煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配 3日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配 3日目 ③~

大塩裏磐梯温泉ホテル観山 旅の宿

喜多方駅からバスで走ること25分程、大塩裏磐梯温泉バス停に到着。数軒のホテルや旅館、民宿のある静かな温泉場です。ちなみに、同じ福島県にある大塩温泉とはまた違う場所なのでご注意を。

バス停からちょっとした登り坂を3分ほど歩き、今宵の宿である『ホテル観山』に到着。雨が降ってきてしまったので急いでホテルに向かいましたが、時間前にもかかわらずチェックインさせていただきました。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山客室
豪華なロビーを通り部屋へと通されると、ひとり旅にはもったいないほどのきれいで広い和室。窓側には大きな座卓も置かれ、ゆったりとした造りになっています。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山山塩のできる源泉の大浴場
早速浴衣に着替え、お待ちかねの温泉へ。晩秋の会津は冷えるため、この瞬間を心待ちにしていました。

まずは大浴場の内湯に。こちらは大塩裏磐梯温泉の源泉掛け流し。一見無色透明のようですが、よく見るとほんの少しだけ濁りが見えます。

いざ入ってみると少々熱め。でもすぐに体は慣れて肩までどっぷり浸かります。ナトリウム-塩化物泉のお湯はとても肌触りがよく、食塩泉にありがちなべたつきは感じられません。とても馴染みのいい感覚。

そしてこちらの温泉の名前からも分かるように、昔も今もこの源泉を使い山塩を作っているそう。というこで、湯口から掛け流される源泉を指につけてぺろり。

すると驚き、仰天の旨さ。これまでもしょっぱい温泉にはいくつも入りましたが、ここの源泉の味覚的なバランスはものすごい。

言うなれば、そのまま塩鍋のベースとして使えそうといった印象。塩味の他に深い旨味が感じられ、もうだしが入ってるのでは?と思う美味しさ。

その美味しさに、思わず売店で山塩を即購入。その後家で牛のたたきにつけて食べてみましたが、もう絶品のひと言。カドやトゲのない、それでいて濃い旨味をもった塩。今まで食べたことのないタイプのお塩です。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山露天風呂
特長的な源泉風呂を後にし、露天風呂へ。こちらは源泉ではなくただのお湯だそうですが塩素等の匂いもせず、変な温泉の露天風呂よりもよっぽど気持ちいい。

竹の仕切りがあるため視界はありませんが、すぐ横には大塩川が流れ、せせらぎの音を聞きながら広い湯船でゆったりと湯浴みを楽しめます。

内湯のしょっぱい温泉で温まり、露天に来て晩秋の空気で火照りを癒す。その繰り返しが気持ちよく、内と外を行ったり来たりしてしまいます。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山湯上がりに冷たいビール
旨味の濃い山塩が採れるということは、源泉の成分も濃いという証。湯上りはしばらく汗が引かず、体の芯から長い時間ぽかぽか、ぽかぽか。すっかりお気に入りのお湯になりました。

そんな個性的な温泉を楽しんだ後の贅沢といえば、冷たいビール。喉から腹へ、湯上がりの火照った体の内側を通る爽快感がたまらない。

前回喜多方を訪れた時は、やはり山塩を作っていたという熱塩温泉に宿泊。その温泉はとても熱く、そして色も浴感も濃いものでした。

そして今回の大塩裏磐梯温泉はその逆で、見た目も浴感もおとなしいのにしっかり芯まで沁みてくる。近場にあるナトリウム-塩化物泉でもこうも印象が違う。やっぱり温泉って、楽しいですね!

大塩裏磐梯温泉ホテル観山夕食
もう一度旨い温泉に浸かって塩鍋の具になった気分を味わい、お待ちかねの夕食へ。個室の会場に着くと美味しそうなお料理が並んでいます。

お刺身はまぐろやえびといった海の幸の他に、会津と言えば!!の馬刺しが。会津らしい辛味噌も添えられ、もうこれだけでも会津までやってきて良かったと思える滋味深い旨さ。

煮物はおだしが効いた丁度良い塩梅で、牛のバター焼きは赤身と脂の旨味をしっかりと感じます。好物のナラタケおろしや白和えも美味しく、地酒のアテにぴったり。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山天ぷら
続いては揚げたてサクサクの天ぷら。えびや菊も美味しかったのですが、特徴的かつ衝撃的な旨さだった2品が隠れています。

まずは手前の魚の天ぷら。なんだろう?と思いつつ一口噛んでみると、あっ!きみは鰊、にしんなんだね!と、そんなセリフでも言いたくなるような劇的な出逢い。

僕はこの記事を書くまで、にしんの天ぷらが会津の郷土料理だとは知りませんでした。が、ひと口噛んだ瞬間、乾物を手間暇かけて生以上に美味しく仕上げた、あの旨さが口から鼻へと抜けるのです。

どうやら会津でよく食べられる身欠きにしんを水で戻し、それを天ぷらにしているようです。独特のほっくりとした食感と広がる旨味、そして適度に落とされつつ残った脂。山椒漬けや棒煮、そしてこの天ぷらと、会津の方々は鰊を最高に美味しく食べる天才なのでしょう。

