早朝に上陸し、すっかり大満喫した初めての敦賀の街。今回はちょっとばかり駆け足になったので、これはまた来なければだな。そう再訪を誓い、この街に別れを告げます。
今年の3月にこの地まで開通した北陸新幹線。それと引き換えに、北陸本線が第3セクター化し誕生した『ハピラインふくい』。まさかこんなに早く初乗車の時を迎えるとは。未知なる車窓への期待を胸に、ピンク色をまとった車両に乗り込みます。
JRから受け継いだ521系電車に揺られ久々に関西圏の雰囲気を愉しむこと51分、これまた人生初となる福井駅に到着。駅前は多くの観光客と思しき人で賑わっています。
新幹線開業に合わせ、大規模リニューアルされたという福井駅周辺。駅前のロータリーでは、動く恐竜のモニュメントがお出迎え。開通前からテレビやWebでは見ていましたが、実際に訪れ目にするとやっぱり写真を撮ってしまう。
恐竜が雄叫びをあげる駅を背にし、汗を掻きつつ急ぎ足。向かうは福井といえばの『ヨーロッパ軒』。並ぶことを覚悟で、その総本店を目指します。
梅雨末期特有の蒸し暑さの中並ぶこと45分、ついに来たその瞬間。僕とヨーロッパ軒の出逢いは、もう15年ほど前になるだろうか。相方さんに誘われて行った、京王百貨店の催事に出店しているイートイン。そこで衝撃を受けて以来、毎回欠かさず訪れるように。
もう僕は、ソースカツ丼なしでは生きられぬ体になってしまった。そんな中毒性のあるあの味を、本場福井それも総本店で食べられるなんて。その悦びをつまみに生をぐいっと飲んでいると、お待ちかねの大カツ丼が到着。
閉められない、辛うじて載っているだけの蓋を取る。その刹那、鼻をくすぐる香りと眼を悦ばせるこの茶色。早くがっつきたい気持ちを抑え、カツ1枚を残し3枚は蓋の上へと避難させる。
そしてついに、恋焦がれていた総本店の味をひと口。うわぁ、やっぱりうめぇよこれはよぉ。この薄さなのに、しっかりと感じる豚の旨味と肉汁。全体にまとった細かいパン粉が、特製のウスターソースをしっかりと抱き込む。
すかさずご飯をひと口。うわっ、これが東京の催事と違う部分だ。米どころ福井のお米を現地の水で炊いているからか、びっくりするほどのもっちりさと強い甘味。程よい酸味とスパイシーさを感じるソースとの相性は抜群で、新宿で食べるものとは段違い。
重たさを感じさせぬ、絶妙な塩梅の薄さのカツ。続いて熱々はふはふの甘いご飯。それらを結ぶ中毒性あるソースに食欲が掻き立てられ、もう食べる手を止めることなどできやしない。
旨い旨いとひとり呟きながら、ひと口ひと口を噛みしめ名残惜しくも完食。このソースカツ丼を知らずに生きてゆくなんて、もったいない。そう思える唯一無二の味に改めて惚れ直し、店員さんに念願叶った悦びを告げてお店を後にします。
催事もすごい再現度なんだけど、やっぱり本場には敵わないんだな。重たすぎる僕のヨーロッパ軒愛を越えてくる旨さの余韻に浸り、次なる目的地を目指します。
これから向かうは東尋坊。福井から向かうにはいくつかのルートがありますが、今回は『えちぜん鉄道』の三国芦原線初乗車を愉しむことに。
地元の足として、細かく停車しながらのんびり走る1両編成。単行ならではのリズムに身を任せて眺める、豊かな車窓。どこまでも続く緑の田園に、福井が米どころであることを改めて実感します。
のんびりローカル線の旅を愉しむこと約50分、列車は終点の三国港に到着。ホームの脇では、渋い駅舎がお出迎え。国鉄三国線の終点として建てられて以来、101年もの間こうして旅客を迎え続けています。
2010年には建築当時の雰囲気へと戻す改修が施されたそうで、内部はこれまた大正浪漫を感じさせる造り。建材は当時からのものを再利用しており、木組みの天井やむき出しの電線が渋い味わいを醸し出しています。
駅の福井方には、明らかに歴史のありそうな小さなアーチ橋が。石積みと煉瓦でできた眼鏡橋は、三国線の延伸時に鉄道院によって造られたものだそう。三国線は国鉄時代に廃線になっていますが、三国から三国港の区間は京福電鉄、そしてえちぜん鉄道へと引き継がれ今なお生き続けています。
長大ホームにかつての賑わいを重ねつつ、踏切を渡りバス停へ。そのすぐ横には、おいしい魚の揚がる三国港。防波堤の先には、うっすらと見える日本海。
この三国港は、福井を代表する河川である九頭竜川の河口に設けられた港。川上側を見てみれば、その川幅の広さに圧倒される。
福井県の70%をも流域面積に持つ大河。その終わりにひとり佇み、漁港の情緒にこころを染めつつバスを待つのでした。
コメント