金沢発、飛騨経由、信濃ゆき。~やりたいことを結ぶ旅 5日目 ③~

濃飛バス

1泊2日、街並みに、美酒に、美食にと、存分に愉しませてくれた高山の街ともお別れの時。駅前の高山濃飛バスターミナルより、『濃飛バス』新穂高ロープウェイ行きに乗車。

金沢から上高地までお世話になったバスはみな、濃飛バスの単独または共同運行路線。飛騨地区への旅行の際はホームページを要チェックです。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋

高山から路線バスに揺られること約1時間10分、今宵の宿の最寄りのバス停、古ヶ屋根に到着。先日バス停が名称変更したばかりということで、こちらで降りる際は要注意。

バスを降りれば、目の前が今夜お世話になる宿。有名な温泉郷である奥飛騨温泉郷のひとつ、新平湯温泉にある『旅館藤屋』にお世話になります。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋客室

早速チェックインし、荷物を降ろして浴衣でリラックス。そう言えば、今回の旅は僕にしては珍しく観光メインの出だし。こうやって温泉宿にチェックインするのは、この旅ではこれが最初。

もう旅館から一歩も出ず、味、酒、そして湯三昧と決め込む。久々に味わうこの感覚に、やはり温泉旅は辞められないと実感するのです。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋二つの源泉

そしていよいよ、待ちに待ったこの旅最初の湯。(白川郷は立ち寄りだったので許してね。)こちらの宿を選んだ理由のひとつが、この温泉。

湯量の多い奥飛騨温泉郷の中でも、こちらの宿は2種の異なる泉質、泉温を持つ自家源泉を持っているとのこと。ひとつの宿で二度おいしい、温泉好きには堪りません。

奥の大きい浴槽が、70℃と高温のナトリウム-炭酸水素塩温泉と36℃の単純温泉の混合浴槽。高温泉の方が弱アルカリ性ということで肌への馴染がよく、とても優しい浴感を持つ温泉。惜しげもなくどばどばと掛け流されるお湯に浸かれば、これだけでも十分と思える気持ちの良いお湯です。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋掛け流しの冷泉

そしてこちらは中性の冷泉掛け流し。写真では伝わりにくいでしょうが、単純泉と言いつつこちらの方が濃そうな見た目。奥の浴槽がそこまで透明なのに対し、こちらは濁っていてあまり見えません。

上と下、ぬるい部分と冷たい部分が分れているため、しっかりかき混ぜてからゆっくりと入ってゆきます。沈殿していた多量の湯の花が舞い、温泉の濃さを目でも味わえます。

冷たさを覚悟しつつじっくり浸かってゆくと、思いのほか嫌な冷たさは感じません。小さい浴槽にだまって浸かっていると、肌には気泡がプチプチとついてきます。

そして表皮から体の芯へと伝わる、お湯のパワーのような不思議な圧力。体温より冷たい温泉に入っているのに、額からはじんわり汗が滲み、内側からぽかぽかしてくるような感覚が。

これは不思議な温泉、初めての体験です。以前訪れた栃尾又温泉の冷泉とは全く違う浴感。あちらが包み込むような優しさだとすれば、こちらはじわっと攻めてくるような力を感じる温泉。

これまで冷泉に入る機会がほとんどありませんでしたが、温泉は温度だけではなく泉質なのだと再認識させられる、そんな大地の力を感じる温泉でした。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋露天風呂

そしてこちらが露天風呂。内湯の大きな浴槽と同様に、高温泉と冷泉が混合され掛け流されています。

内湯で温まったら冷泉へ、冷泉を味わったら露天で体を温め、岩に腰掛けクールダウン。そしてまた浸かって冷泉へ。こんなことをずっと繰り返していたい。

熱湯と冷泉の交互浴をすっかり気に入ってしまい、飽きるまでいつまでも行ったり来たりしてしまいます。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋湯上がりのビール

人生2度目の冷泉体験。前回の栃尾又のいつまでもじっくり、という感覚も大好きですが、こちらの交互浴も最高のひと言。このお風呂に入っただけでも、ここまで来た甲斐がありました。

