2022年、これまでで一番旅に出られた一年だった。旅することが叶わなかった去年と比べ、今年は本当に良い旅ができた。それはきっと、旅という生き甲斐を取り上げられた経験があったからこそ、その悦びを今まで以上にしみじみと感じられるようになったからなのかもしれない。
どこまでも続く鉄路に憧れるきっかけとなった、中央本線。甲州、そして信州目指し、故郷の駅を発ってゆく特別急行。その雄姿に、幼い僕は一体どれほど胸を焦がしただろうか。
そんな僕にとって永遠の憧れであるあずさ号で信州へと旅立った1月。黄金に染まる湯に出逢い、念願の諏訪大社にお参りし。年の初めに相応しい、豊かな時間をくれる旅だった。
続いて2月、東武特急と会津鉄道を乗り継ぎ福島へ。湯野上や中ノ沢と、初めてのお湯と出逢える旅だった。白く染まる会津と信夫、その銀に輝く美しさに目を奪われた。
4月には、僕の住む街と同じ関東とは思えぬほど遠い奥鬼怒へ。温泉巡りが好きになったころ以来、15年ぶりに再会した加仁湯。鬼怒川源流に佇む秘湯の宿で、白い残雪と乳白のにごり湯に染まり関東の広さを実感した。
そして6月、2年ぶりの再訪が叶い八重山へ。35歳で初めてあのあおさに出逢って以来、毎年毎年行くことを楽しみにしていた八重山。去年逢えなかった分、今年のあおさは心に沁みた。
8月には、3年ぶりに津軽の熱い夜と再会。僕にとって、八重山のあおとねぷたの滾りが揃ってこそ、本当の夏。今年はその本当の夏が戻ってきてくれて、ただただ本当に嬉しかった。
8月に巡ることができなかった東北へと、再び旅立った9月。須川では、改めて湯のもつ力に驚きを覚えた。青根では戦国時代から続く湯船に抱かれ、初めての鎌先の湯と出逢い。東北を染める晩夏の豊かな緑の眩しさに触れ、ねぷた旅と合わせてようやく僕の夏が完成した。
そして10月は越後へ、12月には上州へ。これらの旅は、これからのんびりと書いていくつもり。
これまでも、旅できることが当たり前だとは一度も思ったことはなかったつもり。でも一度しか旅に出られなかった去年を経て、旅の道中や旅先で噛みしめるよろこびの数は格段に増えた。失ってみて、その大切さを身をもって知らされた。だからこそ、初心に帰って旅することを味わいたい。
交通を支える者として、そして旅を生きがいに持つ者として。みんなが旅することを止めてしまうと、消えてしまう文化があるということを痛感させられたここ数年。だからこそ、僕はどんどん旅に出たい。
公共交通機関に乗って、宿に泊まり、現地のお店で土地の味に出逢いたい。その時間が、僕の人生を豊かにしてくれるから。そしてこれが、僕にできる微力ながらの行動だから。旅のない生活になんて、もう二度と戻りたくはない。だからこそ、旅という文化を繋いでゆく一端を担いたい。
このブログを初めて早15年。その間に積み重ねた旅の想い出は数知れず。そのひとつひとつが、僕の軌跡を彩る宝物。旅という生き甲斐に出逢え、それをこつこつとブログに残し。何事も飽きっぽい僕だけど、この趣味がこんなに長く続けられるとは。この先も、20年30年と、旅のよろこびを記していきたい。そうすることが、僕にとっての悦びだから。
色々とあった2022年も、もう間もなく終わります。2023年こそは、平穏な年となりますように。そんな想いを込めて、今年最後の更新とさせていただきます。
最後になりましたが、今年も遊びに来ていただき本当にありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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