釧路湿原のあまりの雄大さをこころに刻み、ノロッコ号で釧路駅に無事帰還。それにしても、今日は朝からよく歩いた。ホテルに戻り一旦休憩し、良き時間になったところで繁華街の末広町へと繰り出します。
縦横に走る道には居酒屋さんや炉端のお店が並び、どこに入ろうかと目移りしてしまう。昨日はこれぞ炉端という情緒のなか呑んだので、今夜は色々なメニューを楽しめそうな『くし炉あぶり家』にお邪魔してみることに。
まずは今日の歩き疲れをクラシックで潤し、福司に切り替えたところで注文していたぼたんえびのお刺身が到着。早速、見るからに旨そうな艶やかな身をひと口で。
ぶりんと心地よい食感ののち、とろりととろける至福の瞬間。ぼたんえびだからこその甘味がぶわっと口中を満たし、もう笑みをこぼす以外に何もできない。続いて、残された頭をちゅっと吸ってみる。うわぁ、ミソが甘くて濃厚!臭みは全くなく、酒を飲めと言わんばかりの旨味に溺れてしまう。
久々に再会した新鮮な海老の旨さにエンジンもかかり、福司の減る速度が増したところでカキフライが。道東産のかきを使用したという丸々としたきつね色、その見た目の通りものすごく身が詰まっている。
箸で持つと感じる確かな手ごたえ、その重みに期待しつつ揚げたて熱々をはふり。なんだろう、一線を画すこの存在感。とろとろジューシーなものとは明らかに雰囲気を異にする、しっかりとした凝縮感。ふっくらほっくりとした身には香りと旨味が詰まり、このひと粒のなかに無限の大海が広がっているよう。
続いては、道東産の青つぶ焼きを。中のおつゆをこぼさぬよう、そして肝がちぎれぬよう竹串で慎重にくるり。ちゅるんと取れた成果を口へと運べば、プリプリとした身に宿る心地よい磯の気配。甘めの生姜醤油がまた絶妙で、貝からきゅっと飲めばすぐさまおちょこに持ち替えたくなる。
いやちょっと、今夜も福司おかわりだわ。そんな幸せな宴の〆にと頼んだのは、道東産のタコザンギ。カリッとした衣の下には、ぶりっぶりの弾力ある身。気持ち濃いめの味付けがたこの甘味や旨味を引き立て、吞兵衛殺しの間違いない旨さ。
旨い肴と旨い酒で、お腹いっぱいこころも一杯。今宵もすっかり満たされ、ちょっとばかり遠回りをしてホテルまで帰ることに。
なんだかこの2日で、すっかり好きになっちゃったな。ほろ酔い気分で眺める夜の釧路、その輝きが僕のこころの深い部分へと沁みてゆく。
朝に歩いた釧路川も、夜になればがらりと変貌。橙色のランプが夜霧に煙り、しっとりとした異国情緒が夜の川辺を包み込む。
熱帯夜とはほど遠い涼しい夜風、ライトアップされ幻想的な姿を魅せる幣舞橋。その輝きを穏やかな水面にきらきらと落とし、夜の港町を包む世界観を一層深くする。
川岸で開催されている立ち飲みイベントに惹かれつつ、誘惑を振り切り幣舞橋のたもとへ。明日はちょっと早起き、飲みすぎ危険。出逢えるであろう道東の景色に期待を寄せつつ、酔い覚ましにとひとりぶらりと歩きます。
幣舞橋をくぐり抜け、ふたたび静けさを取り戻した夜の岸辺。遠くなりゆく賑やかさを背に、夜の港へと溶けてゆく。
本当に、いい夜だ。街を煙らすしっとりとした夜霧、その涼やかさを肌に浴びつつ眺める街灯の煌めき。夢見心地とは、きっとこういうことを言うのだろう。
ずっとこんな時間が続いてくれれば。そんなわがままを飲みこみ、ホテルに戻りシャワーですっきり。あとはもう、更けゆく夜に身を委ねるだけ。そんな時間のお供にと、国士無双を開けてみる。
きりりと辛口ながら、地酒らしい旨さを感じる国士無双。好きな酒を傾けていると、窓の外から漏れ聞こえてくる雨の音。
本当は、今日は一日雨まじりのはずだった。ここまで持ってくれてありがとう。勝手な思い込みだけれど、なんだか釧路に迎え入れてもらっているようで。そんな感覚に満ちた今日一日を、雨粒の声を聴きつつひとり静かに反芻するのでした。
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