この旅初の温泉宿ということもあり、いつも以上に長く楽しんだお風呂での時間。すっかり茹ったところで、ロング缶をプシュッと解放♪観光もいいけど、温泉もね♪あぁ、堪らない。今回の旅はどちらもいいとこどり。なんと贅沢なことでしょう。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋飛騨牛朴葉焼き

冷たいビールで渇きを癒し、もう一度お湯を楽しんだところで夕食の時間に。こちらではいろりのあるテーブルで食事を楽しむことができます。

まず目を引くのは、美味しそうな飛騨牛の朴葉ステーキ。自分好みの加減に焼いて、添えられた味噌をちょっぴり付けて頂きます。

やっぱり朴葉で焼くと旨くなる。朴葉味噌もそうですが、このステーキも何とも言えぬ香ばしさがあって堪りません。飛騨の朴葉、鬼に金棒。

隣にはこごみのお浸しとお漬物。日本酒のアテに、ちびちびと楽しむのにもってこい。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋味わい深い百姓屋敷

こちらの宿を選んだもう一つの理由が、この食事処。この建物は、飛騨の匠の技が詰まった百姓座敷を、移築もせずそのまま使っているとのこと。その築年数はなんと200年。写真を見た時に、もうここだ、ここで食事したいと思い、迷わず予約しました。

広い座敷の中央に切られた囲炉裏に、黒々と燻され鈍く光る、太い柱や梁。戸は飴色に輝き、見上げるほど高い天井。古民家風、ではない本当の古民家。こんなお部屋で食事ができるなんて、それだけで十分すぎるほど。

旅館藤屋百姓座敷で久寿玉

奥飛騨の古民家に包まれ、美味しい食事を頂く。そんなかけがえのない時間にやはり欠かせない地酒。今夜は昼間に高山で見かけた蔵元の久寿玉をお供に選びます。

飛騨の酒も本当に美味しい。すっかり好きになった飛騨の酒をちびりと飲みつつ眺める座敷。まさに至福の瞬間、何故今まで飛騨へ来なかったのだろうと後悔してしまうほど。旅するほど、行きたい場所が増えてゆく。困ったものです。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋岩魚のお造りとこんにゃくの酢の物

こちらはこんにゃくの酢のものと、岩魚のお造り。ここ最近、山の温泉に行くようになって食べる機会が増えてきた川魚の刺身。それまで川魚と言えば、塩焼きか甘露煮位しか食べたことありませんでした。

淡白ながら旨味と食感の際立つ刺身を食べてしまうと、より一層川魚を好きにならずにはいられません。もちろん、この岩魚のお造りもそう思わせてくれる美味しさ。久寿玉と合うなぁ♪

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋そば

続いては飛騨のおそば。見た瞬間、これまでにないほどつゆの色が薄くて驚きましたが、だしのしっかり効いた、それでいてすっきり上品なつゆがそばとぴったり。そばは黒く濃いめのつゆが好きな僕ですが、この味も好み。お酒を飲んで火照った喉を心地よくするすると通ります。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋ニジマスの山椒味噌焼き

笹の葉の包みを開けてみれば、途端に広がる良い香り。中には虹鱒の山椒味噌焼きが包まれています。

身のふっくらした虹鱒と、香りのよい山椒。そして飛騨の味噌が合わされば、もう説明するまでもないでしょう。飛騨の味噌、本当に旨いわぁ。こりゃ酒飲み泣かせの逸品です。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋山うどを生で

続いて運ばれてきたのは、何ともダイナミックな一本まんまの山うど。それも、生。上半分は皮付きで、産毛も生えているからどうやって食べるのかと思ったら、やっぱりそのまま丸かじり。

この日の朝に採れたばかりという新鮮な山うどに、味噌を付けてポッキリと。途端に瑞々しい水分とうどの何とも言えない香りが溢れてきます。根元のしゃきっとした食感もさることながら、穂先に進むにつれて強くなる風味もまた絶品。

