連泊のススメ ~釜石線トコトコ小旅行~

花巻駅釜石線ホームの腕木式信号機オブジェ

8泊9日の長期旅行も間もなく終わり。帰りの新幹線までの間、最後の最後まで岩手を楽しんでやろうと、今まで乗ったことのない釜石線に乗ってみることに。別に、今回の旅行の鉄分不足を補う訳ではありませんからね!!

この釜石線は、岩手軽便鉄道を前身に持つローカル線。宮沢賢治の銀河鉄道の夜のモデルとなったのが岩手軽便鉄道と言われ、それにちなんで「銀河ドリームライン」の愛称が与えられています。各駅には腕木式信号機を模した駅名板が置かれ、エスペラント語で駅の別称が書かれています。

釜石線快速はまゆりキハ100

釜石線はこれぞローカル線!と言うに相応しい本数の少なさ。(失礼!)時刻表と相談してみると、どうやら快速で行って帰ってくれば新幹線の時間までには戻って来られるようなので、ちょっと早起きして快速はまゆりに乗車。見慣れたアボカドグリーンのキハがガラガラと音を立てて入線してきました。

リクライニングシートの並ぶ釜石線快速はまゆりキハ100

快速はまゆりは3両編成でうち1両が指定席。自由席は普通のボックスシートだとばかり思っていましたが、この日は運よくリクライニングシートの自由席車が連結されていました。これなら釜石までの約2時間、快適に過ごすことができます。

曇天の釜石線車窓

どんよりとした曇り空の下に広がる秋模様。郷愁を誘う車窓の眺めは、これはこれで味わい深いというもの。物憂げな表情を見せる岩手の農村を、列車はガラガラとのんびり駈けてゆきます。

釜石線車窓から眺める曇り空の遠野

この日は生憎の雨予報。本当ならば遠野で下車して観光する予定でしたが、荷物を持っての雨の観光では辛いため、急遽釜石線の車窓を楽しむ小旅行に変更しました。

釜石線より眺める霞のかかる遠野

本当は訪れるはずであった遠野の街。周囲を山に囲まれた遠野の街には靄がかかり、幻想的な雰囲気に包まれていました。次回はぜひとも来なければ。また宿題を残してきてしまいました。

車窓から眺める陸中大橋駅釜石鉱山ホッパー跡

列車は山の懐をひたすら進み、陸中大橋駅に到着。窓の外には、まるで遺跡のような姿を見せる、釜石鉱山のホッパー跡が。なんとなく切なさを覚えさせる産業遺産。このようなものを見るのも僕は好き。

釜石線険しい仙人峠

列車はいよいよ、釜石線で一番の難所である仙人峠へと挑みます。前日まで遠野に行くつもりだったため、釜石線に関する知識が全くと言っていいほど無かった僕。

ここまでの間にもいくつも山を越え、釜石線がこれほどまで山深い路線だとは思ってもみませんでした。乗って初めて分かること。これだから乗り鉄は止められない。

釜石駅

花巻からディーゼルカーに揺られること約2時間、釜石駅に到着。帰りの列車の時間まで、のんびり過ごすこととします。

釜石駅前の大きな新日鉄の工場

釜石と言えば、鉄の町。駅前には新日鉄の大きな工場が広がっています。

釜石の工場と引込線

駅前から市街地の方へと歩きます。途中にはもくもくと煙を吐く工場の煙突の姿が。貨物線のトラス橋との競演に、思わずぐっと来てしまいます。工場の無骨な姿、かっこいいなぁ。

駅前市場サンフィッシュ釜石

この先もしばらく歩いてみましたが、街並みはどんどんと被災地の姿に変化。がれきが撤去されただけの、被災した建物がいくつも並ぶその眺めに、しばし言葉を失います。

現地で実際にその様子を見て知ることも大切とは思いますが、一観光客が現地の方々の生活圏に安易に立ち入ってはいけない、僕はそう思いすぐ引き返しました。もし自分がその立場だったら、やっぱり嫌だと思うから。

駅前エリアに戻り、昼食をとることに。駅前には『サン・フィッシュ釜石』という市場があり、そこを覗いてみます。

釜石まんぷく食堂

1階が三陸の山海の幸が並ぶ市場が広がり、2階にお食事処がいくつかあります。その中で、今回はまんぷく食堂(現在は海鮮まえ浜として営業中)にお邪魔することに。

釜石まんぷく食堂三陸釜石お宝丼

今回注文したのは三陸釜石お宝丼、1500円也。ほたて、いくら、うにといった三陸の海の幸が載った丼の他に、かつお、たこ、いかのお刺身、厚焼き玉子も付いてきます。

シープラザ釜石

三陸の恵みに舌鼓を打ち、お隣のシープラザ釜石でお土産探し。三陸らしい海藻系から地酒、岩手内陸部の名産品まで色々あり、どれを買おうか悩んでしまいます。もう後は列車に乗って帰るだけ。ここでお土産をたっぷり買い込みました。

快速はまゆりで花巻へ

帰りも快速はまゆりに乗車、一路花巻を目指します。

霞が浮く秋の仙人峠

先ほどまで降っていた雨も上がり、空が明るくなってきました。延々と山の続く仙人峠も、明るい空の下では紅葉の色が復活し、行きとはまた違った表情を見せてくれます。

釜石線車窓輝く川

雲の切れ間から差し込む陽射しを映し、きらきらと流れる川。鉄橋の小気味良い音響を響かせ、列車はのんびり渡ります。

釜石線刈り終えた田んぼ秋の車窓

遠野の街を過ぎ、列車は再び山へと挑み花巻を目指します。刈り終えた田んぼと、列車にあおられ揺れるすすきの群れ。この旅最後の秋景色を、いつまでも飽きることなく眺めます。

秋色に彩られる釜石線の車窓

空はすでに夕暮れの匂いを感じさせます。この旅で幾度となく眺めた紅葉の山々も、本当にこれが最後。どれだけ長くてもあっという間に過ぎてしまう。何故旅はこれほどまでに儚いものなのでしょうか。

快速はまゆりまもなく花巻に到着

列車は峠を越え、夕空に包まれる花巻の街に到着。

7日間過ごした花巻ともしばしの別れ。ありがとう、また来ます。そう心の中で誓い、快速はまゆりを下車するのでした。