湯ったり下野、初夏の旅。~2日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

湯ったり下野、初夏の旅。~2日目 ②~

宇都宮駅前餃子像 旅グルメ

千本松牧場で動物や緑とふれあい、再び『JRバス関東』の那須塩原駅行きに乗車。西那須野駅でバスを降り、東北本線に乗り換えて宇都宮駅に到着。前回こうして餃子像を見てからもう4ヶ月。季節も真冬から初夏へと変化し、いつものことながら時間の流れの早さには驚かされます。

バスは1時間に1本程度。そこでバスターミナルでしばらく待つことに。すると空が見る間に暗くなり、ついに結構な勢いの雷雨が。幸い屋根があったので濡れずに済みましたが、北関東の雷様を見るのは多分これが初めて。上から下へではなく、空へと斜めに駆ける稲妻を久しぶりに目の当たりにしました。音の迫力もすごく、さすがは雷の本場、北関東(失礼!)と感心してしまいました。

宇都宮大谷石採掘跡
宇都宮駅より、『関東自動車』の大谷経由立岩行きバスに乗車。30分程揺られて緑や勾配が目立ち始めた頃、「資料館入口」バス停に到着。先ほどまで降っていた雨もほとんど止んでひと安心。

バス停を降りると、すぐそこに大谷資料館の大きな駐車場が広がります。周囲には見覚えのある質感の岩でできた山がごろごろと並び、それらの一部が人工的かつ几帳面に切り取られている姿が印象的。

宇都宮大谷資料館
バス停から歩くこと約5分、この旅最後の目的地である『大谷資料館』に到着。テレビやネットの画面からですら伝わってくる世界感に、今度宇都宮へ来たら絶対に!と待ち望んでいた場所。

宇都宮大谷資料館石切り場へと降りる石段
受付で入場券を買い、早速場内へ。ここは昭和61年まで現役の採掘場として使われていた場所。地下へと続く石段からすでにその当時の雰囲気が伝わってくるかのような、独特な空気に包まれています。

宇都宮大谷資料館石段を下りきると広がる展望
曲がりくねった石段を下ると、そこには地下とは思えない展望が。大谷資料館を訪れて初めてみる景色がこれ。このあとも色々と写真を載せますが、一番印象に残っているのがやはりこの眺め。やっぱり来てよかった。そう直感し即座に鳥肌が立つような、圧倒的な迫力。

宇都宮大谷資料館巨大な地下神殿のような採掘場跡
あまりの力強さに言葉も忘れて見入ってしまいましたが、先ほどに写っている空間はごく一部。大正時代から70年近くの間採掘が続けられ、結果的には野球場がまるごとひとつ入ってしまうほどの巨大空間になったそう。

宇都宮大谷資料館地下空間に残る巨大な石柱
そんな広大な空間を支える石壁。表面には採掘で刻まれた無数の傷が筋のように残り、採掘場の歴史を物語る年輪であるかのよう。採掘を免れた大谷石は、こうして今でも地下神殿の柱として見る者を崩落から守り続けています。

それにしても、この柱は造ろうとして造られたものではないはず。この部分をこれくらい残せば大丈夫だろう、そんな経験から生まれたものなのかもしれません。それでも実際幾度もの地震にもビクともせず耐えてきている。大谷石やその岩石でできた地盤の強さを物語っています。

宇都宮大谷資料館假屋崎省吾の巨大作品
この空間はその独特な世界感から、ロケや演劇、美術館やコンサートなどさまざまな用途で利用されているそう。華道家の巨大な作品が飾ってあったり、ロケが行われた映画やドラマの写真も現場に展示されています。

宇都宮大谷資料館天窓から注ぐ淡い光
荘厳、そのひと言につきる。角を曲がるごとに新しい表情を見せる石切り場の姿に圧倒されっぱなし。するとそこには不思議な一角が。天井には小さい窓が切られ、そこから雨上がりの弱々しい光と湿り気を含んだぬるい空気が漏れてきます。その一筋の帯が、この現実離れした空間と外界を繋ぐよう。

