9年ぶりに迎える、仙台の朝。やっぱり泊まりはいい。帰りを気にしなくていい分、余裕をもって心の底から愉しめる。久々に味わった仙台での夜の余韻を噛みしめつつ、この街もやはり定期的に泊まりに来なければと改めて思わされる。
分厚い布団の上でだらだらと過ごし、良き時間になったところでチェックアウト。調べてみると、朝からラーメンや芋煮が食べられるところもあるらしい。久々となる仙台での朝ごはん。何を食べようかと直前まで迷っていましたが、ずっと気になっていた『そばの神田東一屋名掛丁店』にお邪魔することに。
ハピナ名掛丁から駅へと向かう道すがら、エスカレーターに乗るといつも鼻をくすぐるだしの香り。念願叶い訪れることのできた歓びを噛みしめつつ待つことしばし、注文した朝そばのできあがり。
11時までの時間限定、たっぷりのほうれん草と温泉卵の載った朝そば。カウンターに置いてある天かすと七味を加え、いざおつゆから。
うん、旨い。その見た目通り、とても穏やか。換気扇から漂う香りと立ち食いそばというイメージから勝手に濃い黒いつゆを想像していましたが、しょう油控えめのだしを感じさせる優しい味わい。
続いて細めのそばを。自家製の生そばは細身ながら滑らかさやコシがあり、適量のおつゆを口へと連れてくる。この麺には、このおつゆだな。全体的に優しさを感じさせるバランスの妙に箸が止まらず、あっという間に最後の一滴まで残さず平らげます。
昨日の余韻が若干残るお腹を、穏やかに満たしてくれる立ちそば。じんわりと沁み入るような旨さの余韻に浸りつつ、これから3泊のお供を仕入れるため仙台駅へ。
お目当てのお店に行こうと1階のコンコースを歩いていると、駅員さんの制服を着た仙臺四郎が。商売繫盛、福の神として知られる仙臺四郎。その力で、仙台のみならず東北全体が賑わいますように。
時刻は9時過ぎ、お目当てのお店は開店前。そりゃそうだ。急いでお土産屋さんが並ぶ2階へと向かい、無事に夜のお供を調達。重たくなったリュックを背負い旧さくら野百貨店前のバス停へと向かい、『東日本急行バス』の金成線、くりこま高原駅行きに乗車します。
途中高速道路を経由し走ること1時間15分、バスは終点のくりこま高原駅に到着。ここは在来線の通っていない、新幹線だけの単独駅。来る機会はないだろうと思っていただけに、何となく嬉しくなってしまう。
ここからは、コミュニティーバスである『栗原市民バス』に乗り換え。土休日は3本しかない花山線に乗り、終点の自然薯の館前を目指します。
このときはぽつぽつと雨が降りだしたためくりこま高原駅で乗り換えましたが、仙台から高速バス利用なら築館バス停でも乗り換え可能。志波姫や築館といった合併前の市街地を抜けてゆくと、車窓には長閑な田園風景が広がるように。
コミュニティーバスらしく、点在する集落を器用に繋ぎつつ山手を目指す小さなバス。山深さも一段と増し細い道を抜けたかと思えば、眼前には花山ダムにより造られた花山湖が。
ここまで来ればあと少し。念願の地へと着実に近付きつつある歓びを噛みしめていると、湖面を渡る古風な橋が。うつくしい構造美を魅せる、カンチレバートラスの座主橋。架橋から63年経っているそうですが、現在も人道橋として現役を続けています。
くりこま高原駅から走ること1時間10分、バスは終点の自然薯の館前に到着。これだけ乗っても、運賃200円。免許を持たぬ旅行者にとって、非常にありがたい貴重な足。地元の方はさておき、僕のような観光客からはもっと運賃取ってほしい。
バスを降りると、宿のご主人がにこにことお出迎え。ここで送迎車に乗り換え、さらに山奥へ。もうすぐだ。あと少しで、諦めていた宿と対面できる。その瞬間に思いを馳せ、到着のときを今か今かと待ちわびるのでした。
コメント