大洗から太平洋を18時間近く航海し、さんふらわあふらのは苫小牧西港フェリーターミナルに無事接岸。ボーディングブリッジが接続され、名残惜しくも下船することに。
本当に、良い船だった。濃密な半日を過ごした分、すっかり愛着が湧いてしまった。そんなさんふらわあふらのを振り返り、その雄姿をこの眼にこころに灼きつけます。
苫小牧駅や札幌駅まではバスが運行していますが、道中に寄りたい場所があったので駅まで歩いていくことに。外へ出たときは、あ、カラッとして気持ちいい!と思ったものの、ほんの数分で汗だくに。湿気がない分、太陽が直にジリジリくる感じがする。
そうか、前回も前々回もゴールデンウイークだったからこんなに暑くなかったのか。早くも少々バテ気味になりつつ、来た道を振り返ります。するとそこには、仲良く並ぶふたつのファンネル。こうしてまた、僕はフェリー旅へと心を奪われてゆく。
きそとさんふらわあふらのに見送られ、ちょっとばかりペースを上げて歩くこと25分。今回も、5年前に訪れた回転寿司『海天丸』にお邪魔することに。
なぜこんなに急いでいるのか。それは、僕に与えられた北海道での時間が6時間しかないから。こんな行程、我ながら脳みそ溶けてるぜ。ある意味狂気の悦びを噛みしめつつ、まずは上陸記念のサッポロクラシックをゴクゴク喉へと流します。
さあ始まった、お寿司祭り30分一本勝負!まずは道産のこの3品。活ほっきは適度な歯ごたえと甘味がおいしく、松川かれいは淡白で上品な白身ならではの滋味深い味わい。根室産のとろにしんは、程よくのった脂の甘味とにしんならではの香りが堪らない。
続いて、つぶより貝三貫を。しっとりぷりっと甘味の詰まった肉厚のほたて、コリっとした食感とともに独特の風味を愉しめる赤貝。羅臼つぶは真つぶに比べて優しい食感で、程よいコリコリ感を噛みしめれば磯の香りが口へと広がります。
そのお隣は、根室産自家製マス筋子。このブログでも何度も書きましたが、それでも声を大にして言いたい。僕は断然、いくらより筋子派。それも鮭子よりも鱒子が大好き!
そんな大好物の鱒子に期待を膨らませつつひと口。うわぁ、こりゃ旨いよ、旨いよなぁ。いくらでは味わえぬ、膜に包まれているからこそのねっとり感。卵は成長途中のため柔らかく、膜が破けた途端に旨味の洪水に呑み込まれそう。今度は時間を取って来よう。北海道の地酒が恋しすぎるぞ。
誰だ、こんな強行スケジュールを組んだのは。でも普段したことのない旅のスタイルに嬉しさを感じつつ、早くもこの2皿で〆ることに。
北海道といえばのほぐしズワイ、いくら、生うにが載った軍艦ヤマト。先ほど筋子愛を語ったばかりでなんですが、いくらもやっぱり旨いんだよな。たっぷり盛られた生うには、溶けゆくのと引き換えに豊かな甘味と磯の香りが広がります。
そして大トリは、日高産熟成銀聖サーモン。しっとりとした身には鮭の良さがぎゅっと凝縮され、脂の味に頼らないしっかりとした鮭の旨味が堪らない。
いやぁ、旨かった。短い時間ながらも、好物の北の海の幸を満喫しお会計。このお店はフェリー割があり、商船三井さんふらわあや太平洋フェリーの乗船券があれば割引してくれるのも嬉しいところ。
食後すぐにはちょっとばかり堪えるが、ここからはまた若干早足で。実は海天丸への道中、駅へのタクシーを手配しようとしたところ予約は受けられないとのこと。人手不足、実感する場面が増えてきているな。
途中セイコーマートに寄り道しつつ、頑張って歩くこと20分ちょっとで苫小牧駅に到着。なぜこうも余裕がないかといえば、隣接するドン・キホーテで今夜の食料を買わねばならないから。
無事に今夜と明朝の食料を買い込み、発車まであと数分というところで改札内へ。日高本線のホームへと向かえば、もう乗れないかと諦めていた愛する極寒地仕様のキハ40。
この車両は、北海道の恵シリーズとして改造された4両のうちのひとつ。道央花の恵みと名付けられ、車内は元来の雰囲気を活かしつつ木を感じられる温もりある内装に。
久々のキハ40に心を打たれていると、発車時刻を迎えいざ出発。重たい車体を載せ、唸りの割には緩やかな加速で滑りだすキハ40。現代のハイスペックなディーゼルカーにはない、国鉄型気動車ならではの無骨な実直さ。
ガタン、ゴトン。まさか、令和の世にまた非冷房に乗れるとは。どの窓も大きく開け放たれ、そこから流れ込む北の大地の爽やかな風と単行のリズム。そんな由緒正しい汽車旅の情緒を、一層深めてくれる勇払原野の雄大な車窓。
思い出す、子供の頃に過ごした北海道での夏休み。僕にとっての北海道の鉄道の原風景ともいえる旅情に染まっていると、列車は厚真川を渡る鉄橋へ。
短くも、濃密な汽車旅だった。苫小牧から国鉄の残り香に揺られること21分、列車は浜厚真に到着。もうこれが、最後だろうか。いや、また今度があってほしい。僕にとって、永遠の北海道の象徴であるキハ40。終点鵡川へと向け走りゆく雄姿を見送り、思わず目頭が熱くなる。
キハ40が去った駅に、ぽつんと残された降車客3人。こんな小さな無人駅ですが、この浜厚真駅がこれから向かう苫小牧東港への鉄道の玄関口。
さて、これからまた頑張って歩くか。カラッとしているからこそのジリジリとした陽射しを受けつつ歩いてゆくと、遠くから漏れ聞こえてくる賑やかな音楽が。どうやら厚真はサーフィンで有名なビーチがあるそうで、休日のこの日はそこに出入りする多くの車が。
厚真川の河口に架かる橋に立ち、海風に吹かれ全身に浴びる北の夏色。北海道に上陸してから、たったの2時間半。すごく短い時間だけれど、なんだか濃かった気がする。北の大地の暑さに灼かれ、短い北海道滞在をしっかりと思い出に刻むのでした。
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