深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 4日目 ⑤~ | 旅は未知連れ酔わな酒

深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 4日目 ⑤~

冬の夕方青森駅 旅行記

陽も傾き始め、いよいよ青森を発つ時が。ずっと訪れたいと願い続けてきた酸ヶ湯。その抜群なお湯の良さもさることながら、今回は存分に青森の旨さを味わうことができました。

ここまで十分に満喫すれば、もう思い残すことは無い。旅の想い出とお土産を抱え、いつもには無い晴れやかな気持ちで、改札口を通ります。

青森駅改札内で旅人を見送るねぶた

改札内では、青森と言えばの立派なねぶたがお見送り。いつかは弘前と青森のねぷたとねぶたのはしごができるのだろうか。やはり一度生で見てみたい。勇ましい組ねぶたに必ず叶えてやると約束を残します。

冬の夕暮れ青函連絡船と青森ベイブリッジ

コンコースの窓からもう一度、青森のベイエリアと海峡の女王にお別れを。暮れ始めた冬の空。青と白の輪郭が溶け始め、何となく物悲しい雰囲気。それは味わい尽くしたと言いつつも、やはりどこかに隠れている名残惜しさを映しこんだよう。

国鉄時代の面影を色濃く残す青森駅の長い廊下

上野発の夜行列車降りた時から・・・。その当時の面影を色濃く残す、長い長い渡り廊下。連絡船への高架橋ではありませんが、在りし日の連絡通路は似たような雰囲気だったのではないでしょうか。

僕は結局一度も体験することができなかった。あと10年早く生まれていれば。鉄道ファンを長く続けてきて、こう思う瞬間は数知れず。その都度切なさがこみあげてくるのです。

雪の中の奥羽本線701系弘前行き

長い跨線橋を渡り、列車の発着するホームに到着。すでに弘前行きの普通列車が待っていました。

僕が初めて青森に降り立った時のことを鮮明に思い出させる、長大なホーム。15年前にはくつる号から下車した時の感覚が甦る。一番多感な時期の記憶は、きっといつまでも色褪せることなく、原色のまま残り続けることでしょう。

雪景色厳冬の新青森駅

青森駅からたった一駅の奥羽本線の旅。その数分間、列車に揺られて僕は記憶の旅をする。卒業と就職を目前に控えた時期に訪れた青森駅に記憶を呼び起こされ、当時のことがひどく懐かしく思われる。

なんだかんだ言ってあっという間の15年。今年は初めての永年勤続表彰。当時の自分にとって15年先なんて想像もつかなかった。でも振り返ってみると、本当にあっという間。すでに会社生活の1/3を過ごしたんだ。そんなことをしみじみ考えているうちに、列車もあっという間に新青森に到着。

新青森で旅人を出迎え見送るねぶた

駅ビルでお土産と道中の供を買い込み、いよいよ新幹線の改札をくぐります。そこにはまたまた立派なねぶた。絶対来てやる!絶対見てやる!!真っ白な冬に居ながらにして、次の夏への野望に気持ちは燃えるように昂ります。

新青森駅津軽塗でできた美しい青森県

そして壁には青森県を模った美しい津軽塗が。今日まな板と一緒に見て歩いた津軽塗の箸。様々な色合いや文様に目を奪われていましたが、ここにそれらが一堂に会しているとは。もちろん今では、青森土産の津軽塗のお箸は僕の相棒となって家に居ます。

東北新幹線E5系はやぶさ号東京行き新青森駅入線

ついに帰京の瞬間が。僕を東京へと連れ戻す、世界最速のはやぶさ号がホームへと滑り込みます。

新幹線の充実によって、様々な貴重な旅情が奪われたことは間違いのない事実。でも、やっぱりこうして利用してみると、本当にその速さはありがたいのです。

それまで八戸から更に在来線特急に揺られないと、来ることができなかった青森。それが今では、当時の八戸までの所要時間で、乗り換えなしで来ることができる。だからこそ、僕は何度も青森へと来ることができているのです。

はやぶさ車内で山廃純米酒白神ワンカップ

東京まで3時間半。盛岡までのんびりタイプのはやぶさなので、車内でのんびり旅の余韻に浸かってやることに。そんな道中の幕開けは、弘前は白神酒造の、山廃純米酒白神。青森らしいすっきりとした美味しさが、旅の火照りを鎮めてくれます。


新青森駅弁太宰弁当

そしてこの旅最後の青森グルメを。普通の駅弁もありましたが、今回は新青森駅の食堂が作っている太宰弁当を購入してみることに。
新青森駅弁太宰弁当中身

蓋を開けると、貝焼き味噌やけの汁、馬肉の味噌煮、紅鮭、ほたて、姫竹といった青森の味がぎっしり。どれも素朴な美味しさで、これらをつまみにワンカップをちびちびやるにはピッタリ。

そして印象深かったのは、若おいのおにぎり。まだ柔らかい若い昆布を巻いたというおにぎりは、今まで味わったことの無い初めての味。適度に歯ごたえのある昆布からほんのりと磯の香りと旨味が染みだし、飲兵衛の腹固めに丁度良い美味しさ。

東北新幹線車内で八鶴純米ワンカップ

青森のしみじみとした味に合わせるのは、八戸酒類の八鶴純米。これも僕の青森帰りでは定番となったお酒。きりりとした辛口に、食もお酒も進みます。

東北新幹線車内で鳩正宗八甲田おろしワンカップ

3泊4日の全てを、八甲田山に寄り添うように過ごしたこの旅。そんな旅の最後にと選んだのは、十和田市の鳩正宗、八甲田おろし。雪に覆われた酸ヶ湯での清冽な時間を呼び起こす、すっきりとキレのある味わい。

ふとしたきっかけから、念願であった酸ヶ湯と出会えた今回の旅。旅行は長期間でなくてもいい。最近エスカレートしつつあった僕の放浪癖も、今回の濃い経験がいい意味でストッパーとなってくれた。

3泊4日の青森行き。普通の感覚ではそれでも充分長いでしょう。でも僕にとっては、遠くまで行くのに4日間とはもったいない。そう思いつつ旅に出たのです。でもそこで味わった味覚に、景色に、そして極上の温泉。雪に閉ざされた八甲田に待っていたのは、皆が口を揃えて良いお湯だという前評判に違わない、本当に良い温泉でした。

どうしよう、たった1日休みを取るだけで・・・。これまで休みを取りにくい環境だったので、取れるときにまとめてガッツリ取ってしまえ。そう思い長期の旅行へと繰り出していました。でも今回、3泊4日で存分に愉しめてしまった青森への旅。どうしよう、旅に出るハードルがまた下がってしまった。

僕の旅への欲求は、年を増すごとに増幅している。旅に出る度に旅が更に好きになる。困った趣味を持ったものだ。そんな贅沢な悩みを抱き、すでに次の行先候補をうっすらと思い描きつつ、時速320キロで南下を続けます。

もう、帰京が怖くない。望めば行ける、絶対に。それがあるから頑張れる。頑張ったからこそ、楽しめる。南を目指す新幹線は、いつしか僕の敵では無くなっていた。それがどれだけ幸せな事か。

旅は最大にして最良の趣味。これを見つけられたことの幸運に感謝し、満足感に包まれて東京駅へと降り立つのでした。

深き白に染められて~厳冬の八甲田へ~

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸
2015.2 青森

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●1日目(東京⇒青森)
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●2日目(青森⇒酸ヶ湯温泉)
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3日目(酸ヶ湯温泉)
●4日目(酸ヶ湯温泉⇒三内丸山遺跡⇒東京)
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