感動大陸、東北の夏。~僕の灼熱七日間 7日目 ②~

小国川夏景色

抜けるような夏空に浮かぶ白い雲と、深い緑に包まれた山に抱かれさらさらと流れる小国川。山形の自然に抱かれ過ごした2泊3日も終わりを告げ、いよいよこの地を去ることに。

まだ時刻は10時だというのに、じりじりと照り付ける太陽。そんな陽射しに、喜至楼での濃厚な記憶が心の奥に焼き付けられます。

鳴子温泉郷・最上温泉郷湯めぐりチケット

最近覚えてしまった、連泊の喜び。チェックアウトを気にせず、日がな一日お湯と共にのんびりと過ごすその感覚は、一度味わってしまうと忘れられません。

その喜びに比例して増すのが、去り際の寂しさ。一期一会と思ってきた旅の宿ですが、連泊して味わうと何となく情が移ってしまいます。

そんな未練を東京まで引きずる訳にもいかないので、帰りに思う存分最後の東北を味わってやろうと用意したのが、『鳴子温泉郷・最上温泉郷湯めぐりチケット』。

1,300円のチケットには6枚のシールが付いており、最上・鳴子温泉郷の七湯で立ち寄り入浴を楽しむことができます。施設によって必要な枚数は異なりますが、いくつかのお湯を巡るならこちらの方がお得になります。

夏の陸羽東線瀬見温泉駅ローカル線の停車場の風情

無人駅に横たわる構内踏切。そこに立ち、延びるレールと木のマクラギを眺めれば、心は自ずと少年時代に逆戻り。気が付けば、耳の奥で井上陽水の歌が聞こえてくるよう。

のどかなホームに滑り込む陸羽東線キハ110

ローカル線の停留場を絵に描いたような長閑なホームに、ディーゼルカーが軽快なエンジン音を響かせて滑り込みます。

これに乗れば、山形県とはさようなら。一人旅としては初めて滞在した山形県。山形を未開拓ではもったいない。これはまた東北に通う用事が出来てしまった。そんな嬉しい悲鳴を胸に、2両編成の小さな列車に乗り込みます。

陸羽東線は日本の背骨を目指す

列車はディーゼル特有の唸りと振動を強め、日本の背骨奥羽山脈へと挑み始めます。線路に寄り添う小国川と仲良く並び、山の切れ目を縫って走ります。

陸羽東線の車窓を彩る山形夏の田んぼ

やがて川と別れ、気が付けば一面に広がる瑞々しい田んぼ。夏の陽を余すことなく吸収した稲は、眩いばかりの緑に輝いています。

夏空から溢れる光の洪水と、揺れる元気な稲たち。4年前にいとこと訪れた夏の東北の記憶が瞬間的に蘇ります。日本の夏、東北の夏、僕たちの夏。

日本の背骨分水嶺陸羽東線堺田駅

そして列車は山形と宮城の県境、堺田駅に到着。前回通った時も驚きましたが、山形側から来ると分水嶺とは思えないほど穏やかな道のり。ここを境に、右に降った雨は日本海へ、左に降った雨は太平洋へと流れてゆきます。

中山平温泉駅

宮城県へと入り一気に山深さが増す陸羽東線。深い緑の中を2両編成の列車は右へ左へと進み、山道を駆けおります。そして次の駅、中山平温泉駅に到着。ここで途中下車をし、湯めぐり1湯目を目指します。

鳴子温泉郷中山平温泉しんとろの湯

駅から歩いて約15分、公共の日帰り温泉施設『しんとろの湯』に到着。建物の奥のタンクからはもうもうと白い湯気が上がり、そこから木樋を通してお湯を自然冷却している様子が見えます。加水なしの掛け流し、入る前からそのお湯に期待が膨らみます。

鳴子温泉郷中山平温泉しんとろの湯浴室

この中山平温泉には、以前職場のみんなと泊まりにきたことがあります。その時に驚いたのは、滑って転びそうになるほどのぬるぬる感。うなぎ湯と名付けられたそのお湯は、まさにその通りの驚異のぬめりでした。

