懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 3日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 3日目 ②~

5月中旬の瀬戸内17年ぶりの尾道土堂渡し場に接岸する尾道渡船兼吉渡しのフェリー 旅行記

古き良き風情を残すアーケードで往時の記憶にこころを温め、千光寺山では初めての絶景に出逢い。17年ぶりに訪れた、尾道の街。懐かしく、新しい。またひとつ大切な想い出を胸へと刻み、そろそろこの街にも別れを告げることに。

これから渡るは、尾道水道を隔てたその名も向島。尾道とこの島を結ぶ航路は2つありますが、今回は千光寺から近く、そしてこれから向かう高速のバス停へも至近な尾道渡船を利用します。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりの尾道土堂渡し場から尾道渡船に乗船し向島へ
特に時刻表はなく、だいたい10分間隔で運行される小さなフェリー。軽自動車やスクーター、チャリンコとともに乗船。みんなが乗り込んだことを確認すると船尾のスロープが上がり、小さな船は対岸へ向け出航。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりの尾道尾道渡船兼吉渡しの小さなフェリーはあっという間に離岸し本州に別れを告げる
ゆっくりと、しかし確実に遠ざかる尾道の街並み。それが意味するのは、本州とのしばしの別れ。先ほど眺めた多島美も手伝って、久々の再会となるしまなみ海道への想いは高まるばかり。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりの尾道兼吉渡し尾道渡船の船上から眺めても川のように細い瀬戸内海の一部尾道水道
島から島へと、渡ってゆくのよ。旅情と郷愁を誘うあの歌を浮かべつつ渡る、尾道水道。そんな感傷に浸る間もなく、船は川ほどの幅しかない海原の中間点へ。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道へ尾道渡船であっという間の5分、向島兼吉へ上陸
本州の土堂渡し場から5分足らず、あっという間の短い船旅。フェリーは兼吉に接岸し、向島にいざ上陸。これから幕を開ける、島から島へと紡ぐ旅。そのことを想うだけで、あの旅の感動が甦る。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道へ向島に上陸し兼吉から向東バスストップへ徒歩で向かう
兼吉の船着き場から歩きはじめ、川沿いへ。いや、思い込みだと分かっている。分かってはいるのだが、ここが島だと思うだけで何となく景色や空気感までもが違うように感じてしまう。あの日感じたのと同じ気持ちを胸に、のどかな雰囲気漂う道を歩きます。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道へ向東バスストップに到着するせとうちバスしまなみライナー福山~今治線
船着き場からのんびり歩くこと15分、西瀬戸自動車道の向東バスストップに到着。ここから『せとうちバス』をはじめとする4社で運行する高速バス、しまなみライナーに乗車。ちなみにこのバスの始発は福山駅。尾道からは路線バスに乗り因島大橋で乗り換える方法もありますが、あまり接続がいいとは言えず雨さえ降らなければこの渡船ルートはかなりおすすめ。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナーは因島大橋を渡り向島から因島へ
ほどよく混雑するなか、景色が良いであろう進行方向左側に無事着席。次の向島BSで乗客を拾い走ることしばし、僕らにとっての最初の橋である因島大橋を渡りバスは因島へ。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナー車窓から望む完成当時世界最大の斜張橋である多々羅大橋
しまなみ海道の愛称で知られる西瀬戸自動車道。その名の通り自転車や歩行者は通行できませんが、歩道の併設される橋の部分だけは通行可能。長い長いアプローチをやっとのことで登りきり、橋上から壮大な展望を浴びたら再び島内の一般道へ。

そんな自転車旅とは打って変わって、島の高い部分を直線的に結ぶ高速道路。大きいはずの因島をあっという間に越え、生口橋を渡って生口島へ。海を見ながらの瀬戸田のデコポンジェラート、おいしかったなぁ。そんな記憶を辿っていると、行く手には竣工当時は世界最大の規模を誇る斜張橋、多々羅大橋が。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナーは多々羅大橋を渡り広島県から愛媛県へ
生口島と大三島を結ぶ多々羅大橋。ここが尾道市と今治市、すなわち広島県と愛媛県の境界。長い斜張橋を越え、1日ぶりとなる四国地方へ。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道しまなみライナー大三島バスストップ付近から眺める多々羅大橋
バスは一旦高速道路を下り、インターを出て大三島バスストップへ。ここまで島々を貫くように走ってきた西瀬戸自動車道。こうして一般道の空気感に触れ、ようやくあの旅の記憶に近いものが感じられたな。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道しまなみライナー車窓から望む想い出の島伯方島と鶏小島
再び高速道路に復帰し、しまなみライナーは大三島橋を通過し伯方島へ。

本州から島々の空気感を浴び、頑張って自分の足でたどり着いた想い出の地。宿で出逢った瀬戸内の味、翌朝に自転車で駆け抜けた風光明媚な穏やかな島。そんな回想に耽っていると、車窓には見覚えのある鶏小島が。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道連なる橋を駆け抜けた高速バスしまなみライナーはついに最後の橋である来島海峡大橋へ
伯方・大島大橋で懐かしの島に別れを告げ、バスは大島へ。緑に囲まれた高速道を走ってゆくと、ぱっと視界が開けふたたび海へ。

それと同時に視界に入る、細く長いアプローチ。しまなみ海道を自転車で渡るには、橋ごとに越えなければならいこのハードル。運動部未経験の運動音痴だったとはいえ、やっぱり二十代って二十代なんだなと改めて思い知らされる。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナーはいよいよ最後の橋である来島海峡大橋へ
そしてついに始まる、最後の渡橋。本州側から辿ってきたしまなみ海道、この来島海峡大橋が最後にして最大の橋。世界初の三連吊橋であり、その全長は4㎞以上。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナーは最後の島馬島を過ぎまもなく四国本島へ
1泊2日をかけ、最後のアプローチを登りきってこの橋にたどり着いたときの感慨たるや。はるか彼方まで延々続く白亜の吊り橋、パステルに霞む多島海。間違いなく、自分は自分の足でこの道を駆け抜けた。

あの日味わった、それまでの人生でも経験のない爽快な達成感。今思い出しても震えのくるほどの鮮烈な記憶を辿っていると、バスは最後の島である馬島を通過。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナー三連続く来島海峡海峡大橋の最後の橋を渡りまもなく四国本島へ
眼下には、この距離からでも潮の流れが見て取れるほどの海。鳴門海峡、関門海峡と並び、日本三大急潮のひとつに数えられる来島海峡。潮の流れが激しいときには、渦潮も現れるそう。

5月中旬の瀬戸内17年ぶりのしまなみ海道高速バスしまなみライナーで辿ったしまなみ海道も終わりを告げ四国本島上陸
向島BSから走ること50分、しまなみライナーは来島海峡大橋を渡りきりついに四国本島へ上陸。連なる島々を渡り終えたという感慨と、終わってしまったというちょっとばかりの感傷。

やっぱり高速バスって、速いんだな。これが今回、17年ぶりにしまなみ海道を渡ってみて感じたこと。島の高い部分をかすめる自動車道、その足元に宿る島々の空気感。もし時間や体力、気力が許すなら。この道を行くにはやっぱり自転車か原付が良さそうだ。

もしかしたら、あの旅で僕は計り知れない体験をしてしまったのかもしれない。四十代になったいま、こうして久々に訪れてみた想い出の道。あの鮮烈な記憶に触れ、経験することの貴重さを改めて強く強く思い知らされるのでした。

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