懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 2日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 2日目 ③~

5月中旬の瀬戸内こんぴらさん90年近く現役を続ける昭和生まれの土讃線琴平駅舎 旅行記

こんぴらさんの記憶をこころに、そして脚にしかと灼きつけ、そろそろこの地を離れることに。これから向かうは、対岸の岡山。琴平駅から土讃線に乗車します。

5月中旬の瀬戸内こんぴらさん90年近く現役を続ける昭和生まれの土讃線琴平駅舎軒に光るまる金マーク
昭和11年生まれ、90年以上も現役を続ける渋い佇まいの駅舎。歴史を薫らせるその姿に見惚れつつ近づくと、軒に光るまる金マーク。

5月中旬の瀬戸内こんぴらさん琴平駅に停車中のJR四国7200系高松行き普通列車
どうかまた、この地に戻ってくることができますように。50代への宿題を託し、いざホームへ。停車しているのは、国鉄型の121系を改造した7200系電車。17年前、自転車を携え快速サンポートに乗ったことが懐かしい。

5月中旬の瀬戸内7200系高松行き普通列車車窓から望む丸亀城
列車は土讃線を北上し、多度津から予讃線へ。土佐と讃岐、伊予と讃岐。旧国名好きとしては、JR四国の路線名にはゾクゾクしてしまう。我ながらキモいと思いつつ車窓を眺めていると、市街地の先には幾重にも重なる石垣の上に凛と立つ丸亀城が。

5月中旬の瀬戸内予讃線坂出駅に入線するJR四国5000系快速マリンライナー岡山行き
いつかは丸亀城にも逢いに行かねば。香川再訪の口実をまたひとつ手に入れ、乗り換えのため坂出で途中下車。ホームで待つことしばし、流れる接近メロディー。瀬戸の花嫁の旋律が、これでもかと旅情を掻き立てる。

5月中旬の瀬戸内快速マリンライナー車窓から眺める讃岐富士
瀬戸は日暮れて、夕波小波。これから渡る瀬戸内海へ思いを馳せていると、来た道を引き返すように走りだす5000系。車窓には、こんもりとした特徴的な山容をもつ讃岐富士。

5月中旬の瀬戸内快速マリンライナーは予讃線から分かれ本四備讃線へと入りいざ本州を目指す
高架線の織り成す壮大なジャンクションを通過し、列車は瀬戸大橋線へ。ちなみにこの路線名は愛称であり、正式名称は本四備讃線。本州と四国、備前と讃岐を結ぶ路線。はぁ、もう堪らん。

5月中旬の瀬戸内瀬戸大橋線本四備讃線を駆ける快速マリンライナーで香川に別れを告げる
さすがは昭和末期開通の高規格路線。豪快な走りで北上を続け、いよいよ島から島へと渡る吊り橋へ。香川県、今回も善き時間を本当にありがとうございました。どうしても、海を隔てる別れには切なさが伴ってしまう。

5月中旬の瀬戸内二重構造の吊り橋下部を通る本四備讃線瀬戸大橋線車窓の下にはすけすけの橋げた越しに広がる瀬戸内海
ついに迎えた、その瞬間。車輪の刻む音がコンクリートの高架から金属へと変わったら、6連続する吊り橋に入った合図。上部は高速道路、下部は鉄道。そんな珍しい構造をした橋の開通を知らせるニュースを目にしたときは、それは幼心にも衝撃だった。

5月中旬の瀬戸内本四備讃線瀬戸大橋線を快走する快速マリンライナー車窓に広がる瀬戸内海の多島美
明らかに吊り橋を走っていることを感じる乗り心地、すけすけの橋からはるか下に覗く海。そんなここでしか味わえぬ乗車体験もさることながら、やはり胸を打つのがこの多島美。日本に、こんなうつくしいところがあるのか。そう素直に感動した、27歳の秋。それ以来、瀬戸内といって想起する僕にとっての象徴的な光景。

5月中旬の瀬戸内7年ぶりとなる岡山駅
この絶景を浴びるだけでも、渡る価値があると思える瀬戸大橋。こころを染める瀬戸内のうつくしさに心酔しつつ揺られること40分足らず、列車は終点の岡山に到着。

5月中旬の瀬戸内岡山駅に建つ桃太郎の郵便ポスト
駅前に出てみると、大掛かりな工事中。あれ、桃太郎がいない。せっかく岡山に来たのに、桃太郎の銅像がいないじゃん。7年ぶりのご挨拶を諦め反対側へと歩いてゆくと、そこには桃太郎が寝そべる郵便ポストが。ようやくこれで、岡山に来たという実感が湧いてきた。

5月中旬の瀬戸内岡山駅前商店街アーケードに揺れる巨大な桃
そういえば、自転車旅のときもあの子を見て岡山だ!と思ったんだった。懐かしい記憶を辿りつつ、駅前からのびるアーケードへ。入口に揺れるのは、巨大な桃。本当に、岡山といえば桃づくし。