そしてこのしんとろの湯の温泉もまたぬるぬる。ph9.4のアルカリ性の温泉からは、硫黄の香りが漂います。このぬるぬる感、一度入ると癖になってしまいます。

肌にしっとりと馴染みまとわり付くお湯は、肌を通過して内側へと浸透するような、化粧水のような感覚。保温効果も高く、まさに美肌の湯。今回の旅では無色透明の優しい印象のお湯が続いたので、久々におお!と思う強い個性のお湯を楽しみます。

夏の緑が溢れる陸羽東線車内

じっくり温まり休憩室で汗が引くまでのんびり休憩。鳴子温泉以西は列車本数が少ないため、次の列車を逃さないよう少しだけ早めに駅へと向かいます。

中山平温泉から再び陸羽東線に乗り、隣駅の鳴子温泉を目指します。相変わらず線路は深い山に抱かれ、眼下には深く刻まれた鳴子峡が見え隠れ。そんな山深さが、車窓からも溢れてきます。

夏の鳴子温泉駅

たった1駅の列車旅。あっという間に鳴子温泉駅に到着。時の流れとは早いもので、この駅に初めて降り立ってから4年の月日が流れてしまいました。それでも、同じ場所にこうして立てば、その時の思い出が昨日のことのように蘇るから不思議なものです。

夏空の鳴子温泉街

前回訪れた時は、猛暑を超して酷暑と呼ぶのが相応しいほどの暑さにより、温泉街の散策はほとんどできなかったことが思い出されます。

そして今日も暑いは暑い。でもその時ほどではありません。温泉の名残なのかこの陽射しなのか、どちらつかずの汗を流しながら、昼の静かな温泉街を歩きます。

鳴子温泉ふじや食堂

お昼はどこで食べようかと見ながら温泉街を散策し、ここと決めた一軒にお邪魔することに。まいたけねぎ味噌おろしの文字に惹かれ、『ふじや食堂』に入ってみます。

鳴子温泉地発泡酒鳴子の風ゆきむすび使用

中山平の湯と炎天下に火照った体はもうカッラカラ。そこで注文したのは、珍しい地発泡酒。地ビールなら良く聞きますが、地発泡酒とはまた珍しい。

鳴子の風と名付けられた製品の中で、ゆきむすびという銘柄のお米を使ったものを注文。シャンパンタイプと書かれた通り、発泡酒と思えないほど爽やかな香りと甘み、酸味が感じられます。発泡酒のイメージからかけ離れた美味しさが、喉からお腹へと流れてゆくのが心地いい。

鳴子温泉ふじや食堂まいたけねぎ味噌おろしそば

爽快な刺激に潤ったところで、注文したおそば、その名もまいたけねぎ味噌おろしそばが運ばれてきました。想像以上のボリューム、そして名の通り色々なものが沢山載っている様子に目が奪われます。

おそばの上には、まいたけや海苔などの天ぷら、きのこや山菜、鳴子の温泉卵、そしてたっぷりのねぎ味噌とおろし。これを思うが儘に組み合わせつつ、おそばと一緒に食べていきます。

本当のところを言うと、運ばれて来たときは「あぁ、観光地でありがちな頑張り過ぎた感じ」という印象でした。申し訳ない。

いざ食べてみると、おそばはしっかりと冷やされこしがあり、天ぷらはあったかく、冷たいものは冷たくと、それぞれメリハリがあります。具材ひとつひとつが蕎麦との相性も良く、そして意外だったのは、最後の方でみんな混ざった時の思いがけない一体感。

味噌のコクとおろしのさっぱり感がまとめているのでしょうか、これだけ賑やかな内容なのに、味の印象が散らばっていません。きっと試行錯誤してこのメンバーになったのでしょう。ボリューム満点、美味しいおそばをお腹一杯楽しみました。

喜至楼で手に入れた湯めぐりチケット。まだ1か所しか使っていません。残りをどこで使おうかと考えつつ、次のお風呂へと向かいます。

感動大陸、東北の夏。~僕の灼熱七日間~

夏の日差しを浴び元気に育つ稲の穂
2014.7-8 宮城/岩手/青森/山形

旅行記へ