湖畔の一軒宿で迎える爽快な朝。朝日に照らされ黄金色に輝く湖水を愛でつつ、金のにごり湯に身を沈めるという贅沢。肌に感じる大地の力と太陽の温もりを、五感を使い余すことなく取り込みます。
最高の朝風呂を心ゆくまで満喫したところで、朝食の時間に。朝ごはんはロビー横にあるレストランでのバイキングとなります。煌めく支笏湖を眺めつつ食べる、和の朝食。たらこに塩辛、肉じゃがに蕗の煮物。美味しいおかずと共にふっくらとしたご飯を頬張れば、自ずと一日の活力が体内から満ちてくるよう。
ひたすら怠惰と湯浴みを繰り返す、連泊という贅沢。一度これを味わってしまうと、取り返しのつかないことに。この日何度目かの入浴を終え、涼しい風の吹く湖畔へと下り冷たいクラシックをプシュッと開けます。
湖水を渡ってきた風を全身に浴び、喉に伝わる苦さを味わう。支笏湖ブルーとも称される穢れなき青さを湛える湖面を見れば、いつしか自分の内側まで漂白されてゆくような爽快さに満たされるよう。
この日は見ての通りの晴天。気温も昨日とは打って変わって暖かかったため、この宿の名物である天然露天風呂へと入ってみることに。水深は相変わらず浅いのですが、足元の砂利の隙間から滾々と湧き出る源泉に触れれば、大地の恵みと一体化するかのような独特の感覚に。
石積み越しに聞こえる、支笏湖の波の音。海とは違う控えめなその声を耳に感じつつ味わう、自然の産みだす天然の温もり。湖と全てを共にするというこの感覚は、丸駒温泉だからこそ味わえる唯一無二の体験。
思う存分自然との戯れを味わったところで、あっという間に夕食の時間。今日もお部屋には美味しそうな品々の並ぶお膳が運ばれてきます。
まずは前菜から。細切りにされたほたてはたらこと和えられ、甘さと食感が際立ちます。さんまは酢味噌で和えられ、程よくきいた酸味がさんまの旨さを引き締めます。鮭とばの和え物は初めて食べましたが、これもまた地酒に合わないわけがない。もずくのにこごりも食感が活かされ、つるりとした清涼感を口へと連れてきます。
お刺身はぼたん海老にほたて、かにやいくらといった北海道らしいラインナップ。どれも期待を裏切らない美味しさで、やはり北海道の海の幸は格別だと今一度実感。
たらばがにはぎっしりと身が詰まり、それだけでなくジューシーさと旨味もしっかり。皮までパリッと焼かれたにしんは香ばしく、噛めば心地よい脂とともに香りと旨味が広がります。
そして今夜のお鍋は、海鮮鍋。甘えび、鮭、かきにほたてとたっぷりの海の幸が入っています。程よく煮えたところで頬張れば、甘味と旨味の凝縮感が堪らない。海のエキスの染み出た薄味のだしを吸った野菜も、一層美味しいものへと変化しています。
〆にと運ばれてきたのは、海老天の巻き寿司。昨日の釜めしとはがらりと趣向が変わり、連泊しても全く違った美味しさを味わわせてくれます。
湖畔の一軒宿で過ごす静かな夜。そんな旅の幸せな時間のお供にと開けるのは、北の誉の北海羆純米酒。妙にリアルなラベルに惹かれ、思わず買ってしまいました。その絵の通り、きりりとしつつもしっかりと力強さを感じさせるお酒。
今宵も愉しむ、穏やかな湯浴み。星空と、空を切る航空機の流れるライト。対岸の灯りが煌めく様を、ただひたすらに湯に浸かりながら眺めるという贅沢。支笏の産む金色のお湯は、心の中まで黄金色に染めてくれるのでした。
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