錦秋の岩代路 ~秋の福島ひとり歩き 2日目 ⑤~

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館

日中線記念館から歩くこと約10分、600年以上の歴史がある名湯、熱塩温泉は『ますや旅館』に到着。

なお、この熱塩までのバスは非常に本数が少なく、また、平日のみの運行(土休日は全便運休)なので、訪れる際には要注意です。(路線バスは廃止)

この日は平日でしたが、そんなこともあり喜多方の街並みや会津の山なみを楽しみながらここまで歩いてきました。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館客室

気さくな御主人に迎えられ、部屋へと向かいます。長時間背負った重たいリュックを下ろし、早速浴衣に着替えて落ち着きます。僕はやっぱり浴衣が大好き。浴衣を羽織れば、たちまち温泉に来た!という実感に包まれます。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館客室から望む源泉小屋

こじんまりとした家庭的な旅館なので、部屋数も僅かなもの。この日は僕を含めて2組の宿泊だったので、角部屋を用意してくれました。

窓からは源泉小屋を眺めることができ、この旅館が源泉から一番近く、一番新鮮な源泉を使っていることが分かります。ちなみに、この源泉の管理はこちらの御主人がされているそうです。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館激熱のお風呂

歩き疲れた体を癒すため、待ちに待った温泉へ。こちらには露天風呂はありませんが、その代わりに湯を純粋に楽しむために作られた檜風呂が迎えてくれました。

御主人の談では、元々はこの辺りの旅館はみんなこれ位の大きさの湯船だったそう。源泉掛け流しの質の良い温泉を提供するため、湯船のサイズは変えないとのこと。宿の温泉へのこだわりと、往時の熱塩温泉の姿が詰まった浴場です。

熱塩温泉、その名の通りとっても熱くてとってもしょっぱい!試しに手を入れてみましたが、茹ってしまうかと思うほどの熱さ。

これでも、源泉のほとんどは奥に掛けられた樋の出口から捨てられています。ちょろちょろとしか湯船に流れ込んでいないのにこの熱さ。まさに評判通りの激熱です。

一瞬、この温泉は諦めざるを得ないのか?との不安が頭をよぎりますが、この熱さに挑むため備え付けのお湯をかき回す道具で丹念に湯揉みし、意を決してつま先から恐る恐る入ってみます。

そうすると意外や意外、入ったときは痺れるほど熱く感じるのに、肩まで浸かり安静にしていると想像以上に柔らかく体を包んでくれる不思議なお湯。普通では絶対に入れないと思う温度ですが、この泉質のなせる業なのか、意外と平気で入っていられます。

それでも1回に浸かれるのは2分が限度。逆上せないように木の柔らかい床で休憩しながら、じっくりと湯浴みを楽しみました。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館熱い風呂上がりに爽快な‐ビル

それでもやっぱり熱いものは熱い!!4度ほど湯船に使って初回の入浴は終了。

舐めるとかなりしょっぱい温泉ですが、東京でよくあるような塩分濃度の高い温泉とは違い、風呂上りのべたつきは皆無。それでいて脅威の保温効果で、いつまでも温かく、いつまでもじんわり汗が滲んできます。

そして極めつけは風呂上りの爽快感。頭の芯から背筋を通り足先まで、すっきりと軽くなったような感覚。いやぁ、最初はただのしょっぱい温泉だとたかをくくっていましたが、見事に裏切られました。

そんな初めての温泉との出会いに乾杯。芯の芯まで茹だった体に、辛口のビールがさぁ~っと染み渡ってゆきます。極楽、極楽。ただそのひと言に尽きます。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館夕食

たくさん歩いたのでもうお腹はぺこぺこ。待ちに待った夕食です。煮物にお浸し、枝豆の和え物など、素朴な家庭料理が並びます。どれもホッとする美味しさで、会津の田舎に来たということを強く実感させてくれるもの。

左下にあるのは、熱塩の湯で作った源泉豆腐。熱塩の湯は豆腐が作れるほど成分の濃いお湯である証。普通の豆腐とは違った、カッテージチーズのようなほろりとした食感が印象的なこの旅館の名物です。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館芋汁

ご飯と一緒に出された芋汁。里芋ときのこがたっぷりと入っており、まさに山里のご馳走。お肉のだしがよく出たおつゆは、それだけでご飯が何杯でも食べられてしまいそう。素朴だけど本当に美味しい。体も心も温まります。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館そば

続いて出てきたおそば。御主人が「今日はおそばが出ますから。」と言っていたので、たまにしか出ないものなのでしょうか。

このそばがビックリするほど美味しい。旅館で出るおそばだから、と全く期待をしていませんでしたが、瑞々しい喉越しと程よいコシがあり、おそば屋さんで出されるレベル。手打ちなのかどうかは聞いてませんが、これには驚きました。

会津喜多方熱塩温泉ますや旅館枕元にラベンダー

心温まる夕餉を終え、部屋に戻ると枕元に思わぬ心配りが。意外な気遣いに、こころが解れてゆくのを感じました。

はっきり言って、こちらのお宿は小洒落た旅館でも無いし、食事も家庭料理のような感じです。ですが、人が温かい。御主人もそうですし、お給仕をしてくれたおばあちゃんも、のんびり話す柔らかい雰囲気を持っていました。

そして、源泉豆腐やおそば、芋汁など素朴ながらおいしく作られたお料理と、鄙びた小さな浴場。このお宿には、会津の田舎に帰ってきたと思わせるような、飾らない会津の良さが溢れているように感じました。

吉の川しぼりたて生酒原酒

今まで体験したことの無い、文字通りの家庭的な宿。観光地化されていない名湯熱塩温泉の、飾り気は無いが素朴で落ち着けるこの雰囲気にすっかり酔ってしまいました。

そんな僕を更に酔わせる会津の美酒。地元喜多方の吉の川しぼりたて生酒原酒。アルコール度がつんと高め、濃い目のお酒。こちらの酒造は地元にこだわり、喜多方以外にはほとんど出荷していないそう。まさにここでしか飲めないお酒です。

口に含めばとろりとした濃厚な風味が広がりますが、後味はすっきり、嫌味を残しません。純米ではありませんが、お店で試飲させてもらいその美味しさに思わず購入。その選択は間違っておらず、これだけ濃いにもかかわらず、最後まで飲み飽きることなく美味しく頂きました。

会津の山村、名湯、美酒にひと。その魅力にどっぷりと浸かり、熱塩での夜は更けてゆくのでした。

錦秋の岩代路~秋の福島ひとり歩き~
燃えるような紅葉に包まれた安達太良山
2011.10 福島
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