初めてのグランピングで迎える穏やかな朝。明るくなりゆく空、それとともに増してゆく鳥のさえずり。そんな自然な目覚めを心地よく受け入れ、朝風呂へと向かいます。
そしてやっぱり、湯上り後にはハンモック。すっぽり包み込まれ、ゆらゆら揺られ朝の風を頬に浴びる。こんな贅沢を知ってしまうと、家にもハンモックが欲しくなってしまう。
すみません。いま嘘をつきました。これを置ける場所があって、それが似合う雰囲気で、そして何より揺られて気持ちのいい環境の家に住みたいです、本当に。
朝からゆるりとした甘美に蕩けていると、予約していた朝食の時間に。グランピング宿泊者も、朝食は本館のレストランで頂きます。いろいろ選べる飲み物からコーヒーを選び、まずはサラダから。アボカドやツナのコクをまとった野菜の、瑞々しいしゃきしゃきとしたおいしさを味わいます。
こちらのレストランには大きな鉄板があり、朝食もそこで調理された焼きたて熱々を楽しめます。
今日のメインはフレンチトースト。しっかりと卵液を吸ったパンはもっちりふかふかで、卵の優しさとふんわり香るミルク感が堪らない。甘さ控えめなのでメープルシロップを掛けてもしつこくなく、口どけのよいホイップバターがまたいいアクセントに。
そしてこちらも焼きたての、御殿場ソーセージとベーコン。どちらもしっかりと肉感があり、ほどよい塩気がフレンチトーストと好相性。旅先では和朝食を選びがちなため、この体験もまた僕的には新鮮。そして食後には、ヨーグルトとマチェドニア。ハーブの薫る果物で口をさっぱりとさせ、大満足で朝食を終えます。
おいしい朝食に満たされ、すぐさまハンモックへすっぽり収納。気づけば午前中、ずっとぼーっと揺らついてた。そして迎えたお昼どき。ゆとりろ熱海周辺ではランチは食べられなさそうなので、あらかじめ駅の成城石井でパンの詰め合わせを買っておきました。
それに合わせるのは、部屋に備え付けてあったドリップコーヒー。自分でコーヒー豆を挽き、その香りに目を細めつつゆっくりドリップ。それをウッドデッキでやるのだから、これはもう堪らない。
スコーンやミニクロワッサンを齧りつつ、おいしいコーヒーをひと口。そんな贅沢な昼食を彩るのは、遠くで近くで聞こえるうぐいすの声。
伊豆山のうぐいすは、本当によく鳴くな。ものすごく通る澄んだ声で、あちらこちらでさえずっている。そんな中、半オクターブほど低い声で自信なさげに鳴いてみるも、どうしてもホがひとつ多くなってしまうのが一羽いる。この子はきっと、まだ練習中なんだな。
そして午後も、僕の居場所はやっぱりハンモック。どうしよう、もう抜け出せない。すっかり外寝の沼にハマっていると、あっという間にもう16時過ぎ。
はぁ、愉しい時間って本当に蒸発してゆくよな。今夜は雨予報のため、少々早めと思いながら一献傾けることに。今夜のお供は、昨日の梅酒と同じく大井町は石井醸造の曽我の譽純米酒。すっきり辛口で飲みやすくも、しっかりとした日本酒感のある旨い酒。
あまり有名ではないかもしれないが、神奈川ってきちんと酒処なんだよな。以前会社の先輩と小田原の日本酒イベントに行ったときも、その多種多様なおいしさに感嘆したんだった。
そんな旨い地酒とともに、今夜もそろそろ焼きはじめようか。アルミマグ片手に、ちびちびやりながらじゅうじゅう。焼きたてを頬張り日本酒と合わせれば、昨日の白ワインとの組み合わせとはまた違ったおいしさに。
バーベキューって、ひとりでも愉しいんだな。本当に、グランピングに来てよかった。そんな静かな悦びを噛みしめつつ、食後の片づけをして宴の続きを。
続いて開けたのは、御殿場高原ワイン東伊豆醸造所の伊豆みかんワイン辛口。きっちり残されたみかんの瑞々しい爽やかさ、それでいて甘さ控えめ。これも立派な食中酒になりそうだ。
そして今夜も、焚き火でマシュマロを焼く。炎の揺らぎに目を細め、肌に熱を感じ。きつね色にこんがり焼けたところを、パリッととろっと至福の甘さ。マシュマロって、焼いて食べるのが大正解なんだな。
焼き芋もできあがったところで、続いて同じくみかんワインの甘口を。こちらはほどよい甘さがあり、アルコール度数控えめ。食後のデザートとしてゆっくり飲むのに向いていそう。
予報通り、空からはぽつりぽつりと落ちはじめる雨粒が。まだ全然外で過ごせるほどの小雨ではあるが、もう薪をくべるのは終わりにし火が消えたら室内に入ろうか。
半分ほど残ったみかんワインを部屋に持ち帰り、宴の続きを。明るすぎず、暗すぎず。灯りの点る住箱は、こころを温めるようななんとも心地よい空間に。
屋根を叩く雨音は次第に大きくなり、いよいよ本降りに。雨水でたわむタープをぼんやり眺めつつ、ついに飲み干すみかんワイン。
今日も早めの時間だけれど、もうそろそろ寝てしまおうか。丸一日、食べるか呑むか揺られるか。そんな文字通りの何もしないを、させてくれる。グランピングのもたらす静かなる充足を確かに受け取り、満たされた気持ちで眠りへと落ちてゆくのでした。
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