北東北 夏巡り ~漲る灯り、地の滾り。 4日目 ①~

イトーヨーカドー内弘前バスターミナルに佇むそば店

冷めやらぬ祭りの余韻・・・。一年間目指し続けてきたねぷたを見終え、もう僕の夏は去ってしまったも同然。

毎年のことながら、やっぱり弘前からの去り際は切なすぎる。よし、また来よう。そう強く胸に刻み、旅立ちの地であるバスターミナルへと向かいます。

でもそんな感傷にいつまでも浸っている場合ではない。この旅はこれからが後半戦。目くるめく大地の恵みとの出会いに思いを馳せ、渋い佇まいの『バスターミナルそば店』で朝食をとります。

イトーヨーカドー内弘前バスターミナルに佇むバスターミナルそば店のかけそば
ターミナルに来る度に気になっていた、この何とも言えぬ情緒を漂わせるお店。そばやうどん、カレーライスやおにぎりなどの軽食の他に、これから始まる長いバス旅に備える品々が昭和の雰囲気を纏いつつたくさん陳列されています。

そんな旅情たっぷりの空間の中食べる、シンプルなかけそば。麺は津軽のそばというよりオーソドックスな立ち食いそばのもの。つゆも見た目通りのどストレートなしょう油感があり、構内に響くエンジン音を聞きつつ啜れば気分は一気に演歌の世界。

盛岡駅西口で披露されるさんさ踊り
すっかり旅立ちの風情に染まったところで、乗車する『弘南バス』のヨーデル号盛岡行きが入線。後ろ髪をひかれつつバスに乗り込み、愛する弘前の地を離れます。

東北道を走ること2時間ちょっと、青森県を離れ岩手の県都、盛岡に到着。駅前では開催中のお祭り、盛岡さんさ踊りが披露されています。

ギネスにも認定されたという、世界最大の太鼓のお祭りであるさんさ踊り。これまで何度か駅前での演舞は見たことがありますが、じっくり見るのはこれが初めて。

大勢の叩き手が息を合わせて奏でる軽快な太鼓のリズム、控えめでいながら耳に残る「さっこら~ちょいわやっせぇ~」という優しい掛け声、柔らかな手の仕草が印象的な品を感じさせる優美な踊り。

もうこれは祭りの本番を見てみなければなるまい。来夏はねぷたとさんさのセットかなぁ。そんな妄想を抱きつつ、心地よい踊りを飽きることなく眺めます。

盛岡駅前に位置する盛楼閣
全身に南部の風を吹き込んだところで、駅の反対側へと渡り待望のあの麺とのご対面を。駅前に位置する『盛楼閣』にお邪魔します。

盛岡駅前盛楼閣の盛岡冷麺
さすがはお祭り期間中の休日、15分程待ち店内へ。冷たいビール片手に過ごしていると、お待ちかねの盛岡冷麺が運ばれてきます。

久々の再会に逸る気持ちを抑えつつ、まずはスープをひと口。すっきりとしていながら広がる牛の旨味が堪らない。そこへキムチが旨味と程よい酸味を加え、もう永遠に飲んでいたいと思えるほど。

麺は見ての通りの太麺で、しっかりとした弾力と歯ごたえ、瑞々しい喉越しが魅力。東京で盛岡冷麺を食べたときは韓国の冷麺よりも柔らかく、こう言っては失礼ですが何となく出来損ないというイメージを持っていました。

どうしてあのような変な伝わり方をしたのでしょう。本場盛岡で食べる冷麺は、どれも強いコシを持つとっても美味しいもの。ここへ来て食べたことない人は、きっと盛岡冷麺のことを誤解しているはず。盛岡冷麺は絶対に盛岡で食べるべき!そう声を大にして言いたい。

八幡平安比宿泊者限定の送迎バス車窓から眺める曇天の岩手山
冷たい麺に思わず熱くなってしまいましたが、期待を裏切らない安定の旨さにもう大満足。程よい辛味と旨味の余韻に浸りつつ、盛岡駅西口から八幡平安比地区宿泊者限定の送迎バスに乗車します。

藤七温泉彩雲荘送迎車から見える松尾鉱山の廃墟群
車窓に岩手山を眺めつつ揺られること1時間、さくら公園で宿の送迎車に乗り換えます。ここからは初めて通るルート。ぐんぐん上がる標高にどんな景色が広がるかと見ていると、遠くに見える灰色の街。

あ!松尾鉱山だ!!これまで何度もモニター上で見てきた、天空都市の忘れ形見。目の前に広がる巨大な廃墟群は、この地にこんな大きな街があったということを辛うじて今へと伝え続けています。

立ちのぼる湯けむりが見えれば藤七温泉はもうすぐ
思いがけないあこがれの存在との出会いに、もう興奮は最高潮。軍艦島、池島、夕張に松尾・・・。もう何度ネットで検索したことか。実際に訪れたことはありませんが、僕はこんな残像たちが好きなのです。

雲に近い場所に残る夢の跡。記憶と共に色さえ失われてしまったような姿に、往時の活気に思いを馳せる。そんな感傷に浸っていると、いつしか車窓には立ちのぼる湯けむりが。

もうまもなく、6年ぶりとなるあの極楽との再会の瞬間が。車内に漂う硫黄の香りに、到着が今か今かと待たれるのでした。