溢れさせる。寝起きに見るこの光景が、今自分が別世界に居ることを今一度思い出させます。

大沢温泉湯治屋自炊部食堂やはぎカツカレー

そしてまた今日も、お昼ご飯の写真から。もちろん今日も、やはぎでいただきます。やはりここに来て優柔不断振りを発揮し、メニューとにらめっこ。やはぎでお昼を食べられるのは滞在中4回のみ。数あるメニューの中から厳選しなければなりません。

やっと一つに絞ったのが、カツカレー。さくっと揚げられた大ぶりな活が嬉しい、ボリュームのある一皿。掛けられたカレーは、昔懐かしい黄色いカレー。僕はこの黄色いカレーが大好き。カレーとは黄色いものだと思って育ってきました。

大沢温泉山水閣豊沢の湯窓の外に広がるせせらぎと紅葉

サラダも載ったカツカレーで満腹になり、しばらく布団でころころし、お腹を落ち着けたところでお風呂へと向かいます。

向かったのは、大沢温泉にある3つの宿のうち最上級の山水館にある、豊沢の湯。安い自炊部に泊まってもこうしてこのお風呂が使える。これも大沢温泉の良いところ。

このお風呂は春から秋までは窓が開けられ半露天に。基本的に露天風呂好きの僕ですが、このお風呂だけは、露天に負けず劣らず最高のお風呂と思えるもののひとつ。

秋の大沢温泉山水閣豊沢の湯色とりどりの紅葉一幅の絵のような眺め

この巨大な一幅の絵のような眺め。これは半露天だからこそ味わえる、正に絶景。この写真だけで、もう説明する必要もないでしょう。大げさではなく、鳥肌の立つような感動すら覚えます。

大沢温泉湯治屋自炊部赤い電気傘

滞在中何度味わっても色褪せることの無い喜び。それがこの大沢温泉のお湯には散りばめられています。

秋が造る自然の彩と、それを切り取るようにして人が造った湯屋。そのコントラストに酔いしれ、部屋へと戻ります。途中に通る廊下もまた、その余韻を助長するもののひとつ。古い自炊部の建物には、深い味わいがそこかしこに隠されています。

そしてここにもひとつ、湯治屋になってから変わった点が。吊るされた電灯が、蛍光灯からレトロな雰囲気のガラスの傘をかぶった電球に。古き良き建物を一層引き立てています。手が加えられてあぁぁ、と思うことの多い僕ですが、このほんのりとした、違和感のないリニューアルのしかた、好きだなぁ。

大沢温泉湯治屋自炊部紅葉彩る秋の午後

浸かって、読んで、転がって。そんなことを日がな一日していると、もうこんな時間に。何もしていないのに、何故こんなに時が過ぎるのが早いのだろう。楽しい時間ほど早く過ぎてしまう。人の中には時間軸が幾つもあるように思えてなりません。

大沢温泉自炊湯治献立揚げのお鍋とキャベツ漬けと豚の味噌炒め

そして今宵も晩酌の時間に。お鍋は昨日の残りに大きな揚げを足したもの。炒め物は、キャベツの漬物と福来豚の味噌炒め。漬物から出る旨味が豚をより美味しくしてくれます。

湯治ではこうして漬物を活用すると便利。菜っ葉などはしおれがちで、大根やキャベツなどは使い切れない大きさ。そこで保存もきき、そのままでも、調理しても使える漬物たちが活躍します。

適当な料理と、パリパリ美味しいお漬物に合わせるのは、またまた紫波の廣田酒造店、純米吟醸あらえびす。見るからに濃そうな黄色い色が印象的。その見た目通りのとろりとした口当たりと甘さ、そして酸味。でも後味が妙に残ることも無く、残る印象は辛口のお酒。やっぱり岩手、何を飲んでも間違いありません。

障子からもれる灯りが風情を増す夜の大沢温泉湯治屋自炊部

夕餉の後は、静かに流れる夜の時間。お風呂へと何度も通る廊下には、夜にしか味わえない温かみが、各部屋の障子から漏れだします。この雰囲気が堪らない。障子一枚、ふすま一枚で区切られたこの空間だからこそ感じる、人々の湯治での営み。

鍵が無い、音がうるさい、そう感じる人の方が多いでしょう。そして自分自身も迷惑にならないよう、動くときは注意を払う必要もあります。でも、そんな環境に身を置くことなんて、今普通に生活をしていてあるでしょうか。

いや、今でも本当はあるはずなんです。でも、公共の場という意識が薄れてきた今、こうして過ごすこと自体、ある意味忘れかけていたことを思い出させてくれます。自分を心地よく律してくれる環境も、湯治の醍醐味のひとつなのかもしれません。少なくとも、僕は好き。

ゆったり流れる湯治宿での時間。今日で3泊目。早くも湯治生活の折り返し地点となってしまいました。でも焦らない。まだ半分も残っている。今日も満たされた気分で、いつもより早めに寝床に入ることとします。

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心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記~

秋の大沢温泉山水閣豊沢の湯色とりどりの紅葉一幅の絵のような眺め
2015.10 岩手

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