5月中旬の瀬戸内岡山電気軌道路面電車の走る街
7年前に泊まったカプセルホテルはビルごとなくなっていたけれど、商店街や街の雰囲気はあのときのまま。路面電車の走る街は、例外なく良いところ。大通りを闊歩する岡山電気軌道の姿に、そんな僕の勝手な確信を重ねてみます。

5月中旬の瀬戸内岡山大通りを賑やかに走ってゆくおかでんチャギントン電車
懐かしいなぁ。この街での想い出に揺蕩っていると、背後から何やら賑やかな電車が。路面電車としては珍しいイベント列車、おかでんチャギントン電車。こんな工夫も、岡電らしくて面白い。

5月中旬の瀬戸内岡山大正12年築の岡山禁酒会館と岡山城西手櫓
ひっきりなしに往来する路面電車、マーカーランプが目を引く宇野自動車のバス。岡山に来た感を噛みしめつつ、岡山城目指して歩きます。途中の交差点では、大正生まれだという岡山禁酒会館の渋い建物と隣に並ぶ岡山城の西手櫓の印象的な光景が。

5月中旬の瀬戸内岡山住宅地に突如現れる岡山城の石垣
確か、こっちのほうだったよな。事前に眺めた地図を頼りに住宅街を進んでゆくと、大通りから建物に隠されるようにして佇む石垣が。

5月中旬の瀬戸内岡山広々としたお堀が印象的な岡山城
そのまま石垣を頼りに歩いてゆくと、突如現れる広いお堀。前回は後楽園側から入城したので、このお城らしい登場の仕方は僕にとっては新鮮な光景。

5月中旬の瀬戸内岡山城大納戸櫓の石垣
お堀に架かる目安橋を渡り、本丸内へ。そこで出迎えるのは、力強い表情を魅せる重厚な石垣。この櫓台の上には、かつて大納戸櫓が建っていたそう。

5月中旬の瀬戸内岡山城不明門
複雑に重なる石垣のうつくしさを眺めつつ、不明門へ。この先は、藩主が暮らす御殿のあった本段。護りのため普段は閉ざされていたことから、その名が付いたそう。

5月中旬の瀬戸内岡山城羽状の異名をもつ漆黒の威容を誇る雄姿
本段へと入ると、そこには御殿が建っていたであろう広々とした空間が。その最奥に聳える、威容を誇る天守閣。漆黒に彩られるその姿から、別名烏城とも呼ばれています。

5月中旬の瀬戸内岡山城令和の大改修を終え光り輝く金鯱越しに望む月見橋と後楽園
戦災により焼失してしまった、岡山城の天守閣。その後昭和41年に外観復元され、まもなく60年。3年前に令和の大改修を終え一新された展示を見つつ最上階へ。窓の外には、より輝きを増した金鯱越しに望む後楽園。鮮やかな緑と金色の対比の妙に、ハッと思わず息を呑む。

5月中旬の瀬戸内岡山城現存する月見櫓
天守閣からの鮮やかな展望を満喫し、そろそろ駅へと戻ることに。北側から下城しようと進んでゆくと、現存する岡山城の貴重な遺構である月見櫓が。

5月中旬の瀬戸内岡山城廊下門
天守脇の階段を下り、廊下門から外へ。敵を迎え撃つための上屋が設けられており、本丸の本段と中の段を結ぶ藩主専用の廊下としての役割もあったそう。

5月中旬の瀬戸内岡山城特徴的な形状を見せる天守閣の北側
ここから眺める天守閣は、他のお城には見られないちょっと変わった形。不等辺五角形をした石垣の上に沿うようにして建てられており、角度を変えるごとに表情も変わる複雑な構造美を魅せています。

5月中旬の瀬戸内岡山城旭川に架かる優美なカンチレバー橋月見橋
すぐ近くには、カンチレバートラスの優美な姿が目を引く月見橋。昭和29年に架橋されて以来、岡山城と後楽園とを行き来する人々を現役で通しています。

5月中旬の瀬戸内岡山城現存する2基の櫓のひとつである月見櫓
岡山城の建物で現存するのは、この月見櫓と先ほど通りから眺めた西手櫓のみ。完成後400年もの長きに渡り、城下岡山を見守り続けてきた生き証人。

5月中旬の瀬戸内岡山城黒板と白漆喰、金鯱の対比が美しい威厳ある天守閣
振り返り、もう一度眼にこころに灼きつける岡山城。漆黒の下見板、漆喰塗りの白い破風。重厚な屋根瓦には随所随所に金箔が張られ、そこに聳えたつ金の鯱。威容を誇る雄姿を西日が照らし、その威厳というものを一層増すかのよう。

7年ぶりに訪れた岡山の地。荘厳なお城との再会に、この地でのまた新たな想い出が刻まれるのでした。

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