夜の彼方へ ~あけぼの号で行く紅葉と温泉の旅 2日目 ②~

五能線十二湖駅

秋田駅を出発して約2時間。白神山地と海に挟まれた十二湖駅に到着。ここで上野駅からご一緒だったご夫婦とお別れ。こちらは道路から、あちらは車内から、お互いに大きく手を振り合い、これからの旅の無事を願いつつお別れしました。

こんな旅にはよくありがちな一期一会を特別なものにしてくれるのは、きっとひとり旅であり、そして、同じ寝台列車に乗ってきたという想いであるのでしょう。

弘南バス奥十二湖行き

十二湖駅前から『弘南バス』に乗り、奥十二湖に向かいます。有名な青池近くにある駐車場と物産館キョロロの前まで乗せて行ってくれるので、十二湖散策にとても便利なバスです。

十二湖とは、地震によって造られた33の池の総称で、大崩山という山の山頂から見ると12の池が見えたことから、この名前が付いたそうです。

紅葉の十二湖散策

道中、紅葉や猿の姿を眺めつつ、地元民だというバスの運転手さんの津軽弁ガイドを聞いているうちに、すぐに奥十二湖に到着。さっそくここから歩き始めます。

みんなはすぐに青池方面へ向かいましたが、僕は逆に回ることに。今来た道を戻り、王池方面へと歩きます。途中大小の池が道沿いにいくつかあり、水面に映える紅葉を楽しみながらの散策となります。

白神山地秋の紅葉

バス通りとはいえ、あまり交通量も無く気持ちよく歩くことができます。道の両側には色づいた木々が並び、静寂を美しく彩ります。

秋の十二湖イトウの養殖場

奥に見える四角い池は養魚場。幻の魚と言われるイトウを養殖しているそうです。魚についてはあまり詳しくない僕ですが、その名はテレビで何度か聞いたことがあり、貴重な魚だということは何となくわかります。そんな魚が育つということは、水や環境がきれいである証です。

十二湖最大の池紅葉に彩られた王池

こちらが十二湖の中で一番大きな王池。ここは十二湖中唯一開放されているそうで、シーズンにはボート遊びなどもできるようです。この日はまだ時間が早いこともあり、ひっそりとしていました。

白神山地の深い森

王池から左折してしばらく歩き、森の中の道へと入ります。先程までもひっそりとしていましたが、一歩森へと踏み入れば、それ以上の静けさが辺りを包んでいます。

足元は今まで体験したことが無いほどのフカフカ。世界遺産に認定されているため、人が無駄な手を加えることはありません。自然が造り上げた自然、ということでしょうか。僕が今まで体験した自然とはひと味も、ふた味も違います。

秋の白神山地色づく木々

上を見上げれば、空を覆い隠すほどの木々たち。時折冷たい雨やあられが降ってきますが、木の葉たちがやさしく守ってくれています。

聞こえるのは、木々のささやきと自分の息遣いのみ。大昔、人々はもしかしたら自然と会話できていたのかもしれません。その本能を失ってしまった現代人にも、木々が何か言っていることは伝わってきます。

秋の白神山地赤い実

柔らかい落ち葉の絨毯を踏みしめつつゆっくりと歩けば、見落としそうな小さなものも目に入ります。低い木々に紛れてこんなかわいい赤い実が。草花に疎いので名前は分かりませんが、見たことのある赤い実。雨露にぬれてしっとりと輝いています。

深い蒼さをたたえるっ十二湖沸壺の池

白神山地に抱かれた自然林を歩き、たどり着いた沸壷の池。底の深さによって変わる、様々な青に彩られた池。

浅いところでは水草が見え、深いところでは吸い込まれそうな碧さを湛えています。山肌から湧き出た水が絶えず流れ込み、刻一刻と変化する穏やかな波紋を造ります。

世界遺産白神山地朽ちた木に芽生える新しい命

幻想的な沸壷の池を後にし、再び静寂の森の中へ。枯れて朽ちた木の上には、苔やシダか何かの芽が生え、育ち始めています。

こうやって、枯れたものが新しい命を支える。そんな自然のサイクルが乱されること無く、当たり前のように繰り返されているからこそ、この本当の自然というものが保たれているのでしょう。

僕が普段目にしている「造られた自然」とは、全く違う。植物の知識が無くても、各地にトレッキングに行ってなくても、素人でもここの懐の深さ、温かさは強すぎるほど伝わってきます。大げさではなく、鳥肌が立ってしまいました。

秋の白神山地ブナ自然林

青池にたどり着く少し手前に、ブナ自然林と呼ばれるエリアを通ります。ここは天然のブナが一面生えている場所。

バスの運転手さんによれば、この白神山地が世界遺産に登録されたのは、このブナのお陰だそう。

日本全国にあったブナ林は、国鉄を始めとする鉄道が枕木に加工するために伐採しつくてしまったため、ここほどまとまったブナ林が現存する例は他にはない、ということでその貴重さが評価されて世界遺産に認定されたとのこと。

その話を聞いてしまうと、なんだか複雑になってしまいます。鉄道の繁栄がなければ今の日本はありません。でも、その代償として全国のこんなきれいな森が失われてしまった。

人々の生活の繁栄と自然保護は、いつの時代も相反する永遠のテーマなのかもしれません。かく言う僕も、自然破壊をしながら生きているのです。

幻想的な青池

程なくして、十二湖で一番有名な池、青池に到着。言葉に表せないような青さを一面に湛えています。今まで様々な調査が行われてきたそうですが、この青さの理由は解明されていないとのこと。

実際、今まで見たことの無いような色が広がっています。透き通っていて、でも深みのある色。見ていると吸い込まれてしまいそうな、無限に広がる青さ。

こちらは水の流れがあまり無いようで、静まり返った水面が、鏡のように辺りの紅葉を映しています。音も、風も、水面も、何も乱れることの無い世界。黙って見つめるうちに、身体と心、全てが静寂の世界へと包み込まれます。

秋の十二湖鶏頭場の池

神秘の池、青池でしばし無の時間を味わい、歩みを進めます。今回の散策コース最後の池、鶏頭場の池。山の上から見ると鶏の頭のように見えることから、このような名前が付いたそう。

ここからバス停のあるキョロロまではあともう少し。十二湖の紅葉を目に焼き付けながら、残りの道のりを歩きます。

このコースで、僕の足でざっと1時間半。ゆっくり歩いても2時間程度でしょう。リゾートしらかみ1号で下車してバスに乗り、3号に接続するバスに乗るまでに戻ってこられる、丁度いい距離。

十二湖のハイライトを無理なく回れる理想的なコースです。途中ショートカットもできるので、それぞれのペースで楽しめるのも、嬉しいですね。

自然が造り上げた神秘的な絶景を満喫し、再びリゾートしらかみへ。一路今夜の宿を目指します。

夜の彼方へ ~あけぼの号で行く紅葉と温泉の旅~
国鉄型24系25型客車寝台特急あけぼの青森行き方向幕
2010.10 青森/秋田
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