念願叶い富士山本宮浅間大社へのお参りを終え、続いて一之鳥居のすぐ横に位置する『静岡県富士山世界遺産センター』へと寄ってみることに。
木組みの逆さ富士が印象的な建物の内部はそのまま螺旋状のスロープとなっており、静岡側ならではの海抜0m、海からの富士登山を疑似体験できる空間が。プロジェクションマッピングで映し出される千変万化の富士の優美さに、思わず言葉も忘れ見入ってしまう。
スロープを登るごとに、流される映像も頂上へと近づいてゆく。標高や四季、時間による変化の豊かさを眺めつつ進んでゆくと、最上階の展望ホールへ。
おぉ~い、富士山~!僕はあなたに逢いに、ここまで来たんだよ!まあでもこれも、富士山の魅力。こうして気まぐれだからこそ、また逢いたいと願ってしまう。まだ見ぬ富士宮からの優美な姿は、次回の宿題に取っておこう。
屋上で雄大な富士の気配に触れ、そこからは再び展示室内へ。上から順にテーマに沿った展示がなされ、多数設置されたタッチパネルでは多くの情報が見ることが。
思った以上の濃さに驚きつつ、バスの時間の都合上今回は駆け足で覗くだけ。これも次への宿題を残してしまったな。そんなことを思いつつ3階まで下ると、壁一面に広がる壮大な壁画。
地上のみならず、海底にまで広がる富士の支える生態系。その豊かさを、育む山というテーマで展示しているこの空間。左官職人の方が手掛けたという壁画と床面は、それぞれ富士山の地層と駿河湾の海底地形を表しているそう。
着色していない、天然の土の持つ色味で仕上げられた荘厳な壁画。これは朝焼けだろうか、それとも夕焼けか。茜色の空に凛と立つ峰のうつくしさに、胸の深い部分が締め付けられる。
その隣には受け継ぐ山として、噴火の歴史を間近に感じながら富士山と人との未来を考えるというエリアが。
そこに展示されているのは、宝永噴火によって積もった噴出物。下部の規則正しい凹凸は畑の畝、その上の白い部分は軽石。この地層から、たった1日で1mほどの噴出物が堆積したことが分かるそう。
そしてこれが、噴火の時系列による噴出物の変化。噴火初期の右側から末期の左側へと、その段階により噴出物が変化するのだそう。そして一番左の巨大な火山弾は、噴火の最末期に噴出したマグマの飛沫が空中を高速で回転しながら固まったもの。
子供の頃は休火山として習った富士山も、今の認識では生きている活火山。この宝永噴火が起きたのは、300年ちょっと前。こうして目の当たりにし、これが今この瞬間にも始まるかもしれないと思うと背筋が凍る。
バスの時間までとふらり立ち寄った、静岡県富士山世界遺産センター。富士宮からの優美な富士山の姿もそうだし、見切れなかった展示もあるし。またここを訪れる口実をお土産に、浅間大社バス停から『富士急静岡バス』の足形行きに乗車します。
大社前の道を右折し、斜面を延々と登り続けるバス。30分も経っていないというのに、もうすっかり山の中へと来てしまった。富士の裾野の雄大さを感じる乗車体験を経て、白糸の滝観光案内所前バス停で下車します。
芝川沿いに広がる開放的な白糸ノ滝テラスを通り抜け、ひっそりとした散策路へ。その脇には、ごろごろと転がる苔むした岩。これも、富士山がここまで吹き飛ばしたものなのだろうか。
通り沿いにずらりと並ぶ、富士山の形をしたカラーコーン。そのかわいい姿を愛でつつ、緩やかな坂を下ってゆきます。
真新しい展望場に登ると、そこから望めるのは白い水飛沫をあげ豪快に落ちる音止の滝。先ほどゆったりと流れていた芝川が、落差25mの岩壁を一気に落ちる姿は圧巻。
音止の滝の雄々しい姿に圧倒され、昭和の観光地の情緒が残る道を進みお隣の白糸の滝へ。周囲の木々はほんのりと色づきはじめ、秋の到来を教えてくれるよう。
ぐるりと取り囲む岩盤から、無数の湧水がその名の通り白い糸のようにさらさらと流れる白糸の滝。先ほどの音止の滝の力強さとは対照的に、しなやかなうつくしさを魅せています。
流れ落ちるこの水も、もちろん富士山の伏流水。年間を通じて12℃に保たれ、毎秒1.5tもの湧出量があるのだそう。そんな水の流れる川はどこまでも清らかで、水に濡れ鮮やかさを増した緑との対比にこころが洗われる。
この立ちはだかる岩壁は水を通す上部と通さない下部の二層に分かれており、その境から雪解け水が湧き出しているそう。周囲をひんやりとした無数の白糸に囲まれ、漂う細かい水煙の白さがより幻想的な世界を創り上げる。
充満するマイナスイオンを全身に浴び、清々しさに包まれたところで階段を登り展望台へ。ここからは、幾筋もの白糸が蒼く澄んだ滝壺へと落ちる姿を見下ろすことが。
展望台を後にしバス通り方向へ歩いてゆくと、お鬢水と書かれた矢印が。その標識に従い少しばかり下ると、鬱蒼とした緑のなかひっそりと湧く泉が。
この池は、源頼朝が富士の巻き狩りでここを訪れた際にこの水でほつれた髪を整えたという言い伝えが残るそう。何とも言えぬ蒼さを湛える泉から湧き出た水は、白糸の滝のひと筋となり流れてゆきます。
その傍らには、表面にびっしりと文字の刻まれた苔むした岩が。明らかにここが霊場であることを感じさせる佇まいに、思わずハッと息を呑む。
雄々しい迫力に満ちた音止の滝、それと対を成すかのようにしなやかな優美さを魅せる白糸の滝。富士のもたらす水という恵みを肌に感じ、こころの奥が潤いゆくのを感じるのでした。
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