煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配 4日目 ②~ 

磐越西線キハ110会津若松行き

旨口塩味の特徴的な温泉と蔵の並ぶ街並み、そして相変わらずの美味しいラーメンで楽しませてくれた喜多方の街ともお別れのとき。この旅最後の列車に乗り、終着点を目指します。

磐越西線キハ110車内から眺める晩秋の磐梯山
何度旅しても、終幕に向けての最後の行程は寂しくなってしまうもの。それだけ今回の旅も濃厚で充実した、良い旅であったという証。

越後湯沢から始まり、新津や咲花を経て会津へ。その想い出をのんびりと思い返しつつ、磐梯山をぼんやりと眺めるひととき。

その反芻という作業に少しだけの感傷を与える、列車のリズムとエンジンの響き。新幹線から特急、気動車にSLまで。この旅は、鉄道の進化を味わう旅でもありました。

会津若松駅の張り子の赤べこ
喜多方から気動車にディーゼルカーに揺られることあっという間、この旅最後の目的地である会津若松駅に到着。ホームでは立派な張子のあかべぇがお出迎え。昨日も今日もあかべぇに会えた。好きなキャラクターの登場に、「会津感」がぐっと高まります。

晩秋の曇天の会津若松駅
会津若松、僕の大好きな街のひとつ。中学生のときに初めて訪れて以来、もう何度来たことでしょうか。この駅舎を見ると、また会津若松へ来ることができたという喜びと、なんだかほっとするような安心感を覚えます。

会津若松会津塗鈴善漆器店
久々の会津若松に足取りも軽く、味わい深い街並みを歩きます。歴史ある建物が、街の一部として溶け込み残され使われている。そんな素顔の歴史を漂わせる会津若松の街並みが、本当に大好き。

今回お邪魔した『鈴善漆器店』も、そんな現役の古き良き建物のひとつ。ビルの並ぶ大通に突如、その威厳ある姿を現します。それでいてこれ見よがしではなく、街の景色の一部となっている。会津若松は、そんな街。

こちらには様々な会津塗が展示、販売されており、品物や価格もバリエーション豊か。僕はここで会津塗のお箸を購入。津軽塗とはまた違った肌触りを体感し、思わず買ってしまいました。危ない、鉄の次は塗り物か?気を付けないとはまってしまうぞ。

会津若松元祖輪箱飯(わっぱめし)田季野
時刻は丁度お昼時。以前食べたおそばも美味しかったし、名物ソースかつ丼も食べてみたい。老舗のうなぎ屋の店構えにも惹かれるし・・・。そんな幾多の誘惑に打ち勝ちやってきたのは、輪箱飯で有名な『田季野』。どうしてもその味が忘れられず、またまたやってきてしまいました。

会津若松元祖輪箱飯(わっぱ飯)田季野で榮川冷酒を
重厚な店構えもさることながら、内部の立派な造りも圧巻のひとこと。200年近く前に建てられた会津西街道の陣屋を移築したというこの建物。黒光りする太い柱や梁からは逞しさが感じられ、立派な木材を使い建てられたお屋敷であることが判ります。

質実剛健、豪華とはまた違った豪壮さの漂う座敷で飲む榮川。この日は空模様も怪しく平日だったため店内は静か。ひとりでゆったり、じっくり、その空気感と旨い酒を味わいます。ちなみに土休日はかなり混雑するのであしからず。ひとりでは少し厳しいかもしれません。

会津若松元祖輪箱飯(わっぱめし)田季野にしんの山椒漬け
ちびちびやっていると、お待ちかねのにしんの山椒漬けが。こちらは会津の郷土料理、身欠きにしんを山椒の葉や調味料で漬けたもの。ほんのりとした酸味と山椒の爽やかさが、にしんの持つじんわりとした脂と旨味を引き立てる。飲兵衛殺しの逸品です。

会津若松元祖輪箱飯(わっぱめし)田季野鰊の田楽
続いて運ばれてきたのは、にしんの田楽。会津は田楽も名物で、他にも厚揚げやしんごろう(潰したご飯)との盛り合わせもありますが、ここはやっぱり好物の鰊を。

先ほどの山椒漬けとは一転、炙られた身欠きにしんはパリッとジューシー。にしんの豊潤な旨味と脂に、山椒が効いた甘味噌の組み合わせ。これが旨くない訳が無い。にしんと味噌の香ばしさの波に、榮川を運ぶ手が止まりません。

やっぱり会津の人々は鰊調理の天才だ。山椒漬けに田楽、昨日食べた天ぷらまで。山深い土地が生んだご馳走の、滋味深い味わいに酔いしれます。

会津若松元祖輪箱飯(わっぱめし)田季野けとばし輪箱飯
そしてお待ちかねのわっぱ飯が登場。今回も結局けとばし輪箱飯を注文してしまいました。そう言えば、ここへ来てこれ以外の輪箱飯を注文したことがない。いつもぜんまいや鮭親子などと迷うのですが、一度この美味しさを知ってしまうともうこれ以外考えられない。

けとばしとは、会津ではよく食べられる馬肉のこと。薄切りの馬肉とたっぷりのごぼうはきんぴら風に味付けされ、ごまとしょうがの風味がいいアクセントに。

それを曲げわっぱに詰めたご飯に載せ、せいろで蒸して熱々に。この蒸すという作業によってわっぱの香りが全体に行きわたり、そして馬の美味しい脂がご飯に適度に染み渡る。

そしてやはり唸ってしまうのが、馬の旨さ。脂は程よくありながらくどくなく、肉の旨味は濃いのに臭みは無い。この旨さは唯一無二、ここならではの逸品、絶品。

あぁ切ない、思い出すだけで食べたくなる。会津若松を訪れる度に足を運びたくなる美味しさに、この旅最後の舌鼓を打つのでした。あぁ、いますぐ食べに行きたい・・・。

煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配~

2016.11 新潟/福島
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