心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記 9日目 ③~

三陸鉄道北リアス線宮古駅

白い浜や岩に、青い空と海。そして茂る松という、文字通りの白砂青松の絶景を愉しませてくれた浄土ヶ浜を後にし、バスで宮古駅へと戻ります。

ここからは、浄土ヶ浜とともに僕を三陸へと誘い続けてきた『三陸鉄道』の旅。震災以前からの念願が叶い、ついに、ついに初乗車の瞬間を迎えます。

三陸鉄道北リアス線レトロ調車両

ホームへと向かうと、そこに停まっていたのはレトロ調車両!さんりくしおさい号と名付けられたこの車両に、初めての乗車で出逢うなんて。忘れかけていた鉄っちゃん成分が騒ぎ出してしまいます。

トンネルに入ると趣深い三陸鉄道レトロ調車両

もう何年も何年もテレビで見つつ、憧れるだけであった三陸鉄道。いよいよその僕の想いを乗せて、列車は宮古駅を出発。

三陸鉄道といえば大海原を望む車窓がまずイメージとして浮かびますが、実は意外と山深い路線。三陸ならではのリアス式の地形が、山と海を複雑に入り組ませている。考えてみれば当たり前のことなのですが、実際に訪れてみないことには、ピンと来ないものです。

そんなリアス式海岸を走る路線のため、三陸鉄道にはトンネルがたくさん。そんなときに魅力を発揮するのが、このレトロ車両の落ち着きのあるインテリア。

深い艶と木目が美しい木、重厚な雰囲気のシートやカーテン、真鍮を思わせる金属部の色使い。白熱灯の灯りがそれらをぼんやりと照らし、レトロ「調」であることを忘れてしまいそう。

三陸鉄道北リアス線車窓に広がる青い海

温かい雰囲気と、小気味良いディーゼルの響きに包まれた車内。トンネルに入る度に、鉄道の持つ郷愁や旅情に浸ってしまう。そんなことを繰り返しているうちに、ついに三陸鉄道は海沿いの区間へと差し掛かります。

さすがはリアス式海岸。あ、海!と思ったら、シャッターチャンスはもうおしまい。でも大丈夫。途中数か所にある絶景ポイントでは、減速や停車するなど、車窓を思い切り楽しませてくれます。

あまちゃんロケ地にもなった三陸鉄道堀内駅

山あり谷あり、川あり海あり。トンネルや橋梁をいくつも越えて三陸鉄道は走ります。その目まぐるしく変遷する車窓は、鉄道風景の縮図を見ているかのよう。初の三陸鉄道に、そしてレトロ車両の雰囲気に酔いしれ、写真を撮るのも忘れて列車に揺られます。

宮古駅から走ること1時間と少し、今宵の宿の最寄である堀内駅に到着。僕は見ていませんでしたが、あまちゃんのロケ地にもなったそうで、翌朝の列車では、撮影する人が大勢いました。

堀内駅を出発する三陸鉄道北リアス線レトロ調列車

1面1線の、ローカル線の無人駅を体現したかのようなシンプルな駅。でもその背後に広がる漁村や海を借景にしたこのロケーションは、正に画になる駅。去りゆく列車がレトロ車両ならば、その印象もより格別なものになります。

堀内の漁村から眺めるみさきの巨人が刻まれた岬

宿のチェックインまではまだ時間があるので、駅の周辺をぷらぷらと歩いてみることに。駅に周辺の見どころの案内板があるので参考にします。

ホームをくぐる通路を下ると、もうそこは漁港。長閑な雰囲気に包まれています。遠くの岬には、写真には写りませんでしたが、人形に見える岩肌が。みさきの巨人と呼ばれているというその人は、海に向かって歩いているように見えます。

堀内の漁港

海からの強い風に吹かれながらあるく漁村。空を覆いゆく雲と、並ぶ小さい漁船たち。頭の中には、自ずと演歌が流れ始めます。ひとり旅。何となくこんなロケーションが似合う旅。

堀内荒磯の先に見える夫婦岩

漁港の脇を通り、きれいに整備された海沿いの公園に到着。荒磯の先には、ふたつ仲良く並ぶ岩の姿が。夫婦岩と呼ばれるこの岩の間はしめ縄で繋がれ、そのしめ縄は震災の津波でも切れなかったそう。

初めて降りる小さな漁港の街。観光地にはない、素の三陸海岸の雰囲気を肌で感じ、海を見ながら今宵の宿を目指すこととします。

心ゆくまで、岩手。~秋の陸中逗留記~

秋の大沢温泉山水閣豊沢の湯色とりどりの紅葉一幅の絵のような眺め
2015.10 岩手

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