北東北 夏巡り ~漲る灯り、地の滾り。1・2日目 ①~

夜空に輝くバスタ新宿

2018年、夏。もう僕にとって無くてはならない存在となってしまった、ねぷた旅。2012年に初めて出会い、それから通うこと7回目。今年もこうして熱い津軽へと旅立てる悦びを溢れんばかりに抱え、夜空に輝くバスタ新宿へと吸い込まれてゆきます。

バスタ新宿発弘南バス津輕号青森駅行き
さすがは夏休み。座る場所もないほどに賑わうターミナルで、旅立ち前の混沌にしばし身を任せます。そしてついにそのときが。僕を夏へと連れて行ってくれる見慣れたカラーの新車が、幾多ものバスの合間を縫って入線します。

今回乗車したのは、『弘南バス』が運行する津輕号。前回乗車したときとは車両も変わり、座席の快適さは一層向上。ゆったりとした3列シートには前と側面を仕切るカーテンが設けられ、コンセントももちろん完備。シートピッチも十分で、夜行で青森入りなら僕としてはこれ一択。

バスタ新宿発の弘南バス津輕号で到着した朝の青森駅
22時過ぎに新宿を発ち、東北道をひた走ること7時間半。ついに僕の静かなる熱情を呼び起こす大地、津軽に到着。朝の空気に包まれた青森駅では、青空に映える赤い金魚ねぶたたちがお出迎え。

朝ラーのできる長尾中華そば青森駅前店
揺れる金魚ねぶたに早くも胸が熱くなったところで、まずは腹ごしらえ。青森と言えば!ののっけ丼にも心惹かれましたが、前回訪れた際に気になって仕方なかった『長尾中華そば青森駅前店』にお邪魔してみることに。ちなみに駅から徒歩1分、朝7時に開店するという夜行利用者にとっては非常にありがたいお店です。

長尾中華そば青森駅前店吊るされた青い金魚ねぶたと煮干しねぶた
食券を買い店内へと入ると、目に入るのが吊るされたかわいいねぶた。そうか、青い金魚(?)ねぶたなんてあるのか。なんてぼんやり見ていると、その中にスマートな魚体のものが。さすが煮干しラーメンの有名店、煮干しねぶたまで作るなんて。っていうか、煮干しねぶた、欲しい。

長尾中華そば青森駅前店こく煮干しラーメン
煮干しねぶたに心奪われていると、お待ちかねのラーメンが到着。こちらのお店には、スープの種類や味付け、そして麺の種類も選べるという多彩なメニューが揃います。

そんな中で今回僕が注文したのが、おすすめというこく煮干しラーメン。煮干しだしに鶏豚スープを合わせたというもので、新・津軽ラーメンと銘打たれています。

ちなみに煮干しラーメン、食べるのはこれが2度目。初めては東京のとあるお店で、その時の味がちょっとしたトラウマに。そして丼を見ると、やっぱり煮干し。香りから臭みは感じられませんが、銀色のきらきらが結構浮いています。

大丈夫かな、ちょっと寝不足だし、二日酔い気味だし・・・。と心配しつつもまずはスープをひと口。あれ!?臭くないのにすっごく煮干し!!控えめに言って感動するほどの、たっぷりとした煮干しの存在感。でも本当に、臭くない。

これまで味わったことのないスープに気圧されつつ、続いて麺を。今回は手打ち麺を選びました。若干太めで白い麺。表面はつるりとしたなめらかさがあり、もちっとした弾力とプリッとした歯ごたえがとても旨い。

汁麺汁麺汁具麺・・・。気付けばあっという間にスープまで完食。しまいには、何度も青森に来ていて何故今まで食べなかったのかと後悔するレベル。なんだろう、本当に旨い。強いて言うならば、青森らしい旨さ。

東京で食べたものは、煮干しの内臓の苦みエグみを存分に引き出しました♪というものでした。ですがこちらは全く違う。ベースにしっかりとした魚の旨味があるのに、そこに煮干しの青味がない。なのに香る、魚の香り。そこに動物のコクが加われば、旨くないはずがありません。

