初めてのひとり甲斐路 ~ゆるり湯ったりほぐされて 3日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

初めてのひとり甲斐路 ~ゆるり湯ったりほぐされて 3日目 ③~

12月中旬初冬の甲府富士山の見える東光寺への長閑な道 旅行記

荘厳さに満ちた甲斐善光寺に別れを告げ、のんびり歩く未知なる街。陽射し溢れる青空に、霞むように蒼く連なる盆地の縁。その山並みの上からは富士山が顔を出し、胸のすくような光景に思わず深呼吸したくなる。

12月中旬初冬の甲府東光寺へと続くのどかな道
甲府は何度も通ってはいるものの、こうしてきちんと旅するのは初めてのこと。この先に渋いお堂を持つお寺があるようなので、せっかくなので寄り道してみることに。

12月中旬初冬の甲府東光寺の参道
善光寺さんから小春日和の陽気に包まれ歩くこと10分、東光寺に到着。ここは武田信玄公が定めた甲府五山のうちのひとつ、鎌倉時代から続く歴史あるお寺だそう。

12月中旬初冬の甲府武田菱が彫られた東光寺山門
参道を進んでゆくと、立派な丸太の柱が瓦屋根を支える渋い山門が。正面には武田菱が彫られており、武田家とのゆかりが深いことが分かります。

12月中旬初冬の甲府東光寺山門脇に彩りを添える見事な紅葉
山門をくぐると、まず出迎えるのが見事な紅葉。空を覆うように伸ばした枝葉が鮮烈な紅に染まり、あまりの眩さに言葉も忘れ見入ってしまう。

12月中旬初冬の甲府東光寺すすきが情緒を添える鐘楼
鐘楼のそばで風に吹かれて揺れるすすき。西日に照らされ銀に輝く姿は秋の名残りを感じさせ、先ほどの紅葉とともにあと半月で年を越すということを忘れさせるよう。

12月中旬初冬の甲府東光寺鐘楼横の美しい枯山水
遅めの秋の情緒に染まっていると、すぐそばに小さな枯山水が。西日に照らされ陰陽を強める箒目、その中心に置かれるかりんの実。無機質と、有機物。その対比の妙に、こころを奪われる。

12月中旬初冬の甲府東光寺国指定重要文化財室町時代築檜皮葺の仏殿
そして僕がこのお寺で見たかったのが、この仏殿。室町時代に建てられたという檜皮葺の木造建築は、焼き討ちや空襲にも耐え今なお往時の優美な姿を現代へと伝えています。

12月中旬初冬の甲府1面1線の金手駅
東光寺にはすばらしいお庭もあるそうですが、残念ながら時間の都合で今回はお預け。甲府の閑静な住宅地を歩き、15分程で金手駅に到着。ここから再び身延線に乗車します。

12月中旬初冬の甲府駅北口
並走する中央本線には駅がないため、停車する普通列車は1時間に1~2本。ちょうど良いタイミングで列車を捕まえ、あっという間の1駅で甲府駅に到着。

12月中旬初冬の甲府駅北口から山梨交通武田神社行きバスに乗車
北口のロータリーで待つことしばし、『山梨交通』の武田神社行きバスが到着。続いても当初は予定になかった目的地を目指し、バスへと乗り込みます。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社
バスに揺られること10分足らず、終点の武田神社に到着。ここ一帯は、かつて武田氏の居城であった躑躅ヶ崎館のあった場所だそう。

12月中旬初冬の甲府武田神社城跡を感じさせるお堀と名残りの紅葉
ここが城跡であることを今へと伝えるお堀。赤い欄干の橋からは、静かな水面に姿を映す晩秋の木々の彩りが。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社武田菱の形をした手水舎
まずは手を清めようと手水舎へ。どんと据えられた武田菱の形をした手水鉢から、きれいな水が流れ落ちています。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社大正時代建築の重厚な拝殿
甲斐国総鎮護である武田神社。御祭神は、言うまでもなく武田信玄公。かつての居城の地で、今なお甲州を見守り続けています。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社2009年に建てられた甲陽武能殿
大正時代に創建された武田神社。重厚な拝殿でこの地を訪れることのできたお礼を伝え、境内の散策へ。立派な能舞台、甲陽武能殿は2009年に建てられたものだそう。すでに木材は風格を帯びはじめ、他の建築同様にこの地で歴史を深めてゆくことでしょう。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社土塁を通って西側へ
武田神社の鎮座する中曲輪を抜け、静かな森の広がる西曲輪へ。その境には土塁が残され、ここがかつて城郭であったことを物語ります。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社西曲輪のお堀から夕刻の甲府盆地を望む
土塁のすぐ先には深い掘割が横たわり、鬱蒼と繁る木々越しに望む夕刻の甲府の街並みが美しい。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社西曲輪北桝形虎口
静けさに包まれた西曲輪をのんびり歩き北端へ。かつてここには桝形虎口があったそうで、土塁に切られた狭い通路にその面影を見ることができます。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社西曲輪北桝形虎口
土橋を渡り西曲輪の外へ。振り返り眺めてみると、土橋の細さや左右の空堀の落ち込みの深さに護りの堅さが伝わるよう。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社未だ発掘の進められている北側
深い森に覆われた西曲輪を抜けると、現在発掘調査が行われている一帯へ。数段の石積みの先には、盆地の縁を成す美しい山並みが。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社深い空堀に色付く紅葉
甲府盆地の北端に触れ、夕暮れの気配に抱かれつつ歩くのどかな道。すぐそばの空堀へと目をやれば、すでにそこには夜が訪れその深さを一層増すかのよう。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社かつて大手門のあった東側
今は人々の暮らしの地となっている、躑躅ヶ崎館の北側。夕刻の山里の情緒に触れつつ歩き、車道に出て街側へ。するとすぐそこに現れる立派な石垣。かつてはこの辺りに大手門があったそう。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社躑躅ヶ崎館の散策を終え鳥居越しに望む甲府盆地の街並み
初めて訪れた、武田神社。重厚な神社にお参りし、戦国時代の城郭の面影を感じ。短いながら濃い時間を過ごし、古い城跡を後にすることに。

12月中旬初冬の甲府夕刻の武田神社夕暮れに染まる甲府盆地
今日はきっと、甲府を旅しろということだったんだろうな。身延山のロープウェー運休により、図らずも生みだされた時間。当初予定していなかった偶然の出会いの連続に、初めて甲府という街に触れられた気がする。

そしてまだ、もうひとつ行きたい場所がある。欲張りな僕は、最後の最後まで甲府を満喫すべく再び駅を目指すのでした。

初めてのひとり甲斐路 ~ゆるり湯ったりほぐされて~

2023.12 山梨
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●1日目(東京⇒下部温泉)
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2日目(下部温泉滞在)
●3日目(下部温泉⇒身延山⇒甲府⇒東京)
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