深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 1日目 ①~

E5系はやぶさ号新青森行き

今年度は、本当に本当に忙しかった。色々あったそんな1年も、もうすぐ終わり。自分なりの数々の苦難を乗り越え、出口の光が見えてきた頃、思いがけずすんなり年休が取れることに。

これはもう行くしかない。自分へのご褒美。今年だけはそんなことを思っても罰が当たるまい。よし、行ってしまおう、憧れのあの湯に逢いに。

思い立ってから1ヶ月、何と待ち遠しかったことか。そして遂に旅立ちの瞬間。いつものこの駅、いつものホームから北を目指します。

まもなく消える長野新幹線の名称

車内整備が終わるのを、首を長くして待ちます。そんな時にふと見た時刻表。たぶんこれが最後に目にするであろう、長野新幹線の文字が。もうまもなく、北陸が近くなる。富山に福井、未だ訪れることの叶わぬ土地が、僕を呼んでいる。

東北新幹線車内であぶくま

行きたい場所がありすぎる。そんな贅沢な悩みを抱きつつ、やっぱり今回も東北へ。だって、好きなんだから仕方が無い。前回の熱い夏に引き続き、今回は思い切りの寒さを楽しんでやろうじゃないか。

半年振りの青森へ、気持ちは既に飛んでいってしまいそう。そんな旅立ちを祝し、ビールを飲み干し早速日本酒で乾杯。グランスタのいつもの酒屋さんで選んだお酒とともに、厳冬の青森を目指します。

まずは福島は田村市の玄葉本店、あぶくまを。福島のお酒らしい香りと旨味、そして辛さを併せ持った僕好みのお酒。

郡山駅弁会津のおばあちゃん弁当

美味しいお酒をちびり、お腹も空いたところでお弁当を。いつも混雑している駅弁屋祭で今回仕入れたのは、ウェルネス伯養軒の調整する会津のおばあちゃん弁当。福島のお酒に福島の味。福島にもまた行きたいな、そう思いを馳せつつ蓋を開けます。

郡山駅弁会津のおばあちゃん弁当中身

中には会津らしい素朴で美味しそうなおかずがたっぷり。煮物の中で存在感を放つのは棒だら。ほっくりとした食感とじんわり染みだす旨味は乾物ならではのもの。

てんぷらには鰊が使われており、こちらもホクホクのしみじみとした味わい。馬肉の煮物や山菜の炒め煮などの名脇役と共に、あぶくまがどんどん進んでしまいます。

冬の荒川東京脱出!

会津で食べた味を思い出させる、丁寧に作られたお弁当。派手さはないがじんわり、しっかり美味しいその味を楽しみつつ眺める車窓。そしてその瞬間が。僕にとっての大事な儀式、荒川を渡り東京脱出の瞬間です。

東北新幹線から眺める雪をかぶった那須の山々

大宮、宇都宮と過ぎ、はやぶさ号は遂に意を決したかのように加速を始めます。どこまでも青い冬空の下、雪を冠して輝く那須の山々。あの麓で味わった遅い冬からもう1年。時の流れの速さを感じます。

はやぶさ車内で愛宕の松

時の流れ以上の速さで駆けるはやぶさ。世界最速に酔いしれつつ、次のお酒を開けることに。

2本目は、僕の好きな宮城の新澤醸造店、愛宕の桜。春満開のラベルに惹かれて購入。何度飲んでも美味しい伯楽星よろしく、いつ飲んでもこの蔵のお酒は美味しい。柔らかさと辛さが調和した飲み口は、僕の好みど真ん中。

はやぶさ車窓を彩る銀世界

旨い酒を愉しむうちに、車窓には銀世界が広がっていました。これから向かうは豪雪の地。その玄関に足を踏み入れたようで、気分は一気に高揚します。

東北新幹線車内で安芸虎

このはやぶさは盛岡から先各駅に停まるタイプ。終点の新青森までは3時間半掛かるため、のんびりゆっくりと車内での時間を楽しみます。

そんなお供の3本目に選んだのは、高知県は安芸市の有光酒造、安芸虎。たまには違う方面のお酒も飲んでみようと購入しました。高知と言えば酔鯨など辛口すっきりのイメージがありましたが、これは程よく甘みのあるふくよかな口当たり。日本全国酒処、高知のお酒もやっぱり旨い。

在りし日の国鉄型485系特急白鳥函館行き

四国、高知にも行ってみなければ。とめどない旅への欲求を抱きつつ、気が付けばうとうと微睡タイム。はやぶさの静かな乗り心地に、忍び寄る睡魔に抗うことは出来ませんでした。気が付けば盛岡に到着。そこから先は各駅に停まり、青森へとひとつひとつ近付きます。

特別急行白鳥号NorthEastExpress485のロゴ

はやぶさの快適な旅を終え、無事に定刻通り新青森に到着。ここから奥羽本線に乗り換え、青森駅を目指します。

新青森で僕を出迎えてくれたのは、幼馴染とも言いたくなるような、この白鳥。新幹線開業と同時に姿を消す運命のこの車両も、もしかしたら今回が乗り納めかもしれない。

国鉄特急型485系白鳥車内

僕の数えきれないほどの想い出が詰まったこの車両。座れば途端に、北海道の記憶が溢れ出します。

でも今回はお隣青森までの乗車。それにしても近くなった青森。以前はこの車両に揺られ、八戸からはるばるやってきたその地も、今では新幹線であっという間。寂しい反面、だからこそこうやって気軽に訪れることができます。

思い立ったが吉日、即座に行き先として決定した青森が目前に迫ります。さあこれから、寒さを存分に楽しんでやる。その期待に、軽い身震いを覚えるのでした。

深き白に染められて~厳冬の八甲田へ~

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸
2015.2 青森

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