さすがは昔から焼き干しからだしを取っていた津軽。経験則として、本当に美味しいいわしだしの取り方が根付いているのでしょう。濃い=強烈、と勘違いしている昨今の東京とは一線を画す濃厚な旨味に、朝っぱらからすっかりやられてしまいました。

夏の青森青函連絡船八甲田丸と可動橋
いやぁ、本当に旨かった。どうしよう、煮干しラーメンに味噌カレー牛乳ラーメン・・・。青森に来た際の悩みがひとつ、増えてしまった。そんなラーメンの余韻に浸りつつ、足は自動的に女王へと向かいます。

夏の青森修復中の可動橋
北への大動脈として活躍した青函連絡船。鉄路を繋ぐことを使命としたこの航路を象徴付ける、この光景。使命を終えて早30年。年々朽ちつつあったこの可動橋ですが、貴重な産業遺産を残すべく現在補修工事が行われています。

夏の青空に映える海峡の女王八甲田丸
去年の晩秋以来の再会となる、海峡の女王。毎度同じアングルですが、これが一番僕の好きな姿。気高さすら感じさせる優美な船体は、未だ函館への未練を残しているよう。

夏の青森海峡の女王八甲田丸を眺めつつ石川さゆりの津軽海峡・冬景色を聴く
そしてもうひとつ、大事な儀式。黒く輝く歌碑へと立てば、あたりに響く切ないこぶし。誇らしげにJNRを掲げるファンネルを眺めつつ歌声を聴けば、無条件に涙が出そうになる。胸の深い部分をギュッと締めつけられ、ようやく本当に青森入りを実感するのでした。

夏の青森港の奥に横たわる黒々とした八甲田山
視線を横へとずらせば、穏やかに凪いだ青森港の奥に横たわる八甲田山。黒々としたその姿は、化粧を施した冬とはまた違う力強い美しさを見せてくれるよう。

青森ラブリッジを渡り海峡の女王八甲田丸を対岸から眺める
ラブリッジを呼ばれるウッドデッキの遊歩道で海を渡り、対岸へ。響く銅鑼の音、流れる蛍の光。長い汽笛が鳴り終えれば、黒煙を吐きつつ北の大地目指して静かに出港。女王のあまりにも活き活きとした姿に、在りし日の光景へと思いを馳せずにはいられない。

青い海公園のデッキから覗くテント内のねぶた
往時への憧憬にしばし心奪われ、ふと我に返り再び歩き出します。横を見れば、ずらりと並ぶ巨大なテント。その窓からは、青森の熱い滾りがほんの少しだけ見え隠れ。

8月2日開幕を控えた朝のねぶた
今日は8月2日。青森の誇るねぶたは、今日が開幕。そのときを間近に控え、各小屋には最終の作業に追われる人々の姿が。いつかは見てみたい。今度は津軽に4泊ほどせねば。

夏の青森善知鳥神社の白い鳥居
ねぶたの予熱を胸に、青森の街を歩きます。しばらく進むと、白い立派な鳥居が。ここ善知鳥神社は、青森市発祥の地とされる場所。このお宮を中心に、青森の町が形成されていったそう。

夏の青森善知鳥神社立派な拝殿でお参りを
去年に引き続き今年も善知鳥神社にお参りを。こうして何度もこの地を訪れることができるお礼を、感謝をこめて伝えます。

夏の青森善知鳥神社蓮の花咲くうとう沼
美しく蓮の花咲くうとう沼。かつては周囲20km以上もある大きな沼だったそうで、暴風雨に見舞われてもここは穏やかだったことから、特に漁師の信仰を集めたのだそう。

その後市内の川の流れが変えられ、次第に干拓されて今はここに小さく残るのみ。それにより生まれた土地は、県庁所在地となったこの地の営みを支えています。

八重山に始まり、東北で頂点を迎える僕の夏。これから味わう夏の予感に、すでに心はじりじりとした熱を帯びはじめるのでした。