連泊のススメ ~夏油との別れ、朝霧の北上へ~

秋色の夏油温泉元湯夏油

2度目の訪問にして、すっかり虜となってしまった夏油温泉。

湯のぬくもりも、深い秋の肌寒さも、目の覚めるような紅葉も。誰にも邪魔されることなく、朝な夕なにその魅力を浴衣一枚で感じることのできる幸せ。連泊して、一層この地の魅力に惹き込まれました。

そんな魅惑の地、夏油温泉との別れのとき。滞在中一番の青空で、僕を見送ってくれました。ありがとう、夏油温泉。前回も約束して叶ったように、今回も約束を置いて帰ろう。また来ます、絶対に。

岩手夏油秋の山並み

帰りは宿の送迎で北上駅まで送ってもらうことに。片道1000円以上かかる道のりを送迎してくれるとは、何とも嬉しいところ。

来るときには午後の薄曇りの中眺めた山々の紅葉も、帰りは快晴の下一望することができました。もう間もなく、山に薄ら浮いているゲレンデが白銀の帯となって姿を現し、その頃には夏油の湯は冬に閉ざされることでしょう。

朝霧に包まれ幻想的な北上の田園

夏油を出てからはしばらく気持ちの良い快晴でしたが、北上の平野部へ降りてくると、一面真っ白な霧に包まれています。

なぜか僕の中での岩手の象徴となっている屋敷林。それが乳白の中ぼんやりと浮かぶ姿は、まさに幻想的。まるで昔話の世界にでも迷い込んだかのよう。

朝もやのかかる北上川

青空にきらめく紅葉に、幻想的な朝霧に浮かぶ街並み。そんな変化に富んだ車窓を眺めること45分、車は北上駅に到着。宿の方にお礼を告げ、朝の空気に包まれた北上の街へと歩き出します。

駅からまっすぐ北上川を目指し、堤防の上をのんびり散歩。大河に架かる珊瑚橋からは、鏡のように穏やかな川面を覆う朝霧が晴れゆくさまを見て取ることができました。自然が造る一瞬の光景は、一言で表すならば水墨画のよう。

秋の北上河畔桜並木

北上川を渡り切り、河川敷にのびる桜並木の下を歩きます。この場所は、半年前に訪れた場所。そのときはつぼみもまだ固い桜たちでしたが、今は秋の装いへと変化する真っ最中。薄らと色づく木や、まだまだ緑が元気な木。同じ気でも気が早い葉っぱはもう赤く色づいているものも。

北上川河畔を彩る秋の風情

河原に満ちた朝の清涼な空気にそよぐ穂。細かい毛にきらきらと光を反射させ、気持ちよさそうに揺れています。

朝露に光る雑草

先ほどまで一帯を覆っていた朝霧は、足元の草に宿る露へと姿を変えていました。朝日を浴びて輝く露に濡れた雑草。普段の生活では、こんな光景を美しいと思う心さえ忘れていることを思い知らされます。

桜の葉のレースを透かす秋の日

草を輝かせる光を辿れば、桜の葉の織り成すレース越しに、秋の高い空から降り注ぐ柔らかな朝日が。陽の光に透かして見る桜の葉は薄らと黄色く色付き、秋の気配を一層色濃いものとします。

秋色の北上川河原

辺りを幻想的に包み込んでいた朝霧も、今は名残を感じさせるのみ。刻一刻と姿を変えゆく、朝の北上川。遠く離れたこの場所で肌を通して感じるこの瞬間は、忘れえぬ朝の風景となり僕の心に焼き付きます。

秋の北上儚く消える朝霧

まもなく、残りの朝霧は儚く消えてゆきました。その姿は、何かを包んで昇華させたかのような美しさ。青空と朝日に包まれた景色には、今まで見ていたものが夢であったかのような不思議な余韻が残っていました。