そしてさらに衝撃的だったのが、茶色い丸っこい天ぷら。パッと見じゃがいもに見えたので、何も考えず天つゆに浸してぱくり。うぁっっぁ!しょっぱいと思ったら甘い!脳みそ混乱!でもすぐにケンミンショーで見たやつだとピンときました。

こちらも会津名物、まんじゅうの天ぷら。そうそう、テレビで何度も見たじゃないか。それなのに気付かないなんて。そう思いつつも、こうして普通の天ぷら盛り合わせの一員として出てくるとは思いもよらなかったので、本当にびっくり。

でも、それがものすごく旨いんです。外の衣はサクサク、皮の糖分は揚げられてより香ばしく。そして中のあんこは程よく脱水されてかホックホク。もうまんじゅうは天ぷらにすべき、そう思うほど。無意識につけてしまった天つゆとの相性も意外に悪くないのです。僕的には天つゆもあり。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山こづゆ
こんろのお鍋が煮えてきたので蓋を取ってみると、これまた会津の郷土料理、こづゆが登場。こちらのこづゆは今まで食べたものとは少し違い、ちくわやきくらげがいいアクセントに。素朴な美味しさがたまりません。

大塩裏磐梯温泉ホテル観山そば
ここまでも結構なボリュームなのですが、さらにおそばまで運ばれてきました。お酒を飲んだ後に嬉しい美味しさ。

このあとご飯を少しだけもらい、お漬物とこづゆの最強の組み合わせで〆ました。味もボリュームも、そして会津らしさも大満足。あぁやっぱり僕は東北の味が好きなんだ。久々に味わう会津の味に、腹の底から満たされます。

大塩裏磐梯温泉夜のお供に末廣酒造蕎麦の酒
部屋へと戻りお腹を落ち着けたところで、再び温泉へ。そしてやっぱり湯口のお湯をなめてしまう。うん、旨いよね。

大塩裏磐梯温泉の味わいを舌に残しつつ、部屋へと戻りお酒と本の時間を。まずは末廣酒造の蕎麦の酒を開けてみることに。

このお酒は、米と米麹、蕎麦だけを原料としたお酒だそう。そばが使われているため日本酒とは認められずに製法特許を取得した、この酒蔵ならではのお酒だそう。

以前から末廣酒造嘉永蔵によるたびに気になっていたこのお酒。味の想像がつかないため、なかなか購入まで至りませんでした。ですが今回、意を決して買ってみることに。

口を開けてコップに注いでみると、驚くのは色の濃さ。黄色とピンクが混じったような色をしています。香りも個性的で、酸味を強く感じさせるもの。

ひと口含んでみると、その香り通りの酸味がまずやってきます。そして広がる独特の香ばしさと、爽やかな味わい。もっと雑味があるのかと思いきや、旨味や風味は濃いのにすっきり、さらっとしています。

そして印象的なのが後残りの無さ。存在感のある味わいにもかかわらず、香りと共に後味も消えてゆきます。日本酒独特の後味、ベタベタ感は皆無。濃いと思わせながらすっと入っていく。所謂美味しくて危ない酒、というやつです。

大塩裏磐梯温泉夜のお供に榮川純米酒にごりワンカップ
続いては、僕の一番のお気に入りである榮川。今回は東京では見ない純米にごりを。にごりの麹の香りは楽しめつつ、くどさのないすっきりとした辛さと後味。やっぱり榮川、はずれがありません♪

新潟から2泊3日を掛け、たどり着いた会津の地。僕は幸運なことに旅先ではあまりハズレたことがなく、どこも良い思い出ばかり。もちろん新潟もそうです。

そして東北、福島入りした今日感じたこと。やっぱり僕は東北が好きなんだなぁ、という強い実感。これは東北内をぐるぐる回るいつもの行程では、少しばかり薄れつつあったもの。

念のためもう一度言いますが、新潟も好きだから何度も訪れているんです。でもこの東北に着いた時の、何とも言えぬ感覚は何なのだろうか。心底落着き、それでいていい意味で体や心がざわつく。これはもちろん優劣をつけるものではありません。僕の非常に主観的、個人的な気持ちです。

貝掛のぬる湯から始まり、咲花の超個性的なエメラルドグリーンの湯、そしてこのしょっぱくて美味しい温泉。そしてなによりも、心の琴線に触れる、深く濃い鉄路の旅情。

良い旅だ、今回も盛りだくさんの良い旅だ。久々に地域を跨ぐ旅をしたからこそ味わえたこのメリハリ。濃い旅最後の夜は、お湯とお酒に包まれる温かい時間が流れるのでした。

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煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配~

2016.11 新潟/福島
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●1日目(東京⇒貝掛温泉)
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●2日目(貝掛温泉⇒長岡⇒新津⇒咲花温泉)
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●3日目(咲花温泉⇒喜多方⇒大塩裏磐梯温泉)
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●4日目(大塩裏磐梯温泉⇒喜多方⇒会津若松⇒東京)
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