冬の北国ひとり旅 ~3・4日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

冬の北国ひとり旅 ~3・4日目 ③~

北斗星ソロ室内で飲むあさひかわ 旅行記

日本でほんの数えるほどしかなくなってしまった食堂車で列車旅の醍醐味を満喫した後は、再び夜行列車の風情に浸ることにします。

個室に戻り開けたのは、旭川の高砂酒造で買った、あさひかわ。キリリと辛口の国士無双に比べ、口当たりの優しいお酒。いつもは四号瓶を買うのですが、こうして小さい瓶を何種類か楽しむのもいいものです。

北斗星ロビー室

自席に縛られず、色々なところに身をおいて気分転換ができるのが、列車旅のいいところ。個室にこもっていてはもったいないので、お隣ロビー室へと繰り出します。ここでお酒を片手に、放映されている映画を見てのんびり。気が付けば、森駅を過ぎていました。

寝台列車と風のささやき

映画も見終わったので再び部屋へと戻り、同じく高砂酒造の風のささやきを開けます。こちらもクセのない、名前の通りの爽やかで優しい口当たり。まもなく函館。北海道最後の停車駅へと、列車はリズムを刻みながら駆け続けます。

北斗星函館到着

函館駅に到着。ここで今まで頑張ってくれたディーゼル機関車を切り離し、海峡線用の機関車に付け替えます。ほんの数日前、僕はここに「これからだ!」とワクワク顔で立っていました。旅はどれだけ長く行っても、あっという間に過ぎてしまうものです。

函館駅で最後の雪を踏む

来たときに駅前の雪を踏んだことを思い出し、ホームで北海道の雪の踏み納めをしました。その感触を確かめるように、何度も、何度も。そして胸一杯に北海道の空気を吸い込みます。胸が少しだけ痛いのは、空気の冷たさの仕業ではないのでしょう。

夜の函館駅を出発するキハ40

そして、このディーゼルカーともお別れ。北海道によく似合うエンジンの唸りを轟かせて出発して行く列車を見送ります。五感で北海道を感じられるのも、この旅ではこれが本当に最後。発車の放送に背中を押され、後ろ髪を引かれながらデッキへと戻ります。

北斗星から眺める北海道最後の街灯り

海峡線は新幹線を通すことを見据えて作られた高規格な路線。そんな線路を、列車は淡々と静かに走ります。

そしていよいよこの瞬間が。この光を最後に、僕の第二の故郷である北海道としばしの別れ。列車は轟音と共に、青函トンネルの闇に吸い込まれていきます。さようなら、北海道。また、来ます。

青函トンネルの闇と男山ワンカップ

本州と北海道を繋ぐと同時に隔てる青函トンネル。その長い、長い闇で沈んでしまいそうな心を救ってくれるのは、男山純米生酛。僕の好きなキリッと辛口、北海道らしいお酒が詰まっています。

一口一口ごとに、今回の旅での出来事が思い出として消化されていくよう。僕にはやっぱりこの作業が必要。

飛行機でいきなり羽田に降ろされはい終わり、とはいかないのが僕の性格。列車の中で、ゆっくりとお酒と共に思い出に変えてゆく。そんな時間がまたかけがえのない、贅沢な時間であったりもします。

JNRマークが輝く北斗星ソロ灰皿

長いトンネルで目のやり場に困った時に、ふと見つけた懐かしいマーク。僕らくらいからの世代には懐かしい、日本国有鉄道のマークが未だに残っていました。

図案化されたJNR(JapaneseNationalRailways)の文字は、今見てもそのかっこよさを失っていません。昔の車両にはいたるところに使われており、久しぶりに自分がぎりぎり国鉄世代だったことを思い出しました。

小さい頃、このマークをつけた特急を見てワクワクした感覚が蘇ります。この北斗星は、JRになってから改造され生まれた列車。ですが、このJNRマーク付きの灰皿は、それ以前から使用されていたものでしょう。一体どれだけの旅人の姿を見守ってきたことか。こんな小さいところに、様々な旅模様がぎっしり詰まっていそう、そんな発見でした。

青函トンネルを抜け本州蟹田へ

列車は順調に走り続け、青函トンネルを抜けて無事に本州に突入。蟹田駅ではJR東日本の車両が停まっていました。もうここは紛れもない本州。そう思うと、見える雪景色までもが、なんだか今までと違うように感じてしまいます。

もうすぐ日付が変わる頃。そろそろ列車内での夢をみようと、横になりました。


駅弁女将のおもてなし弁当宮城県秋保温泉編

寝台列車の揺れは、人により向き不向きがあるもの。僕にはこの上なく快適で、まるで揺りかごに揺られるかのように、深い眠りにつきました。目が覚めたら福島駅。身支度を整え、食堂車での駅弁販売開始の放送を待ちます。

程なく食堂車営業開始と売店での販売開始の放送が。朝食を買うために食堂車へと向かいます。今回購入したのは、女将のおもてなし弁当 宮城県秋保温泉編。秋保温泉の女将さん方がプロデュースしたお弁当です。
駅弁女将のおもてなし弁当宮城県秋保温泉編中身

蓋を開けると、海鮮茶巾寿司のほかに、笹かまや牛タン、鰊菜の花和えなどの宮城の味を中心とした、様々なおかずがぎっしり詰められています。色々なものを飽きずに、ちょっとづつ楽しめる。まさに女将さんのおもてなしの心。

東京と同じNREの調整ですが、味付けは若干濃い目。このあたりも東北という地域性を感じさせてくれます。肉メインやカニやウニ、そういった画一的なお弁当が増える中で、地域の食材を地域の味付けで食べさせてくれる。そんなお弁当が嬉しい。

北斗星は関東へ突入

ゆっくりお弁当を楽しんでいると、いよいよ栃木県に突入。いよいよ東北も過ぎ、関東へと戻ってきてしまいました。景色が変わるように、自分も日常モードへと戻していかなければいけません。

北斗星黒磯駅通過

そして黒磯駅を通過。ここで電源が交流から直流へと切り替わり、本格的な東京圏内へと入ります。向かいのホームには見慣れた車両が停まっており、この旅のフィナーレまでのカウントダウンが始まります。

長旅を終えた北斗星牽引EF81カシオペア色

札幌を出発して16時間半、無事に上野駅に到着。長いようで短い、凝縮された列車旅も終わりです。それと同時に、この旅も終わり。密度の濃い、本当に楽しい旅でした。

北海道まで列車で行って、列車で帰る。今回の行程では、往復だけで24時間以上列車に乗ることになります。一見、時間の無駄に見えるかもしれません。飛行機なら、もっと現地滞在の時間を増やせることでしょう。

ただ、飛行機で行く北海道は、本当に日本の北の果て、と感じられるでしょうか。どれだけ乗ってもまだ着かない。それほど遠いと実感できるからこそ、北海道の魅力をより深く感じられることと思います。

これから向かう地に思いを馳せ、帰りは旅の余韻に包まれつつのんびり帰る。これこそ、真の贅沢な旅だと僕は信じています。

旅は現地観光やグルメだけではありません。必ず発生する移動時間をいかに楽しめるか、そこで普段できないような読書や考え事をする時間までをも楽しむ。そんな心にゆとりを持った、スローな旅。列車網が簡略化されていく中で、できるのは今のうちかもしれません。

冬の北国ひとり旅
札幌駅に入線する北斗星DD51重連
2010.1 北海道
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●1日目(東京⇒洞爺湖温泉)
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●2日目(洞爺湖温泉⇒天人峡温泉)
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●3・4日目(天人峡温泉⇒旭川⇒東京)
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