岩手の秘湯で何想う ~節目の鄙び旅 4日目 ④~ | 旅は未知連れ酔わな酒

岩手の秘湯で何想う ~節目の鄙び旅 4日目 ④~

八幡平松川温泉松楓荘夕食 旅の宿

秘湯でのゆっくりした時の流れに身を委ね、湯上がりの心地良い気だるさを思う存分愉しみます。あたりも少しだけ薄暗くなり始めた頃、いよいよ待ちに待った夕食の時間に。温泉に何度も浸かると思った以上に体力を使うため、もうお腹はペコペコです。

今回予約したのは、杜仲茶ポークのお鍋がメインのCコース。今なら平日はサービス料金で、なんと1泊6,800円。そうとは思えない内容の品々が並んでいます。

酢の物や白和え、お浸しにはうどやわらびなどの山菜が使われ、山の幸の滋味溢れる旨さをしみじみと感じることができます。岩魚の塩焼きはふっくらと焼かれており、そのほろりとした身を口に含めば、すかさず日本酒が欲しくなります。

八幡平松川温泉で飲む鷲の尾

そこで注文したのが、地元八幡平市のお酒、鷲の尾。これまでも岩手を訪れた際には何度か飲んだお酒です。

その名の由来は、岩手山の別名、岩鷲山からきており、岩鷲山の麓の酒蔵ということで鷲の尾とされたそう。そんな地元に根ざしたお酒を相棒に、さらに箸を進めます。

艶のあるニジマスの刺身は歯ごたえがよく、控えめながらしっかりとした川魚の旨味は期待通りの美味しさ。天ぷらもさくっと揚げられており、それぞれの山菜や野菜の持つ風味を感じられます。

豆乳に浸ったクリーミーな冷奴には行者ニンニクのしょう油漬けが載せられており、これがビックリの美味しさ。行者ニンニクの元気になるような風味と、それに負けない濃厚な豆腐の組み合わせは抜群。初めて食べる美味しさに衝撃を受け、思わずひとりで頷いてしまいます。

ルビー色に光るマス子にはニジマスの身が入っており、親子の旨さを存分に楽しむことができます。鮭いくらとは違いクセがなく、小さくプチプチとした食感が楽しいマス子。まさに酒のアテに持ってこい。

メインの杜仲茶ポークは地元八幡平産だそうで、厚めの脂ときめの細かい赤身の対比が見るからに美味しそう。すき焼きのタレで煮て卵にくぐらせて頬張れば、豚のいい香りが広がります。杜仲茶を食べさせているからなのか、厚めの脂も全く臭みや脂っぽさが無く、豚の脂の旨さだけを持っています。

そして今回一番のお気に入りが、ふきと鯖節の煮物。見た目はとても地味ですが、鯖節の独特の香ばしさがふきの風味を一層引き立てています。

食べて鯖であることは分かりましたが、鯖のなまり節を食べたことが無かった僕は、思わず仲居さんにどう料理しているのか聞いてしまいました。そこで教えてくれたのが鯖節。これが味の決め手だったんですね。

「とっても美味しかったので・・・」と付け加えると、「あらお若い人でもこんなのが口に合ってよかったわ♪今の若い方はこういうの中々食べないから。」と言われました。確かに、僕の好みは同年代よりも少々ジジ臭いかも。いや、小さい頃から和食が大好きでした。

それぞれの料理が美味しく、バラエティーに富んだ品々をちょっとずつ楽しめる、まさにのんべぇには堪らない大満足の夕食となりました。

八幡平松川温泉松楓荘まもなく夕暮れ

山の宿での時間の流れはゆるやかなもの。少々早めの夕食を終えても、辺りにはまだ薄っすらと明るさが残っていました。

焦らずのんびり過ごしても、まだ有り余る時間。それは決して持て余すような間延びしたものではなく、自分の暮らしとは時間軸が違う、そうとでも言わなければ説明の付かない、不思議な時間の流れ方。

松楓荘夕食後に微睡む夕暮れの時間

部屋の電気も点けずに、一杯になったお腹を抱え転びながら、夜への移り変わりをのんびりと眺めます。

家なら丁度慌しく夕飯の支度を終え、賑やかなテレビを見ながら晩酌をしているところ。そんな日常があるからこんな時間が贅沢に感じるのか、はたまたこれこそが真の贅沢なのか。僕には到底答えを導き出せないような、そんな問いを考えつつ、ちょっとだけまどろみます。

八幡平松川温泉松楓荘岩風呂

部屋がすっかり闇に呑まれたところで、部屋に響く雨音に起こされました。お腹もだいぶ落ち着き、再びお風呂へ向かいます。洞窟風呂へは傘も用意されているので雨でも心配なく行けるのですが、選んだのはこの内湯。

こんな静かな宵の口は、こんな静かな湯殿で松川の湯を味わいたい。そんなことを何となく思いながら静かに身を沈めます。

屋根を叩く雨音と流れる湯の音。聞こえるのはただそれだけ。白いお湯に身を包まれ、まさに今、僕は八幡平の自然に抱かれている。そのことを実感させる雨の内湯もまたいいものです。

松川温泉で飲む純米超辛口鹿蝦夷(あらえびす)

雨音を聞きながら過ごす、静かな秘湯の夜。そのお供にと選んだのは、盛岡駅ビル内の酒屋さんで仕入れた、紫波町は廣田酒造店の「純米超辛口鹿蝦夷(あらえびす)」。不思議な名前という印象と、僕の好きな超辛口の文字に魅かれて購入。

超辛口と言うとおり、飲み口はかなりキリッとしていますが、いかにもといった嫌な辛さは無く、スッと入るような飲みやすさ。それでいて風味や喉ごしはこれぞ日本酒、というしっかりした強さ。僕の好みのお酒です。

「どっどど どどうど どどうど どどう」。今宵も宮沢賢治の本を片手に一献を傾ける。外は風の又三郎が今にも現れそうなほど雨脚が強くなってきました。

普段なら忌々しく思ってしまう雨も、今なら心地良く感じてしまうから不思議なもの。トタンを叩く雨音が、僕を物語の世界へと誘います。

不思議な力を持つ岩手の自然。その真っ只中に抱かれ、大地の恵みに浸かり、山の幸を思う存分頂く。何故自分が東北という地へ呼ばれたのか。数日間掛けて心身の奥底まで岩手に満たされた今、言葉に出来ずとも、僕の心には強い何かがしっかりと根付いていました。

それは、上手く伝えられないのがもどかしくもあり、伝えるべきではないようでもある、自分にとって大切な何かである。それだけははっきりと判るのでした。

その時、いきなりドン!!という物音が。本を片手に物思いにふけっていた僕は思わずビックリ。

窓の方を見てみると・・・。

★けろっぴが現れるので苦手な方はここでおしまい★

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新緑の夏油湯上がりに最高のビールを
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八幡平松川温泉の夜に現れた緑色のカエル

灯りに集まる虫たちを目当てに、見たことの無い鮮やかな黄緑色をしたかえるがひっついていました。大きさは携帯電話くらい。結構な大きさです。

八幡平松川温泉のかわいい顔をした蛙

両生類、爬虫類、虫が大の苦手な僕ですが、アマガエルだけは大好き。このかえるの種類はわかりませんが、見た目はでっかいアマガエルそのもの。肌艶もいいし、何より目がくりんとして可愛いったらありゃしない。

あまりにも可愛いので何度も撮影していると、あきれたのかプイッと去っていってしまいました。何だか、かえるにまで歓迎されているように思えた、不思議で心温まる夜でした。

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