宇都宮大谷資料館巨大な地下ホール
冷たい岩石に覆われた地下神殿。平均気温は8℃程と肌寒く、だからこそ先ほどの外界の空気が心地よかったのかもしれない。再び歩みを進めれば、体を包む空気はすぐに冷たいものへと変化。じっくりと時間をかけて見学する場合は、羽織るものが必要かもしれません。

宇都宮大谷資料館岩壁に残る堀跡
この採掘場は大正から昭和までの長い期間採掘がおこなわれてきました。そのため岩壁には採掘に使った道具や掘り方の違いにより、さまざまな跡が刻まれています。

宇都宮大谷資料館大谷石が織り成す独特な雰囲気
石塀といえば、の大谷石。東京と神奈川にしか住んだことのない僕にとって、大谷石は街の景色にあって当たり前の馴染みのもの。コンクリートばかりが目につく東京。冷たい街の一角にちょっとした温もりを添えてくれる、そんな独特のごつくて柔らかい質感が好き。

宇都宮大谷資料館ツルハシの跡を照らす白熱灯
ツルハシの跡を照らすレトロな白熱灯。資料館になってから付けられたものだろうと思っていましたが、よくよく見れば台座や灯具など、現役当時からのものと思われる風格が。

手掘りの時代は、石切り職人ひとりで1日あたり12本ほどの石材を切り出したそう。その石材1本を切るためにツルハシを振る回数は3600回にもおよぶとのこと。つまりは職人さんは、毎日40000回以上もツルハシを振るって岩と戦っていたのです。この電灯は、もしかしたらそんな光景も目にしていたのかもしれません。

宇都宮大谷資料館静まり返った真っ暗な地底湖
さらに奥へと進むと、途中には真っ暗な中水を湛えた地底湖の姿も。このあたりは人通りも少なく奥まっているため、この深い闇を目の当たりにすると心細さが芽生えてきます。

宇都宮大谷資料館外からもれてくる緑の光
底の見えない、真っ黒な水。そんな軽い恐怖を感じていると、再び外からの光が射し込む場所に。人間にとって太陽とはどれだけ大切なものか。こうした非日常で自然光から隔離されみて、改めて実感するそのありがたさ。

宇都宮大谷資料館に残された切り出された石材
切り出したその場で、規格に合うよう加工されている大谷石。見学コースの終盤にはきれいに切りそろえられた石材と、その作業に使った機械が展示されています。

宇都宮大谷資料館石垣の強度試験場
こちらには、石材組合が強度を実験するために作った石垣が。こうして塀や建物だけでなく、石垣や擁壁にと大谷石はさまざまな形で活躍してきました。

宇都宮大谷資料館塩分が結晶化する石の華
巨大な地下空間とさまざまな石の表情を存分に愉しみ、石段を登り外界へと戻ります。その途中には、石の華と呼ばれる白い結晶が。大谷石に含まれる塩分が、寒い時期にだけこうして岩肌に現れるのだそう。

宇都宮大谷資料館前に広がる採掘された山
気温10℃以下の地下空間に滞在した45分間。外へと出れば、心地のよいぬるさが全身を包みます。

テレビやネットの画面から伝わる雰囲気を味わうべく訪れた大谷資料館。実際はそれを遥かに超えるスケールと圧倒されるような世界感。それはまるで地下神殿や遺跡にでも迷い込んだかのような荘厳さ。

それもそのはず、これは人が造り上げた立派な遺跡なのですから。造ろうとしてできたものではない、人々が昔から生きるため、暮らすために造り上げてきた産物。ツルハシの残した跡には、人々のそんな想いが刻まれているようでした。

大谷平和観音
いやぁ、本当に来てよかった。資料館の余韻を味わいつつ、雨上がりの大谷の街を歩きます。近くには磨崖仏で有名な大谷寺もありますが、今回は時間の都合で次の機会に。

