うわ~、本当によく寝た。こんなにすっきりとした目覚めは、一体どれくらいぶりだろうか。いつもヤクルト1000にお世話になっている僕ですが、下部の湯がてきめんに効いたみたい。あの無色透明なお湯に、何が込められているのだろう。ここまでくると、ちょっとばかり怖くなってしまうほど。
爽快な気分でぬる湯にじっくり浸かり、この旅最後の下部の湯力を全身に補給したところで朝食の時間に。今朝もおいしそうな品々が運ばれてきます。
きんぴらや白和え、ふっくらした厚焼き玉子。手作りの温もりに溢れる品々とともに味わう、下部鉱泉で炊いた絶品ご飯。下部のお湯で空っぽになった心身に、和のやさしさが沁みわたります。
ずっとずっと来たいと思い続けてきた、下部温泉。その初めてが橋本屋さんでよかった。お湯良し、味良し、そして何より、お宿の雰囲気が温かい。こんなに体も心もほぐれたのは、下部の湯とともにこのお宿のもつ力のおかげに違いない。
またひとつ、近場に危ない宿を見つけてしまった。今度来るときは、ぜひ3泊以上だな。そんな危険な予感を噛みしめつつ川沿いを歩くこと15分、下部温泉駅に到着。
これから目指すは、身延山。普通列車でもすぐの距離なのですが、ちょうど良い時間に普通がなかったため特急を利用することに。とはいっても料金は330円と良心的なため、比較的気軽に乗れるのはありがたい。
進行方向右側の空いてる席に座ると同時に、列車は静岡目指して出発。しばらくすると、甲府盆地から流れ出た富士川が寄り添うように。
特急列車に揺られることあっという間の9分、この路線名の由来ともなった身延駅に到着。大きな駅舎と駅前の通りに並ぶ商店が、このあたりの主要駅であることを感じさせます。
駅前のロータリーで待つことしばし、『山梨交通』の身延山行きバスが到着。国際興業塗装が増える中で、大きなぶどうが印象的なオリジナルカラーに思わず嬉しくなってしまいます。
駅から走ること12分、身延山バス停に到着。今回は行程の都合で終点まで来ましたが、麓の総門から門前町が続いているため時間に余裕があればそこから歩いてみるのも楽しそう。
朝の静かな門前町を抜けると、参拝者を出迎える巨大な三門が。120年近く時を経た木造建築からは、何とも言えぬ迫力が滲み出るよう。
それにしても、今年は暖かすぎる。12月だというのにまだ冬は訪れず、まだまだ秋の名残りの中といった感覚。今日もそんなぽかぽかとした陽気が心地よく、あと数週間で今年を終えるということが信じがたい。
三門をくぐると空気は一変、凛とした静けさが支配するように。両脇を杉並木に護られた荘厳な参道を、これから待ち構える道のりへの覚悟を決めつつ歩きます。
そしてついに現れた、目の前に立ちはだかる菩提梯。あぁ、これからこれを登るのか。それがこの石段を目の当たりにした時の、僕の素直な感想。この距離で100mも登るというのだから、その大変さは容易に想像できてしまう。
もう一度覚悟を決め、いざ石段へ。それにしても、一段一段が高い。最初の踊り場に着くころにはすっかり息も切れ、本当にたどり着けるのかと弱気になってしまう。
それでも頑張って歩みを進め、半ばで振り返ればこの光景。深い緑越しに望むうつくしい山並みは、自分の足で登ってきた者へのご褒美そのもの。
一歩一歩踏みしめること287段、息を切らし汗をかきつつ何とか上まで到着。しばしベンチに腰掛け、落ち着いたところで本堂にお参りを。
ここ身延山久遠寺は、日蓮宗の総本山。境内には新旧様々な建物が並び、その規模の大きさに圧倒されます。
朱塗りと見事な彫刻が美しい祖師堂は、130年以上も前に建てられたものだそう。撮影禁止のため写真はありませんが、内部にも荘厳な装飾が施されています。
その隣には、同時期に建てられた御真骨堂の拝殿が。こちらも緻密な彫刻が施され、その美しさに目を奪われます。
絢爛な建物が並ぶ中で、重厚感を漂わせる仏殿。こちらは昭和初期に建てられたものだそうで、時を経た木材と漆喰の白との対比が印象的。
普段あまり仏教に触れることのない僕にとって、この規模感には気圧されるばかり。なんだかすごいところだな。そんな印象を受けつつ、山頂を目指すべくロープウェーのりばへと向かいます。
山頂からは、素晴らしい展望が楽しめるらしい。それを楽しみに287段の石段を登ってきましたが、なんとこの日はメンテナンスのため運休。いやぁ、やってしまった。出かける前にホームページを確認しておくべきだった。
まあでもこれはこれで、再訪の口実ができたというもの。山頂からの大パノラマは次回の宿題とし、甘露門から下山することに。
あの菩提梯を下ると確実に膝が笑うので、帰りは比較的ゆるやかな女坂を歩くことに。
杉木立から漏れる心地よい陽射しを浴びつつ歩き、それほどダメージもなく無事下山。三門前には、行きには姿の見えなかった3頭の柴犬が。
頂上からの眺望を楽しみに訪れた身延山。今回はそれは叶わなかったけれど、かわいいご褒美三人衆の姿にやっぱり今日来てよかったと思えてくる。さあこれから、急遽の予定変更だ。スマホ片手に時刻を調べ、新たに追加した目的地目指して先へと進むのでした。
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