いよいよ約半年振りに、貴婦人と呼ばれるSL C57と再会。これまであまりSLに興味が無かった僕を、一気にSLの虜にしてしまった、言わば初恋の相手。
今回は紅葉のヘッドマークをつけていました。雨に鈍く光る車体がなんともいえず、かっこいい。
今回は銀色に装飾された、特別なデフレクター(除煙板:空気の流れを作り、煙をスムーズに後方へと流すための板)を付けていました。
SLにはあまり詳しくはないのでよくわかりませんが、多分こんな装飾をしたデフが過去に実在したのでしょう。
これが先ほど會津酒造歴史館で購入した、「宮泉 會津 金寿」。
若干黄み掛かった色で、すっきりな辛口、でも香りの良い美味しいお酒。これをお供に新潟までのロングランを楽しみます。
すっかり刈り取りの終わった田んぼの中を、快調に走り出します。6月に来たときとは全く違う景色。
今日は寒く、湿度も高いので、煙がすごいことになっていました。水蒸気だけではなく、黒煙も豪快に吐いています。
日によって、黒煙をほとんど出さない日もあるので、沿線で撮影していた人たちにとっては良かったのではないでしょうか。黒煙あってこその、SLです。
発車時に大量の水蒸気を吐くので、数秒後にはご覧のような霧の中。電車も、ディーゼルカーも真似できない、SLが生きている証です。
喜多方を過ぎるといよいよ山越え。雪と最後の紅葉が、北国の初冬を演出します。
うっすら雪化粧をした阿賀川。これから本格的に冬へと向かう、なんとも言えない寂しさが伝わってきます。
この季節、だいぶ日も短くなってきました。出発して1時間半ほどで日暮れを迎えます。
もうすぐ漆黒の闇に包まれようとする阿賀川の流れ。世界がだんだんと色を失っていきます。
夕暮れ前の野沢で小休止。ここまで来るとさすがに寒い。SLも雨に凍えた体をゆっくり休めます。
白熱灯に照らされた機器類。全てが意味を持つ、まさに「操縦席」という表現がピッタリの空間。
雨に黒光りする動輪。太陽に輝くSLもいいですが、どんよりとした空の中力走する、そんなSLも魅力満点。
日はとっくに落ち、まもなく漆黒の闇に包まれます。ここからは「夜汽車」の旅となります。6月に来たときには味わえない、初の体験。
雪の積もる国道と併走します。国道のオレンジ色の光が車窓をしばし、照らします。闇を切り裂く汽笛の音が哀愁を誘います。
大正ロマン風に改造された客車。夜になってこそこの真価を発揮します。白熱灯色の照明と、木目の壁、赤い座席がとてもいい雰囲気。
当時はおしゃれな車両はありませんでしたが、昭和40年代まではこんな客車旅が当たり前だったんですね。
津川に着く頃にはもう真っ暗。ヘッドライトが闇を照らします。こんな雰囲気のあるSLを初めて見ました。ここだけ昭和にタイムスリップしたかのような光景。
闇に浮かぶ運転台。SLの黒のボディーは周りの闇に溶け、窓だけが幻想的に光ります。
この世界感、もうなにも言うことができません。この趣味が無い人でも、何か感じるものがあるのではないでしょうか。そう、心を絞めるような何かが。
今までにはない、感傷的な列車旅を演出してくれた貴婦人とも、ここ新潟でお別れ。
ここに立って3度目。毎回思うことがあります。「力走お疲れ様。そして、また逢いに来ます」
帰りは新幹線で一路東京へ。新幹線の写真を掲載したくないほど、ノスタルジックな旅でした。
(今回はフラッシュを焚くと雰囲気が伝わらなかったため、手ブレだらけの写真になってしまいました。写りはよくありませんが、その空気感を感じ取っていただければ嬉しく思います。)
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