そのすぐ隣には、戦後間もない頃に作り始められた大谷平和観音が。こちらも採石場の跡で、独特な形に切り取られた岩山の中に観音様が佇みます。

関東自動車宇都宮駅行き
帰りは大谷観音前バス停より『関東自動車』の宇都宮駅行きに乗車。後はもう駅で宇都宮の味を楽しみ帰るだけ。車窓を眺めつつ終点までのんびり過ごします。

宇都宮みんみんステーションバル
30分程バスに揺られ、宇都宮駅に到着。ここで最後の最後に宇都宮グルメを。前回も餃子だったので違うものを、とも思いましたが、やっぱり餃子に惹かれてしまいました。

今回は、駅ビルに直結するホテルの3階にある『宇都宮みんみんステーションバル』にお邪魔します。

宇都宮みんみんステーションバル焼き餃子とかんぴょうの酢の物
まずは定番の焼き餃子と生ビール、そしてかんぴょうの酢の物を。焼き餃子はぱりっと香ばしく、中のあんは野菜の甘味や旨味、食感が活きた穏やかな味。やっぱり宇都宮餃子は、この野菜感が堪らない。

餃子だけではなく栃木らしいものを、と注文したかんぴょうの酢の物。肉厚で柔らかいかんぴょうに、酸っぱすぎず甘すぎず味付けがぴったり。

宇都宮みんみんステーションバルおつまみ三種盛り
最初のビールを飲み干し、続いて栃木の地酒を。こちらはビール以外にもいろいろなお酒と餃子を一緒に楽しめるようにと、地酒やワインなどアルコールの種類が豊富。餃子以外のおつまみも充実しているので、のんべえにはありがたい餃子屋さん。

でも正直、餃子に日本酒を合わせたことがなかったので、あまりイメージが浮かびませんでした。そんなことを考えつつ、焼き餃子を頬張り地酒をひと口。するとさすがは宇都宮餃子、野菜メインの優しい味わいだからこそ、日本酒にもぴったり合ってくれるのです。餃子と地酒って、合うんだなぁ。

そこで今日はもう日本酒で行こうと、おつまみ三種盛りを追加で注文。かんぴょうの酢の物がかぶってしまいましたが、残りの二種がこれまた旨い。

角煮はとろっとろに煮込まれ、濃すぎない味付けが丁度いい。もやしのナムル肉味噌のせは、何といってもこの肉味噌が美味しい。これだけでも地酒がぐいぐい進みます。

宇都宮みんみんステーションバル〆に水餃子
餃子や美味しいつまみと共に飲む栃木の酒。2杯目となったところで〆にと水餃子を注文。つるつる、もちっと茹で上げられた餃子は、焼き餃子とはまた違った味わい。お酒に火照った喉を優しく伝ってゆきます。

本当にびっくり。地酒のつまみに餃子って合うんだ。でもきっとそれは、宇都宮餃子だからこそのなせる業。ガッツリにんにくの入った餃子も好きですが、この地で餃子を食べるとやっぱり毎回感動してしまう。いい素材の採れる栃木ならではの、宇都宮に来たら外せない味。

4月に引き続き、今回も出かけてしまった一泊二日のふらり旅。新型特急に鉄道の進化を感じ、奥塩原で硫黄にまみれる。牧場では動物や木々の若葉に触れ、大谷の地下に眠る遺跡を目の当たりにする。そして最後は、美味しい餃子と栃木の酒で締めくくり。

いやぁ、今回も濃かった。これだけいろいろ味わったにもかかわらず、時間の制約など微塵も感じない。これはまずい、近場の一泊二日はクセになる。

でも一泊二日でも十分に楽しめることを知った今、出掛けたければ出掛けてしまえばいい。そう少しだけ心にゆとりをもてる自分に気付きました。よし、また行こう。一泊二日だからこそ行ける、まだ見ぬ目的地を探して。

湯ったり下野、初夏の旅。
宇都宮大谷資料館幻想的な内部
2017.5 栃木
旅行記へ
●1日目(東京⇒塩原温泉)
 /
●2日目(塩原温泉⇒千本松牧場⇒大谷⇒東京)
 /

コメント

タイトルとURLをコピーしました