冬の近畿 食い倒れ旅 ~4日目 ①~

冬の城崎の朝

曇り空、城崎の朝。この曇り空とは決して悪い意味では無く、この季節にここを訪れたかった僕にとっての褒め言葉。冬の日本海側へ来たと実感させる、朝の空。

今日は雪予報。それも昼に掛けて強く降りそうなので、ちょっと早めに起きて外湯へと向かいます。のんびりお風呂へ向かう宿泊客と、お店の準備に追われる店員さん。そんな朝の温泉街の空気が好き。

冬の城崎御所の湯で朝風呂

朝イチで向かったのは、昨日入れなかった御所の湯。城崎では一番新しい建物の外湯だそうですが、その風格を感じさせる建物は立派そのもの。ちらつき始めた雪が、その風情を一層引き立てます。

中も木がふんだんに使われた落ち着いた造りで、大浴場には大きな窓ガラスがはめられ開放感バッチリ。外には滝を眺める露天風呂付きで、朝というのに多くの人で賑わっています。

冬の城崎御所の湯足元を彩るカニの焼き物

そう言えば、外湯での朝風呂はこれまで経験したことが無いかもしれない。やはり城崎の魅力は、こうやって宿の外へ出て、思い思いのお湯やお店、小路を楽しむところにあるのでしょう。いつもより、一層気持ちの良い朝風呂を愉しむことができました。

爽やかな湯上りの火照りを感じつつ、朝ごはんの時間までに宿へと戻ります。そんな帰り道、御所の湯の玄関前でかわいい発見。小さなかに型の焼き物がたくさん散りばめられています。

城崎温泉山本屋朝食

最後の浴衣での城崎歩きを楽しみ、宿へと戻ったところで朝食を。かれいの干物や組み上げゆば、湯豆腐などお腹にも心にも優しいメニューが並びます。

出し巻き卵は関西らしく、薄味でふっくら肉厚。噛めばおだしがじゅわっと染みだします。東京ではだし巻より甘い玉子焼き派なのですが、こういう美味しいだし巻を食べると、やっぱりこれも好き。東京ではなかなか味わえないのです。

ご飯は古代赤米を使ったお粥。頼めば白いご飯も出てくるようですが、このおかゆが丁度良い濃度で美味しく、珍しくお粥の朝食を楽しみました。

冬の城崎温泉街

小さい頃から恋焦がれ続けて来た、城崎温泉。本当ならば、2年前に来ていたはず。その時は松葉蟹は鳥取の三朝温泉で食べることになっていたので、城崎でもかには避けたいということから、但馬牛プランを扱っているお宿を探して見つけたのがこちらのお宿でした。

城崎では珍しく但馬牛を色々な食べ方で楽しめるプランがあり、これまた珍しく内湯に露天まで付いている。それが、当時のこのお宿への宿泊を決めるポイントでした。

そこで見舞われた大雪と、運休による城崎行きの断念。当時は手の届くところまで来ていながら諦めざるを得なかった城崎に、悔し涙を堪えるので精一杯でした。

冬の城崎駅蟹のオブジェ

でも、願い続けていれば思いは届く。2年の時を経て、ついに念願の城崎へと来ることができました。

期待を超える、情緒あふれる温泉街。お湯に、街並みに、下駄の音に癒される。但馬牛もまた美味で、これまで食べたことの無かった調理法で、新しい美味しさも味わうことができました。

ある意味、今回のタイミングで訪れることができ、良かったのかもしれない。松阪牛と但馬牛の食べ比べも出来たし、一度お預けを食らった分、訪れた時の感動もより強いものがあった。

城崎駅ホームにデザインされた外湯

そんな初の城崎とも、もうまもなくお別れの時。ホームにはそれぞれの外湯がデザインされ、それらを巡った思い出を蘇らせるよう。

日本には温泉街と呼ばれる様々な場所がある。歓楽街もあれば、鄙びたものもある。そんな中で、城崎温泉はどのようなジャンルに入るのだろうか。

熱海や草津のような大型ホテルは無く、それでいて宿やお土産屋さんが密集して活気があり、鄙びた感じでもない。そう言えば、お気に入りの温泉街である、信州の渋温泉もこんな感覚だ。

