北東北 夏巡り ~漲る灯り、地の滾り。 6日目~

玉川温泉で迎える雨の朝

効能あらたかな玉川温泉で迎える朝。昨晩から降り始めた雨は、山間の宿をしとしとと静かに包むかのように降り続いています。

今回予約したのは、夕食付プラン。朝ごはんはついていないため、前日に売店で用意したパックご飯とカップのお味噌汁、そして納豆で軽い朝食をとることに。こんな自由があるのも、湯治部ならでは。

曇天の玉川温泉湯上りに午前のビールを
特にすることも決めず、ひたすら気の向くままに湯屋へと向かう湯治場での滞在。この時の自分の状況とぴったり合ったのか、すでに心身への変化の予兆が感じられるかのような不思議な感覚を味わいます。

強烈なお湯は、てきめんな影響を与えるのかもしれない。そんなの気の持ちようだろとも思われそうですが、実際自分がそう感じ、そして明らかな変化を持ち帰ったのだから仕方がない。これほどまでにビタっと合致したのは、去年訪れた東鳴子温泉の高友旅館以来かも。

短い湯浴みを数回楽しみ、体も心も温まったところで午前のビールを。あぁ、たまらない。贅沢を楽しむような旅行も楽しいことには楽しいのですが、ここ数年の自分にとって、こんなシンプルにお湯を楽しむ滞在が一番の幸せ。これだ!と思えるような温泉は、自分の足で稼がなければ出会えないのです。

玉川温泉昼食日替わりの稲庭うどんと手巻き寿司のセット
ここのお湯は胃腸の働きを良くしてくれるのだろうか、お昼時にはもうお腹はペコペコに。早速食堂へと向かいます。

麺類やカレー、秋田の郷土色を取り込んだメニューがあるなかで、今回注文したのは日替わりメニューの稲庭うどんと手巻き寿司のセット。うどんはつるりとした細麺ののど越しが心地よく、手巻き寿司にはえびといかが入りシンプルでほっとするような美味しさです。

玉川温泉午後のおやつにいぶりチップスと玉川温泉くるみもち
部屋へと戻る前に売店へと寄り、今宵のお酒とおやつを仕入れます。自炊用の生鮮食品はありませんが、長期滞在向けの宿だけあり売店の品揃えは豊富。お酒やお土産のほか、インスタント食品や日用品まで並びます。

そんな中で選んだおやつがこちら。玉川温泉くるみもちは、信玄餅のような食感のおもちにたっぷりのくるみが練りこまれたもの。甘さ控えめで、くるみときなこの香ばしさがあとをひきます。

そしてお隣のいぶりチップスがもう絶品。チーズのフレーバーが付いたものもありましたが、今回はプレーンを購入。もうこれ、本当にいぶりがっこそのもの。余計な手を加えず、ただスライスしたいぶりがっこを乾燥させました!という味わい。

パリッと噛み、しばらくそのままもぐもぐしていると口中に広がるあのスモーキーさ。うん、堪らん!!昨晩の残りの昼酒が進んでしまいます。そしてこのチップス、翌朝のご飯にも活躍。チンしたパックご飯に埋めてしばらく置けば、ふやけていぶりがっことしてご飯のおかずにもなってしまいます。

玉川温泉だらりと過ごす甘美な怠惰
これまで何度も秋田を訪れましたが、いぶりチップスを見たのは初めて。この美味しさと手軽さを知ってしまうと、次回からは買わずにはいられない。本物のいぶりがっこよりも手軽に食べられ、保存もきくという便利さ。もちろんこの時も、お土産として買って帰りました。

昼酒を少々愉しみ、お湯に力を与えられ。ただひたすらにのんべんだらりと過ごす秘湯での午後は、言うなれば甘美な怠惰。この幸せは、連泊した者のみが許される魅惑の時間。一度知ってしまうと、もう後戻りはできません。

玉川温泉バイキング形式の夕食
夕食の時間になると、再びお腹はペコペコに。もうここの温泉、色々効きすぎ。この短時間での変化は、自分の体内で何が起こっているのかというちょっとした怖さすら覚えるほど。

早速食堂へと向かい、好みの品を取ってゆきます。昨日は地酒を頼みましたが、今日は夕飯時はノンアルコール。好みのおかずでしっかりご飯を食べることに。

さすがは長期滞在者メインの宿。並ぶ料理も昨日とは変わっています。この日は野菜や山菜中心の和食のほか、麻婆豆腐もスタンバイ。和洋中と気分により選べ、これなら何泊しても飽きることはありません。

玉川温泉夜のお供にかづの銘酒特別純米酒たまがわ
満腹のお腹を落ち着け、再び温泉へ。塩酸に浸かるというあまりにも日常とかけ離れた行為と、そのちょっとした背徳感にも似た危ない浴感。この頃になると明らかに表皮が薄くなった感じがし、源泉100%の浴槽はほんの少しだけ楽しむ程度に抑えます。

肌へ伝わる強烈な浴感ですが、湯上りはさっぱり、爽快、ぽっかぽか。体の芯に残る玉川の湯の力の余韻を感じていると、今日も中庭から聞こえる盆踊り。その音色をつまみに飲むお酒は、鹿角市はかづの銘酒が造る特別純米酒、たまがわ。千歳盛という銘柄を造る蔵の特別ラベルなのでしょうか。

賑やかな音を耳に感じつつ飲む地酒。クセのないすっきりとした飲み口は、体の中へとすっと入っていくよう。お湯にお酒に、そしてゆるやかな時間に溶ける夜。久々に感じるある種の実感の芽生えを胸に、夜は穏やかに更けてゆくのでした。

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