本当に美味しいものは、そのままで食べるのが一番かもしれない。今更ながらそのことを思い知らされるような衝撃を受けました。この時期に来て本当に良かった。東京では決して味わえない、本来の贅沢と言うものを垣間見た気がします。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋温泉クマ鍋

そして最後にして最大のメインは、温泉クマ鍋。通常は鴨鍋が出てくるようですが、プランによっては予約時にお願いすれば、地鶏、ボタン、そしてこのクマを選べます。

温泉で煮込んだというクマ肉がたっぷり入ったお鍋。見るからに脂身の割合の多い肉は、いかにも獣を思わせる存在感。だしの表面には、クマから出た油が薄く張っています。

僕はクマを食べるのが初めて。猪や鹿といった獣肉は好きですが、クマともなればデカさが違う。脂も多そうだし、獣臭かったらどうしよう。そんな一抹の不安を期待感の中に織り交ぜながらひと口。

結論から言えば、くまさん大好き!!まず心配だった脂身ですが、脂身ではなく白身と訂正させていただきます!

弾力の中にコリッとした食感があり、ほんのりとした甘味と味わったことのない旨味を感じます。まさにこれは、白い色をした立派な肉。脂肪なんてものでは無い。

白身に対して小さく付いているだけの赤身ですが、ギュッと締まった食感の中からじんわりと旨さが滲んできます。噛めば噛むほど美味しい、癖になりそう。

そんなクマだしがたっぷり出たつゆは、ちょっとだけ甘めの味噌ベース。絶品のつゆを野菜がたっぷりと吸い、野菜まで味わったことのない旨さに。

クマがこれほどまでに美味しいとは。くまさんには悪いけど、これからは写真を見てもちょっと違う目線で見てしまいそう。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋温泉熊の敷き皮

ごめんね、くまさん。申し訳ない気持ちになりつつも、食材として調理されてしまった以上は、僕が食べずに残してしまうと、もっとかわいそうなんだ。なんて屁理屈をこねて自分の気持ちに折り合いを付けつつ、最後まで美味しく頂きました。

温泉と座敷で選んだこのお宿ですが、お料理もまた大正解。魚や山菜からクマまで、どれをとっても大満足。特にお鍋が美味しく、おかげでつゆ掛けご飯が止まらず、死にそうなほど満腹になってしまいました。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋夜のお供に山車蔵元秘蔵酒

部屋へと戻り、ぽんぽんに膨れたお腹をしばらく落ち着けます。ようやくお酒が美味しく飲めそうな位まで落ち着いたところで、いつもの時間。本と、お酒と、温泉と。知らない土地の居酒屋で酔う夜も良いですが、温泉宿でじっくりのんびり過ごす夜もまた良いものです。

そんな奥飛騨の夜のお供に選んだのは、昨日高山の古い街並みで見つけた蔵元、山車の蔵元秘蔵酒。これは試飲して一発で気に入り、これしかないという勢いで購入した一本。

つるバラという花の酵母から作られたこのお酒は、これまで飲んだことのない超・個性的な味。香りや味はまるでメロンのような雰囲気があり、これが日本酒なのか、とひと口目はビックリしました。

フルーティーで甘酸っぱく、それでいてベタベタした嫌らしい甘ったるさは全くない。辛口好きの僕ですが、これはもう忘れられない一本となりました。

奥飛騨温泉郷新平湯温泉旅館藤屋夜の静かな冷泉

本を片手に初めての酒を愉しむ。それらに飽きたら、もちろん温泉へ。内湯でしっかりと温まったところで冷泉へと移れば、これまた初めての湯の味わいに酔いしれる。

前半は観光メインで始まったこの旅も、後半戦はこんな夜の連続が待っている。これだけ濃い時間を愉しんでも、まだあと半分残っている。今までも楽しかった。これからも楽しみだ。

頑張って働いて、頑張って休みを取った甲斐があった。こんな幸せがあと3日間も続くかと思うと、心から溢れて手に負えないほどの幸福感に包まれるのでした。

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金沢発、飛騨経由、信濃ゆき。~やりたいことを結ぶ旅~
初夏の白川郷この時期ならではの逆さ合掌
2013.6 石川/岐阜/長野
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