深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 4日目 ④~

青森市営バス青森駅行き

思いがけず濃厚な時間を過ごさせてくれた三内丸山遺跡。最後の寄り道を終え、この旅の出口である青森駅へと向かいます。

三内丸山遺跡から駅までは、巡回バス『ねぶたん号』と『青森市営バス』が日中はそれぞれ1時間に1本程度ずつ、都合毎時2本程度走っているので、比較的簡単にアクセスできます。


青森郷土料理津軽三味線りんご箱
青森滞在も残すところあと数時間。この旅最後の青森の味を楽しむべくお昼にと選んだのは、駅前のビルアウガの地下、新鮮市場内に位置する『郷土料理 津軽三味線 りんご箱』。

青森郷土料理津軽三味線りんご箱飯寿司盛り合わせ

後はもう、お土産を買って帰るだけ。それまでの間、北の味覚と旨い酒をたっぷり愉しんでやろうと、どっしりと腰を落ち着けます。

まず頼んだのは、飯寿司盛り合わせ。さんま、にしん、赤魚の飯寿司がたっぷり盛られています。僕の大好物の飯寿司。北海道で食べるものよりもすっきりとした印象の味で、辛めの青森の地酒にぴったり。

青森郷土料理津軽三味線りんご箱ほたて貝焼き味噌

そして青森と言えば、のホタテ貝焼き味噌。ふっくらな卵とほたてがたっぷり入った貝焼き味噌は、ちょうど良い塩梅でこれまた素朴な美味しさ。そう言えば今回はこれが初貝焼き味噌。青森に来たならば、絶対に、絶対に食べなければならない郷土料理。

青森郷土料理津軽三味線りんご箱ほたてバター焼き

続いても帆立繋がりで、バター焼きを。大きい貝に見合った大ぶりの身は、見た目通りのブリブリとした心地よい食感。火が通り旨味が凝縮したひもと卵もまた旨い。青森の帆立には心底惚れこんでしまいます。んまいっ!

青森郷土料理津軽三味線りんご箱地酒片手に津軽三味線生演奏を聴く

席に着いて30分、程よく気分も良くなったところで、お待ちかねのメインイベント、津軽三味線の生演奏が始まります。

僕がここのお店を選んだのは、生の津軽三味線を聞きたかったから。これまでも幾度か生演奏を聴く機会に恵まれましたが、何度聞いてもその迫力に圧倒されます。

ほろ酔い加減で聴く津軽三味線の力強い調べ。打ち付けるバチから伝わる音と振動は、皮膚から心へと浸透してゆくかのよう。何度立ち会っても、全身を包む鳥肌が立ち心が震えるこの感覚。

あぁ、本当に幸せだ。青森にまたこうやって来ることができ、また三味線を聞ける。力強さと哀愁を含んだ音色に重なる僕の感情。何故だかいつも、泣きたくなってしまうのです。

青森郷土料理津軽三味線りんご箱筋子といかの塩辛

短くも濃い津軽三味線の生演奏を五感に刻み込み、余韻をつまみに呑む津軽の酒。旨くない訳が無い、至福の青森での昼酒。

最後に注文したのは、これまた大好物の筋子といかの塩辛。半分ほどお酒のアテにちびちびと楽しみ、最後はご飯を頼んで幸せ気分の腹固め。余は満足じゃ。思い残すことは無い。

厳冬の青森桟橋可動橋と海峡の女王八甲田丸

お昼と言うのに生1杯と地酒4杯ですっかり仕上がってしまった、ご機嫌な僕。ビルを出るとこれまで纏っていた火照りが、冬の青森の風にさらわれてゆくのを感じます。

青森を発つまでまだもう少し余裕があるので、もう一度あの女王にご挨拶を。ここに立つと襲われる、現役であるかのような悲しい錯覚。今でもこの可動橋を幾多の貨車が渡る音が聞こえてくるよう。

でも僕は、それを知らない。見てみたかった。聞いてみたかった。そして、乗ってみたかった。でもそれは、永遠に叶わない憧れになってしまった。

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸

この時、八甲田丸は改修工事で休館中。そのためここまで来る人も皆無のようで、雪に刻まれた足跡も、ぽつりぽつり。

そんな静かな冬の午後、凍てつく海と鉛色の空の中に佇む、海峡の女王。海に浮かぶ船体を繋ぐ太いロープは静かな青森港の波に呼応し、八甲田丸が息をしている。そんなくだらない妄想までをも引き起こします。僕はそれでも思いたい。連絡船はまだ生きていると。

厳冬の青森雪に埋もれた津軽海峡・冬景色歌碑

冬の青函連絡船といえば、切っても切れないのが津軽海峡冬景色。子供の頃から何故か大好きで、今でも好きな歌の1位タイを維持するこの歌。この歌碑の前に立てば、その歌が自分のためだけに流れ始めます。

頬を刺す空気の中、雪に埋もれるように停泊する八甲田丸を眺めながら聴く、津軽海峡冬景色。まさにこの季節、この場所にこの歌あり。流れる歌声と共に、JNRのマークが爪を立てて心に痛く突き刺さります。

凍てつく冬の海と青森ベイブリッジ

寒い中での津軽海峡妄想を味わい、3日前に歩いた道を辿ろうと進んでゆくと、たったのこの数日で歩道は雪で埋まり、歩けないほどになっていました。恐るべし、青森の雪深さ。

積もる雪と鉛色の海に凍える海峡の女王青函連絡船八甲田丸

仕方なくすぐ隣の駐車場へと進路を変更し、女王を眺める場所を目指します。ここ数日で積もった雪は、到着時よりも遥かに美しく、八甲田丸を純白で彩ります。空も海も、どんよりとした鉛色。それを覆うほどに積もる雪。冬ならではの、心に沁みる美しさ。

厳冬の青森鉛色の空とアスパム

青函連絡船の在りし日に思いを馳せ、目に焼き付けて別れを告げます。そしてそのまま歩き、大きな三角形の建物が印象的な『青森県観光物産館アスパム』に到着。ここで色々なお土産をのんびり眺めて回ります。

でも、肝心の一番欲しいものが見当たらない。アスパムを後にし、市内のデパートを見てみても、やはり見つからない。ようやく民芸品屋さんで見つけて手に入れたのは、青森名産のヒバのまな板。

青森行きを決めた時から、お土産に買って帰ろうと心に決めていましたが、いざ見てみると、現地でも全然売っていません。お店の方曰く、青森ヒバは伐採量が制限されており、まな板が取れるようなサイズの木材が中々手に入らないとのこと。

ようやく出会えた青森ヒバのまな板は、根元に近い非常に身の詰まった、重たく硬い立派な一枚板。少しおまけもしてくれて、東京ではありえない価格でうちに連れて帰ることができました。そして2カ月たった今も、使うたびに良い香りと刃当たりで調理を楽しくしてくれています。

最後の最後まで青森を楽しみ、青森の自然が生んだ恵みを連れて帰れることの幸せ。重いけれど、その重みを楽しみながら、この旅を終える時間を迎えるのでした。

深き白に染められて~厳冬の八甲田へ~

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸
2015.2 青森

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