古くから温泉を守り続けて来た地元の方と、訪れる湯治客が作り上げた雰囲気が今もなお活き続け、そして守られてきたからこその街並みと風情なのだろう。

バブルの時代を経ても乱開発が行われずに生き残った温泉街。僕の中で、ひとつの理想形ともいえる温泉街、それが城崎のような「生粋の温泉街」とでも呼びたくなる、企業では無く人が造り上げてきた歴史ある温泉街なのだろう。

山陰本線特急きのさき京都行き

子供の頃から、こんな思い込みを持っていたのかもしれない。川と揺れる柳と木造旅館。子供心にもその風情が感じられ、三十を過ぎるまでずっと憧れ続けて来た城崎。

20年以上も経て実現した城崎との逢瀬は、濃厚にして一瞬だった。だが得たものは計り知れないほど、大きいものだった。

ありがとう、城崎温泉。そして、風情と美味で迎えてくれた山本屋さん。離れる前から後ろ髪を引かれる。僕が好きな場所を見つけてしまったときに見舞われる感覚を堪えながら、京を目指す特急に乗り込むのでした。

冬の曇天山陰本線車窓

この日は交通機関の乱れが予想されるほどの大雪予報。2年前の教訓を活かし、名残惜しさを感じつつも、1本早いきのさき号でこの地を去ります。

天気予報は当たるのだろうか。そう思いながらもどんどんと白く煙る車窓に、無事に京都へ着けることを願うばかり。

冬の山陰本線特急きのさき車窓を彩る雪景色

山陰本線は内陸へと舵を切り、進むほどに雪化粧が濃くなります。昨日ここを通った時はこんなに積もっていなかったはず。北近畿の雪は、本気を出すと怖いのです。2年前も、福知山あたりがひどかったはず。

冬の山陰本線和田山駅レンガ造りの機関庫

雪深さを増す車窓に一抹の不安を感じつつも、やはり冬を実感させる眺めにワクワクしてしまいます。冬の車窓はこうでなきゃ。

冬の列車旅を楽しんでいると、和田山駅に到着。窓の外には重厚なレンガ造りの機関庫が。白い雪との対比がその歴史を浮き彫りにし、その姿にしばし見とれてしまいます。

冬の山陰本線豪雪の車窓

福知山で福知山線を分け、山陰本線はなおも京都を目指します。京へ近付けば近付くほど、雪はものすごい勢いになっていきます。降り始めからすでに結構な量に達しているのでしょう。木には雪が団子となり、どこの雪国を走っているのだろうかという錯覚すら覚えます。

冬の山陰本線特急きのさきから望む保津峡雪景色

深山幽谷。その言葉が似合いすぎる雪景色。それでもここは、あの有名なトロッコが行き来する有名な観光地、保津峡。この日はもちろんトロッコはお休み。以前トロッコに乗った際、平成初頭までここが山陰の大動脈であったということが信じられないような立地に驚いた記憶があります。

そんな深い山と川に挟まれた保津峡を、山陰本線の現在線は一跨ぎ。上から眺める保津峡は雪と霧に覆われ、人跡未踏の感すらあります。

が、ここは平成初頭まで山陰への大動脈。数々の客車列車が、昼夜を問わず走っていたのです。きっと、運休なども今より多かったことでしょう。古の山陰への道のりの険しさ感じさせます。

城崎では見られなかった雪景色を、思いがけず堪能する車窓の旅。どうやら今回の雪の中心地は、京都、奈良のあたりのよう。

気持ちは城崎の余韻から、まだ見ぬ雪の京都へ。これまた憧れつつも出会ったことの無い景色に期待を膨らませ、列車に揺られて京を目指すのでした。

★山本屋のプランを探す
じゃらん/楽天/るるぶ

冬の近畿 食い倒れ旅

太鼓橋から眺める夜の城崎温泉街
2014.2 愛知/三重/大阪/兵庫/京都

旅行記へ