初めての熊本の夜を愉しみ、ちょっとだけ眠い目覚め。この日も同じホテルに泊まるため、チェックアウトの時間を気にせず予定を考えられるのがいいところ。
朝起きた時は生憎の空模様でしたが、段々と雨が弱まってくるのを見計らって出かけることに。まだ雨はポツポツ降っていましたが、長~いアーケードでは気にすることなく歩けます。
アーケードを抜けると、いつしか雨は止んでいました。雨上がりの靄の中に聳える熊本城。昨日の夜に見た、ライトアップされた姿とはまた違う迫力に思わず見とれてしまいます。
市電の通りをてくてく歩き、今日の最初の目的地へと向かいます。目指すは水前寺公園。モニュメントを発見しましたが、周囲のあまりの市街地ぶりに思わず驚いてしまいます。
宿からのんびり歩くこと約40分、水前寺公園の入り口に到着。高校の卒業旅行で訪れて以来、13年ぶりの再訪です。
前回は観光バスでそのまま乗りつけたため、周囲の景色はほとんど覚えていませんでした。周りにはビルやマンションがみっちり建っているのに、ここだけに広がるこの広大な眺めに思わず息を呑みます。
それ以上に驚くのはこの水の清らかさ。阿蘇の伏流水が絶えず湧き出ているというこの池は、都会のど真ん中で今もなお清き水を湛えています。
水前寺公園の名で親しまれるこの庭園は、約400年前から造られ始めた歴史ある庭園。水前寺成趣園が正式な名称で、庭園は東海道五十三次を模したと言われています。
それでは早速、この日本橋を渡り東海道の旅へ出発しましょう。
まずは歴代の藩主が祭られている出水神社にお参りすることに。
再びここを訪れることができたお礼と、この旅の安全をお願いし、庭園めぐりをスタートします。
水前寺成趣園の中でもひときわ目を引くのが、この大きな築山。その形の通り富士山を模したこの山は、東海道を表すこの庭園のシンボル的な存在感を感じさせます。
橋の上から池へと目を向ければ、その奥に立ち並ぶビルの数々。まさに都会のオアシスといった趣き。
昔はこの周辺は畑が続いていたそうで、その当時は阿蘇山などの熊本の大自然を借景としていたそう。今でさえ美しい水前寺成趣園。その頃の姿はいったいどれほど美しかったことでしょうか。
松の間から聳える霊峰富士。庭園の築山とは思えぬ迫力で、観る者を圧倒します。
以前訪れた際は、もっと青く芝が茂っている時期でした。柔らかい芝に包まれる姿も美しかったのですが、冬の枯れ芝と曲線が作り出す絶妙な姿もまた良いもの。
富士山を過ぎると全体的にアップダウンのあるコースに。一歩一歩進むごとに違う表情で楽しませてくれます。
大小さまざまな山を下り切り、振り返って富士山をもう一度。築山と松に守られ佇む姿に、しばし言葉を忘れて見入ります。
山を離れて再び池のほとりへ。冬枯れの芝と対照的に青い葉を茂らせる松。この眺めはこの時期ならではの美しさ。
穏やかなことこの上ない水面。その水の清さに、心なしか水鳥も気持ちよさそう。天気が良ければ、もっと綺麗なことでしょう。もしまた熊本に来ることができるなら、もう一度ここへ来てみたい。そう思わせる魅力があります。
ぐるりと一周し、たどった道を振り返ります。富士に箱根に大井川。参勤交代で長い道のりを行き来したお殿様は、どのような想いでこの庭園を造り、どのような気持ちでこれを眺めたのでしょうか。
広大な庭を一望できる場所に建つ古い建物。京都御所内にあった建物を移築したものだそう。
水前寺成趣園の始まりとされる御茶屋、酔月亭があったこの場所は、水前寺成趣園の中で一番眺めの良い場所とのこと。
今では観光客も有料ではありますがここでお茶を頂くことが出来るそうで、次回はぜひここで一服し、お殿様と同じ景色を眺めてみたいものです。
18歳の時に訪れて以来の水前寺公園。今見るその姿は、当時と同じでありながら、また新しい印象を授けてくれる。清らかな水と美しい庭園に心が洗われるような時間を過ごし、再び市街地へと戻ります。
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