白銀の奥羽路 ~スキーに秘湯、冬の旅 4日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

白銀の奥羽路 ~スキーに秘湯、冬の旅 4日目 ③~

秘湯鶴の湯囲炉裏に岩魚 旅の宿

山間の日暮れは早く、もう段々と外は暗くなりかけてきました。夕食まではあと1時間ほど。そんな時におじさんが囲炉裏に岩魚を刺しに来てくれました。

入ってくるなりいきなり飛び出す秋田弁。その言葉は、この囲炉裏の火のように、とても温もりのある、心に灯を燈すかのような不思議な力を持っています。岩魚が焼けるまで1時間。ご飯の時まで、再び温泉で過ごすこととします。

暮れ始めの鶴の湯雪壁とろうそくの灯り

外は薄暗く、雪の壁にはろうそくが灯されていました。先程のおじさんによると、すでにマイナス13℃まで冷えているとのこと。ニセコのゲレンデと変わらないはずなのに、意外とそこまで寒さを感じないのは何故でしょう。

夕闇の鶴の湯灯りがもれる湯屋

小川越しに見える、温かい灯をともした湯屋。昼間とは違う顔を見せる鶴の湯。泊まらないとこの風情は味わえません。

冬の鶴の湯窓からもれる温かい灯り

じっくり湯浴みを楽しみ、お腹も空いたところで部屋へと戻ります。窓から漏れる柔らかい光と、雪道を照らすろうそくの灯。あまりにも美しすぎて、夢か現実か分からなくなるほど。寒さも忘れ、見とれてしまいました。

乳頭温泉郷鶴の湯夕食

部屋に戻ると岩魚の香ばしい匂いが鼻をくすぐります。程なくして、夕餉が運ばれてきました。寒い中、一つ一つの部屋へとお膳を運ぶのは、どれだけ大変なことでしょう。これを毎日、毎日、吹雪きでも続けているのですから、頭が下がります。

献立は山のものづくし。山菜の炒め煮やお浸し、白和え。それに饅頭のきのこ餡とホイル焼き。質素なイメージのある山菜も、これだけバリエーションを持たせて調理してもらえば、食べる方も楽しみながら食べることができます。味ももちろん美味。素材の旨さを活かした味付けになっています。

秘湯鶴の湯囲炉裏端でつるさけ

こんな美味しい山の幸が並べば、やはり日本酒を飲まないわけにはいきません。鶴の湯オリジナルのつるさけを頼みます。

囲炉裏にしっかり溶け込む、味のある徳利には秘湯鶴の湯と書かれており、空き容器はお土産にもなる優れもの。地元の銘酒、秀よしを醸造する鈴木酒造が作っています。

すっきり飲みやすいお酒は、シンプルな山の幸と相性抜群。やはり地のものには地酒が合う。美味しいご飯をより一層美味しくしてくれます。

秘湯鶴の湯名物山の芋鍋

岩魚もこんがりと焼け、鍋も煮立ってきました。こちらが鶴の湯名物、山の芋鍋。味噌仕立てのダシに、たっぷりの野菜と、山の芋を卸して作った団子が入っています。

味噌は自家製だそうで、とてもまろやかな美味しいダシ。野菜の旨味もギュッと詰まっており、それが山の芋団子にちょうどよく浸みています。

木杓子でお椀に取り分け、囲炉裏端で食べる。食材こそ豪華ですが、きっと昔の農民は、こんな感じで食事をしていたのでしょう。旨い料理を楽しみながら、遠い遠い昔に思いを馳せてみます。

鶴の湯囲炉裏端で秀よし寒しぼり純米生原酒

身も心も温まる山のおもてなしに大満足し、晩酌を続けます。こちらは田沢湖市で買った、秀よし寒しぼり純米生原酒。

同じ秀よしですが、こちらは甘味と風味が濃厚。先程のは食中酒としてピッタリですが、こちらはどちらかというとお酒単体で楽しみたい、そんなお酒。

お膳を下げにきてくれたおじさんが布団を敷きながら、こんな寒いときは囲炉裏でお酒を飲むのが一番。ゆっくりしてくださいね。こんなことを秋田弁で言ってくれました。

ここの宿の方々は皆暖かい雰囲気を持っており、普通の温泉旅館では味わえない、地元の方と触れ合っているかのような感覚を味わえます。

こんなところでは、かしこまったサービスより、自然体で接してくれるほうがずっといい。お風呂や建物だけでなく、鶴の湯全体が醸し出す雰囲気が、ここの人気の秘密なのでしょう。

厳冬の鶴の湯夜の幻想的な風景

満腹だったお腹も落ち着いたところで、再び温泉へ。何もすることが無く、ただ部屋とお風呂を往復する。これこそがいい温泉の楽しみ方なのでしょう。

一歩外へ出れば、体を刺すような寒さ。夕暮れ時よりさらに冷えています。それでも雪を照らす温かい光を見れば、心はポッと暖かくなります。

夜の鶴の湯こころを温めるろうそくの光り

ゆらゆらと揺れる小さな光を見ていると、不思議と寒さを忘れ、何かで心が満たされていくような感覚に。温かい火は、人の心を癒してくれます。

夜の鶴の湯雪見風呂

誰もいない湯船に映る柔らかな明かり。この広い露天風呂を独り占めする、なんという贅沢。極寒の中、静かに湛えられた白濁の湯に浸かる。もう何もいらない、そう思えるほどの至福の瞬間。

暗闇に浮かぶ雪景色と、静かに揺れる明かり。もう、これ以上なにも言うことはありません。いや、何も言えないほどの感動に包まれ、いつまでも湯浴みを楽しみました。

白銀の奥羽路~スキーと秘湯、冬の旅~
白い雪をまとった安比高原の木々
2010.2 岩手/秋田
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1日目(東京⇒安比高原)
2日目(安比高原)
3日目(安比高原)
●4日目(安比高原⇒鶴の湯)
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●5日目(鶴の湯⇒盛岡⇒東京)
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