初めて弘前ねぷたに出会ってから、もう4年。ホテルが取れない取れないと言いつつも、これまで毎年訪れることができています。そして今年もその時が!!何と幸運なことでしょうか。僕の夏はねぷたを見ないと始まりません。
今回は、最終目的をねぷたに見据え、進む旅。そんな旅路の始まりは、いつもの東京駅、東北新幹線ホームから。乗る度に感動を与えてくれるE5系が、僕を東北の夏へと誘います。
さぁ、2015年、僕の夏休みの始まりだ!祝杯をあげるために選んだのは、僕のお気に入りであるサッポロクラシック。来年には、この車両が北の大地へと乗り入れる。もうじき繋がる北海道へと思いを馳せつつ、冷えた缶をプシュッと開けます。
そして迎える待望の瞬間、東京脱出。この日の東京は雨混じりの生憎の天気でしたが、そんなことは気にしない。向かう東北は晴れ予報。鈍色の荒川ですら、僕の目には輝いて映ります。
無事に東京を脱出し、明けで空いたお腹を満たすことに。今回選んだのは、JRの子会社であるNREが作る、特製元気みやぎ弁当。お気に入りの愛宕の松ワンカップとお揃いのむすび丸が目立ちます。むすび丸、本当にかわいいなぁ。
蓋を開けると、肉、魚、野菜と、宮城の幸がぎっしりと詰まっています。
上は肉と魚。仙台牛と宮城黒毛和牛のすき焼き風は濃すぎず丁度良い味付け。軟骨入り鶏つくねは鳥が好物だったという伊達政宗公に由来しているそう。コリコリとした食感と、焼き鳥屋に負けない味の良さ。愛宕の松が進みます。
隣はお魚。鮭の仙台味噌漬け焼は程よくギュッと締まった食感と旨味が美味。そしてこのお弁当で一番のお気に入りが、気仙沼の金のさんま。甘辛く煮られたさんまは脂の載り方も良く、駅弁でこのクオリティーが味わえるのかと驚くほど。骨まで軟らかく、ほろほろと旨味の塊が崩れてゆくのが堪りません。
そして下は、宮城の山の幸。凍み豆腐やこごみの入った炊き合わせや、宮城産のほうれん草塩炒めが名脇役を務めます。それぞれ素材の味を壊さない濃さの味付けで、これまた日本酒にぴったり。NREのお弁当、前よりもっと美味しくなった気がします。
笹かまぼこや仙台牛たん焼きなども合わせ、おかずでひとり宴会を大満喫。やっぱりこの手のお弁当はやめられません。そして〆はもちろん、美味しいご飯。冷めているのに艶があるこのお米は、大崎産のひとめぼれ。もっちりと甘く、駅弁というのに白米だけで十分美味しいご飯。小さい頃からは考えられません。
美味しいご飯をお漬物と一緒に平らげ、デザートは名物ずんだ餅。この一折で宮城を丸ごと堪能しました。いつも美味しい駅弁に出会える幸せ。これこそが列車旅の醍醐味。
去年も、同じ時期に同じ目的で辿った、同じ道。前回は宮城岩手と経由して弘前入りしましたが、今回は日本の背骨を辿って目指す弘前への道のり。
帰りに立ち寄るだけの宮城を思いつつ宮城の駅弁に舌鼓を打っていると、いつしか車窓は夏色に支配されています。これだよ、これ!これこそが、僕の夏休み。
夏の眩い日差しを切り裂くように、緑の中を駆け抜けるやまびこ号。僕を乗せた新幹線は定刻通りに、古川駅に到着。
古川駅で陸羽東線に乗り換え、一路山形県を目指します。夏の穀倉地帯をのんびりと走る、2両編成のローカル線。ディーゼル特有の小気味よい唸りと振動が、僕の心を昂らせます。
列車はどんどん山へと分け入り、もう間もなく鳴子温泉へ。その手前、鳴子御殿湯へと進入する列車は、見覚えのある川を渡ります。
一年前、『この川で遊ぶ中学生を見て、終わりを告げた僕の夏』。そんな景色が、この旅では僕の夏の幕を開ける。もう1年も経ったのか。何となく感慨深いものがあります。
そしてこの列車の終点、鳴子温泉駅に到着。去年食べたお蕎麦の美味しさが思い出されます。でも今回は乗り換えるのみ。今度は泊まりでじっくりと名湯を味わいたいなぁ。
今回も泊まることの叶わなかった鳴子のお湯を、乗り換え時間を利用して足湯で味わうことに。
駅に併設された足湯には、白く濁った鳴子のお湯がたっぷりと流されています。足を入れると、温度は丁度良いものの、良く温まる鳴子のお湯らしく、全身から汗がどっと出てきます。夏の暑さの中味わうこの暑さもまた一興。流れる汗を楽しみます。
心地よい火照りに見送られ、再び陸羽東線に乗車しさらに西を目指します。仲良く並ぶ、キハ110。僕の好きな車両の纏う黄緑色は、東北の自然と良く似合う。
そして通る度に写してしまう、堺田駅。そう言えば、陸羽東線で宮城から山形入りするのはこれが初めて。
山形からの道のりは意外にあっさりしたもので、ここが日本の背骨、分水嶺であることが不思議である程。でも宮城から越えてみると、やはりここは分水嶺なのだと納得します。それほど列車が越える鳴子峡が険しいということ。同じ路線でも方向が違えば印象が違う。だから鉄道は面白い。
僕を乗せて分水嶺を越えた、2両編成のディーゼルカー。緩やかな下りに身を任せ、僕を今宵の宿の最寄へとのんびり走ります。
さあこれから僕の本当の夏が始まる。その期待に胸躍らせ。流れる緑に染まる車窓を、眼を輝かせ飽くことなく眺めるのでした。
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