GW 列島半分 ぐるり旅 ~願えば海路の日和あり 4日目 ②~

名古屋から40時間掛けて苫小牧に到着した太平洋フェリーきそ

名古屋港を出港し40時間、大海原を2泊3日掛けてはるばる航行してきた太平洋フェリーきそ。ここで過ごしたかけがえのない時間の余韻に、この船を離れがたい気持ちは増すばかり。

6年ぶりに踏んだ北海道の地。ものすごく、ものすごく嬉しいはずなのに、それすら霞んでしまうほど芽生えてしまった愛着。苫小牧フェリーターミナルの大きな窓ごしに、最後の雄姿を目に焼き付けます。

苫小牧市営バス塗装の道南バス
背後に巨大船の気配を感じつつ待つことしばし、『道南バス』の苫小牧駅前行きが到着。フェリーの時間に合わせ運行されているため、あまり本数が無いので要注意。他にも札幌直行の高速バスや新千歳行きのバスもあるので、アクセスは意外と便利。

それにしてもなんだこれ?慣れ親しんだ僕の知っている道南バスの新旧塗装じゃない。非常に厳しい公共交通機関、中古車を塗り替える余裕すら無くなってしまったのか・・・。

なんて失礼なことを乗車中に考えていたのですが、どうやら以前苫小牧には市営バスが走っていたそう。この車両はそれを引き継いだもののようで、言わば昔の記憶を残す生き証人。

苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場
そんなバスに揺られること約5分、出光カルチャーパークバス停に到着。ここで途中下車し海の方へと歩くこと15分、『海の駅ぷらっとみなと市場』に到着。駐車場にはたくさんの車が駐まり、市場の中は休日を楽しむ大勢の人で賑わっています。

苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場内にあるみなと食堂
お昼はこの市場で食べるということだけ決め、敢えて下調べせず何の予備知識もないまま歩く場内。たくさんの食堂が並ぶ中、目に留まった『みなと食堂』にお邪魔してみることに。

苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場内のみなと食堂しあわせ刺身定食A
こちらは海鮮丼と刺身定食がメインで、それぞれ自分の好みのネタを選べるというシステム。金額によりネタの種類や選べる品数が変わるほか、普通の海鮮丼と同じく固定された組み合わせのものもたくさん。

風呂上りならぬ船あがりのビールを楽しむことしばし、注文したしあわせ刺身定食Aが運ばれてきました。久々の北海道ということで、北の海らしい3種類をチョイス。

左はひらめ。肉厚でこりっとした歯ごたえともっちりとした食感が共存する、北国の白身らしい旨さ。添えられたえんがわがまた、熱々の白いご飯にびったり。

中央はほたて。最近は青森で食べる機会が多いのですが、久しぶりに北海道のものを。食べてみれば言わずもがな、負けず劣らず美味。

肉厚でねっとり、そして程よく感じる貝の食感。噛めばじゅんわりと甘味が広がり、またまたご飯が止まらなくなります。青森と北海道、それぞれの味の違いを再認識し、やはり旅の醍醐味は食なのだと悦びを噛み締めます。

そして右は、苫小牧といえばの北寄貝。僕はこれを食べるために、港から札幌へ直行せず苫小牧市内へと向かいました。

その期待を込めつつひと口。すると広がる旨味と甘さ。うぅん、甘い!甘い♪自分でもたまにお刺身を作りますが、やはり産地のものは鮮度が違うのでしょう。厚みも食感も、そして甘さや海の香りも違います。

苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場内のみなと食堂ホッキフライ
程なくして、一緒に注文したホッキフライも到着。カリッとサクッと揚げられた衣の中には、その食感に負けない存在感を持つ肉厚の北寄貝。加熱された分甘味や風味が増し、ソースやしょう油に負けない俺ホッキ!としっかり感じる自己主張。

最近は、敢えて下調べをせずその時の直感でお店を選ぶようにしています。その方が、旅の楽しみがもっと増えそうだから。今回はそんな作戦が功を奏しました。

北海道らしい豪華な海鮮丼には目もくれず、自分好みで選んだ白身と貝のしみじみとした美味しさ。僕はまぐろや蟹なんかより、こうした北の海の幸が好き。だって、地味だけど北海道でしか味わえないものだから。

北海道を訪れる度、毎度のことながら驚くのが魚介のおいしさ。ひらめもほたても北寄も東京で食べられますが、毎回毎回味の違いに驚いてしまうのです。その違いは、北海道から帰るとしばらく東京の刺身は刺身じゃないと思うほど。

やっぱり渡道して良かった。十数年ぶりに海を渡りやってきた北海道。そしてその海で育った恵みを味わうという幸せ。今自分は確かに北海道にいる。慣れ親しんだ旨さに、航海の夢うつつからやっと気持ちも上陸したのでした。

苫小牧出光カルチャーパークゴールデンウィークのつぼみ膨らむ桜
北海の幸に舌鼓を打ち、満足感を抱えて駅方面へ。途中大きな公園を見つけ、園内をのんびりぷらぷら歩きます。するとそこには、枝を見事に広げる桜が。あ、でも今はゴールデンウィーク・・・。膨らむつぼみの姿に、日本の広さを感じます。

苫小牧に残る王子製紙軽便鉄道の小さな機関車と客車貴賓車
そのまま大通りを進み、巨大な敷地を誇る王子製紙の一角へ。そこにはぽつんと、小さな機関車と客車が佇みます。

この車両は、昭和26年まで走っていた王子軽便鉄道のものだそう。製紙工場で必要な電力をと建設された千歳発電所の工事のため、支笏湖畔を通り千歳川の上流へと敷設されました。

JR苫小牧駅
海の駅から寄り道をしつつ、苫小牧駅へと到着。ここから久々のJR北海道に乗り、道都札幌を目指します。

JR北海道721系苫小牧発小樽行き
ホームには既に電車が停車中。北海道を訪れた人の多くが乗るであろう、快速エアポートにも使用される721系電車。子供の頃初めてこの電車に乗ったときのことは、今でも忘れない。

全国各地、いや、世界各国から絶えず降りたつ飛行機。快速エアポートはその乗客で溢れかえり、冬だというのにものすごい熱気と押し潰されんばかりの混雑。

そんな状況でも、特徴的な内装に目を奪われる。デッキは鮮やかなスカイブルーに彩られ、描かれるのは北海道らしいすずらんの花。車内は一変して山吹色が温かみを与え、明らかに東京のものとは違う雰囲気を感じた。

そんな想い出の詰まった721系ももう古参。昭和末期に生まれた車両は、現代にはない華やかさと良い意味での垢抜けなさが愛おしい。

6年ぶりに眺める千歳線沿いの車窓に広がる北の大地
JR発足後、黒煙を吐くジーゼルカーと赤い電車しかなかった北の大地に新しい風を運んだこの車両。久々の721系に浸っていると、車窓はいつしか北海道らしい雄大なものに。

春まだ浅い、ゴールデンウィークの北海道。芽吹き前の大地に重なるのは、あの夜を駆ける煌めく星。6年前、僕は逆の方向を目指し、北斗星のロイヤルからこの景色を眺めた。そのことが昨日のことのようでもあり、幻のようにも感じてしまう。

ほんのりとした痛みを伴いつつ、思い出される北国での記憶の数々。さぁこれから、僕史上最短、1泊2日の北海道滞在が始まる。中部名古屋から始まったこの旅が迎えた第二局面に、経験のないほど胸は高鳴るのでした。