駅前からは自転車を降りて押して歩きます。1分も経たないうちに緑が深くなり、すでに山里の雰囲気。
高尾山の玄関口、ケーブルカー乗り場前に到着。きゃらぶきやふき味噌などのお土産やさんや、高尾名物とろろそばのお店がずらっと並んでいます。このあたりの適当な場所を見つけて駐輪し、登山道へと向かいます。
いよいよ登山開始。高尾山にはたくさんの「自然研究路」が用意されていますが、麓から上へと上がるのは1号路、6号路、稲荷山コースの3つ。そのうち唯一の舗装路で薬王院を経由する、いわば表参道である1号路で登ることにしました。
登山道へと少し入っただけで静寂があたりを包みます。せせらぎ沿いに咲く淡い水色の花がきれい。自転車で火照った体を冷気を帯びた爽やかな空気がクールダウンしてくれます。
登山開始からゆっくり歩くこと30分、ケーブルカー降り場前に到着。見通しが利きにくい高尾登山道の中で、視界がぐっと開ける場所です。
この日はガスっていたので新宿辺りまでしか望むことはできませんでしたが、晴れた視界のいい日には、遠くは横浜や海まで望むことができます。
反対側に目をやれば、延々と続く丘陵地帯。ここが多摩丘陵から関東平野の縁を形成する山へと切り替わる、まさに最前線であることが実感できます。
ケーブルカーさえ使えば、ここまではほとんど登山しなくてもたどり着くことができる、都会人のオアシス。このアクセスのよさと手軽に山を感じられる気軽さが、高尾の人気のもとになっているのでしょう。
毎年夏には、この頭上にある展望レストランでビアガーデンを開催しており、室内外からは都心のきらめく夜景を眺めながらビールを堪能することができます。1度だけ僕も行きましたが、本当にいいところでした。ちょっと寒いのと混んでいたのがたまに瑕。今年は行けるかな~?
ケーブルカー降り場から薬王院までは、途中の1箇所を除いてほぼフラットな参道。非常に歩きやすい。途中にはサル園や野草園、樹齢数百年といわれる蛸杉があり、それらを見ながら歩くのもいいことでしょう。
薬王院の手前で分岐があり、ここで階段の男坂と、坂道の女坂に分かれます。僕は行きは男坂、帰りは女坂を選択。木に行く先をさえぎられ見えないほどの階段。結構長い。
参道には杉並木が続いており、老木からまだ細い木までさまざまな杉が並んでいます。なかでもこの杉はかなり太くて立派で、下から見上げると首が痛くなるほど。高尾山の古くからの厚い信仰の歴史を見てきたことでしょう。あたりには荘厳な空気が漂います。
男坂を登りきり杉並木をのんびり歩けば、本日の目的地である「薬王院」に到着。この四天王門をくぐり、境内へと入ります。
門をくぐると、立派な天狗様がお出迎え。高尾山は天狗信仰の山で、JR高尾駅には天狗様の像があるほど。小さい頃から高尾山に馴染みのある僕は、天狗様に会うと高尾に来たんだなぁ、と実感が沸きます。
お守りやおみやげ物がならぶ境内を通り抜け、この石段を登れば本堂。もう一息です。
最後に高尾山に来たのがビアガーデンに来たときなので、3年振り位のお参り。高尾山にはもう何度も来ていますが、いつも薬王院にお参りしていきます。
この奥に本社や奥の院があり、そこを経由すればほんの少しで山頂へとたどり着くことができます。今回は時間の都合もあり、お参りだけして下山することにしました。
来た道を引き返し、ケーブル降り場のところからびわ滝方面の登山道へと入ります。この道を行けばびわ滝を経由して高尾山口駅へ戻ることができます。
1号路の舗装路とは違い、こちらはいかにも登山道、といった趣。木の根っこや岩があちこちに露出しており、意外と本格的な山歩きが楽しめます。自分の服装や体力、気分によってコースを選択できるのも高尾山のいいところ。老若男女みんなに優しい高尾山です。
6号路との結節点にあるびわ滝。ここは現在も滝行が行われる霊場で、実際この日も滝行を行われている方がいました。
気軽な山のイメージがある高尾山ですが、古くからの信仰や修行の歴史が、今でも脈々と伝わっていることを実感。都心から1時間かからないところにこんなところがあるのです。
びわ滝の先はなだらかな土の道に変わり、びわ滝から流れる川に沿って山を下ります。その川も、実は今日辿ってきた浅川の源流のひとつ。つまり今日は浅川と寄り添うようなコースを辿ったわけです。
ケーブルカー乗り場で自転車をピックアップし、お土産やさんの並ぶ参道を直進すれば甲州街道に出ます。馴染み深い高尾山に後ろ髪を引かれながらも、甲州街道をひた走り帰路へと就きました。
小さい頃から遠足や家族でよく来ていた高尾山。自転車で来て、自分の足で上がり、そして自転車で帰る。全て自分の力だけで巡った高尾山というのは初めての経験であり、また違う角度で高尾山の魅力を感じることができました。
手軽に行ける高尾山、でもそこに広がる世界は決して都会の延長ではありません。高尾山をさらに好きになった、そんな1日でした。
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