想い叶って花山へ ~春へと移ろうみやぎ旅 5日目 ⑤~ | 旅は未知連れ酔わな酒

想い叶って花山へ ~春へと移ろうみやぎ旅 5日目 ⑤~

3月下旬春の松島御水主町民家に咲く紅白の梅 旅グルメ

ひっそりとした風情漂う円通院を後にし、そろそろ帰路へと就くことに。本当に、今回も濃い旅だった。西に傾く陽射しに旅の終わりの感傷を重ねつつ、艶やかに咲く梅を見上げます。

3月下旬春の松島軒端の梅
花山はまだ残雪があったというのに、松島にはもうこんなに春が満ちている。手入れされた端整な庭木、すっくとのびる杉。梅には紅白の花弁が咲き乱れ、温かい色をした青空がすべてを包み込む。

3月下旬春の松島三聖堂を彩る紅梅
茅葺屋根の渋さに彩りを添える、見事な紅梅。これまでは道を歩いていて咲いているのを見つけ、あぁきれいだなとしか思わなかった。でも今日塩竈と松島の梅に触れ、この花に対する印象が変わった。梅って、こんなに可憐でうつくしい花だったのか。

3月下旬春の松島去り際にもう一度青い海を眺め別れを告げる
この感覚は旅先ならではのものなのか、それとも歳を重ねた結果なのか。旅を重ねるごとに感嘆することが増えた、自然の美。うららかな陽気のなか咲く花のうつくしさ、そしてこの海と空の青さをこころに刻み、そろそろこの地を離れることに。

3月下旬春の松島海岸駅
松島海岸駅へと向かうと、がらりと姿が変わっておりびっくり。しばらく来ぬ間に、カフェやお土産やさんの入る和モダンな駅舎に生まれ変わったようだ。

3月下旬春の松島海岸駅に停車中の仙石線205系仙台・あおば通行き普通電車
ホームには、すでにこの駅始発の電車が停車中。交流電化の東北地方で、ここだけぽつんと直流電化を貫いている仙石線。そのため首都圏から転属した電車が余生を送るのが通例だったが、もうすぐここにも新型車両が訪れる。

3月下旬春の仙台西日に染まるオレンジ色の特徴的な駅舎
もしかしたら、これが最後の乗車になるかもしれない。高校三年間、通学の想い出が詰まった205系。往時の想い出を呼び起こす慣れ親しんだ電車に揺られること40分足らず、仙台に到着。

3月下旬春の仙台うまい鮨勘名掛丁支店
さすがは日曜日、多くの人でごった返す駅でお土産を購入。あとはもう、荷物抱えて新幹線に乗るだけ。そんな飲んだくれる準備を万端に整えたところで、この旅最後のグルメを味わうべく『うまい鮨勘名掛丁支店』にお邪魔します。

冷たいビールで歩き疲れた体を潤したところで、まずは宮城県産の石鯛から。もっちりとした身質に宿る白身ならではの滋味と、ちょうど良い塩梅の脂が美味。大好物の活つぶはこりこりと歯ごたえがよく、ふんわり香る磯の風味が地酒にぴったり。

お気に入りの筋子巻きをつまみにちびちびやりつつ、続いて春光三貫盛りを。もちもちと上品な旨味のめばる、脂と甘さが魅力の金目鯛。ぽん酢で味わうあいなめは、じんわりと広がる深い旨味が堪らない。

お寿司ばかり食べているとあっという間に満腹になってしまうので、ここでつまみの海老と納豆のお揚げ焼きを追加。これがもう、吞兵衛殺しの大正解。

さいの目の山芋と海老をひきわり納豆や明太子で和え、揚げに詰めてパリッと焼いて長ねぎのしょう油和えを載せたもの。火の入った山芋はほっくりと、明太はちょうど良いミディアムレア。それらを納豆の旨味がぐいっとまとめ、気をつけないとこれだけでいくらでも呑めてしまう。

時間的にも、お腹的にもそろそろ着陸態勢。〆の流れにとまず選んだのは、まぐろ三昧。ねっとりとした身質に強い旨味を宿す赤身、何年ぶりに出逢えたかと思うような理想的なグラデーションを描く中とろ。そして大とろは、まったく筋の入らない見事なサシ。本当に、こんな旨いまぐろどれくらいぶりか。写真を撮らなかったことが悔やまれる。

そして最後は、大好物の2点で〆ることに。北海道いくら軍艦は、ぷちっとした粒に満ちる濃い旨味。筋子派と自称していても、これはまた違った魅力なんだよな。そして宮城の誇る豊かな漁場、金華産のうに軍艦。頬張ればとろりと溶ける儚さ、それと相反するように長く続く甘味や磯の風味の心地よい余韻。

3月下旬春の仙台うまい寿司を味わいほろ酔い加減で歩くハピナ名掛丁
結局やっぱり、仙台に来たらうまい鮨勘なんだよな。高級店やこだわりの店は、探せばきっとたくさんあるだろう。でもなんだろう、僕にはあのお店がしっくりくる。ほどよいお値段で好きなものをぱくぱくつまめる。安定の鮨勘にすっかり満たされ、もう思い残すことなどありはしない。

3月下旬春の仙台夜空に輝く仙台駅
久しぶりにしっかりと堪能した、仙台の街。せりやもうかの星の旨さにやられ、至極の牛たんに溺れうまい寿司をたらふく味わい。やっぱりこの街はすげぇや。帰りにちょこっと寄るだけではもったいない。改めて仙台の魅力を思い知り、夜空に輝く駅舎へと吸い込まれます。

3月下旬春の仙台駅に入線する東北新幹線E6系こまち号東京行き
今回も、本当に濃く豊かな旅だった。9年ぶりに満喫した仙台の夜に始まり、18年来の想いが実り訪れることのできた佐藤旅館へ。奇跡の復活を遂げたその宿には、温湯のぬくもりだけではなくご主人の温かさが込められていた。

この旅を続けていると、どうしても対峙せざるを得ない切なさ。おいしかったあのお店、善き時間を過ごしたあの湯宿。そんなかけがえのない想い出の場所が、ひっそりと消えてゆく。

仕方のないことだとは解っている。でもどうしても、気持ちがついていかないこともある。徒歩でしか辿り着けない、正真正銘のランプの宿。川沿いのあの巨大な露天には、もう浸かることはできない。

そんな未曽有の大地震を経てもなお、再開を果たした山間のいで湯。もう一度灯った火が消えぬように僕ができること、それはこうして実際に足を運んで泊まるだけ。

山の湯宿が好き。そんな嗜好を形づくった想い出の旅。その地への再訪を経て、改めてこの趣味の罪深さを思い知る。何の足しにもならないかもしれないけれど、僕のできる形で続けていこう。そんな大義名分を自分に与え、旅することへの想いを改めて強めるのでした。

想い叶って花山へ~春へと移ろうみやぎ旅~
3月下旬残雪の花山温湯温泉佐藤旅館夕暮れ迫る部屋
2025.3 宮城
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1日目(東京⇒仙台)
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3日目(温湯温泉滞在)
4日目(温湯温泉滞在)
●5日目(温湯温泉⇒仙台⇒塩竈⇒松島⇒仙台⇒東京)
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