深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 4日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 4日目 ①~

厳冬の青森酸ヶ湯温泉で迎える朝 旅の宿

この旅最後の朝。障子を柔らかく照らす、ぼんやりとした雪明かり。室温は相も変わらず1℃と寒いはずなのに、酸ヶ湯の力によってやっぱりぽかぽか。

こんな朝が明日も続いて欲しい。長くても短くても、旅の最終日には必ず思ってしまう、叶わぬ願い。そんな欲張りな願望を捨て、寒い部屋を出て温泉へ。やっぱりここのお湯は最高。入る度に好きになっていく。それこそが名湯というものなのでしょう。

厳冬の青森酸ヶ湯温泉朝食

この日のバイキングは、昨日とは違うラインナップ。青森の味である鮭の切り込みを始め、鰊と根曲がり竹の煮物など、素朴な美味しさをおかずに、ご飯をお腹一杯食べます。

部屋へと戻ってお腹を落ち着け、この旅最後の一浴へ。酸ヶ湯の色、香り、肌触り。その全てを想い出に変え、湯上りのひとときを静かに部屋で過ごします。

厳冬の青森雪に埋もれる酸ヶ湯に別れを告げる

そしてやってきた、チェックアウトの時間。雪に埋もれるように佇む酸ヶ湯温泉旅館に別れを告げます。

それまでも、温泉好きのみならず有名であった、酸ヶ湯。その名が一層有名になったのは、積雪日本一になったというニュース。それ以来、酸ヶ湯に行きたいと周囲に漏らすと、必ずと言ってその話題が返ってきます。

僕も今回雪を期待して来ました。が、それ以上に期待していたのは、そのお湯そのもの。やはり酸ヶ湯は有名なだけある。初めて訪れましたが、これまで来なかったことが悔やまれるほど。

僕はどちらかと言えば、有名無名、流行廃りで事を考えるのが嫌いな性格。でも、ここに来て、有名になる理由、人気がある理由、それらがあるという当たり前のことを、今更ながら気付かされました。

何故小さい頃から流行ものが嫌いだったのか。それはその物自体を見ようとしないで、流行を追うこと自体が目的になっているように思えたから。でも、僕も全く同じことをしていたと、これまで生きてきて初めて感じたのです。僕は、流行に左右されないでいること自体が目的になってしまい、流行のものを見ようとしてこなかったのです。

どんなものだって、流行ったり、人気が出なければ、人目に触れずそっと消えていくもの。流行が落ち着いてもなお、人気が定着するということは、それだけ支持されているという証。ここ酸ヶ湯は、今は積雪というブームの真っただ中かもしれませんが、それ以前の遥か昔から、人々に愛され続け、不便な立地ながらこれまで在り続けてきたのです。

白銀の中佇むJRバス東北

訪れることができて、心から良かったと思える場所とも、本当に別れの時。帰りも時間の関係で、『JRバス東北』のみずうみ号で青森駅を目指します。

JRバス東北みずうみ号の車窓から今一度雪景色の酸ヶ湯を望む

バスに乗車し、発車を待つのみ。その間、雪に包まれる酸ヶ湯の姿を目に焼き付けます。

酸ヶ湯は、秘湯にしては有名で大きい。そんなイメージが、少なからず訪れる機会を遅くしていたことは否めません。温泉に入りたいから秘湯に行く。いつしかそれが、秘湯に行くこと自体が目的になってきた。僕が嫌だと思ってきた「手段が目的になってしまう」ことを、自分もしている。やはり、目的を持って手段を選ばなければ。そんなことを気付かせてくれる包容力を、酸ヶ湯は持っていました。

JRバス東北みずうみ号車窓を覆う雪の壁

お湯を愉しむ。僕が今のスタイルの旅を始めた原点に回帰させてくれた酸ヶ湯。理屈抜きで、名湯でした。

この旅最大の目的地を後にし、抜け殻のような気分で揺られるバスでの時間。車窓を占領する雪壁とも、もうすぐ別れなくてはなりません。

厳冬の青森雪がうず高く積まれた雪捨て場雪国らしい光景

バスは八甲田の麓をくねくねと駆け降り、青森の街まで戻ってきました。目に入るのは、これまで見たことも無いような高さに積まれた、雪捨て場。青森は本当に雪深い街。市街地の至近に表れた光景に、本州最北の都市であることを強く実感させられます。

当初は、このまま青森駅まで行く予定でしたが、そのまま戻るのももったいない。丁度良く有名なスポットを経由するので、途中下車をし、立ち寄ることとします。

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深き白に染められて~厳冬の八甲田へ~

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸
2015.2 青森

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●1日目(東京⇒青森)
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3日目(酸ヶ湯温泉)
●4日目(酸ヶ湯温泉⇒三内丸山遺跡⇒東京)
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