艶やかに花咲く春色のお社に別れを告げ歩くこと20分、駅を越えた先にあるマリンゲート塩釜に到着。目の覚めるような空色、それを映し青く染まる穏やかな海。今日は良い航海になりそうだ。
1階のカウンターで予約していた乗船券を受け取り、いざ岸壁へ。『丸文松島汽船』のはやぶさに乗船し、海路で松島を目指します。
初めて乗る逆ルート、そして同じく初めてとなる中型船。松島湾の新たな表情との出会いの予感に心を躍らせていると、ほどなくして松島目指して出港。
穏やかな塩釜港をゆっくりと航行するはやぶさ。デッキで海風に吹かれていると、岸壁には日本有数のまぐろ水揚げ量を誇る塩竈市魚市場が。
塩釜港を抜け、速度を上げゆく遊覧船。全身を撫でる温かい海風、足元から聞こえる波を蹴る音。春の陽射しを受けた海面はきらきらと輝き、描かれる航跡に船でしか味わえぬ歓びというものを噛みしめる。
船は塩釜港を抜け塩釜湾へ。すると現れる、白い岩盤が松を頂く特徴的な島影。その隣には、延々と竿が連なる海苔の養殖場。養分をたっぷり含むこの海域で育った海苔、きっとおいしいんだろうな。
もともとは陸地であったものが、海面上昇により湾となった松島の海。海や空の青、島の白、そこにしがみつくようにして生える松の蒼。独特な景観を形作る島々の合間を、縫うようにして進みます。
波しぶきが激しくなってきたため、船内へと移動。これまで乗った大型の船とは視座の異なる、より海面や島々を身近に感じられるこの距離感。奇岩仁王島も、この近さで眺めることが。
海の浸食により、多様な形に削られた島や奇岩。この鐘島は、4つの海蝕洞に波が当たり鐘に似た音が響いたことからそう名付けられたそう。
左舷側へと目をやれば、西日を受けてきらめく海。穏やかな松島湾を染める黄金色が、胸の奥を満たしてゆく。
うららか。そんな言葉が似合う情景にこころを染め視線を戻せば、青い海に浮かぶ牡蠣筏。養分豊富なことが色からもわかる松島の海、ここで育った牡蠣の旨さは間違いない。
2階のデッキからとは趣を異にする、船窓越しに望む松島。その移ろいはスクリーンを眺めているかのように感じられ、縁取られた絶景はより印象深いものに。
塩釜港から緩急を交えて多島美を満喫すること40分、船のような小島に乗った五大堂が見えればまもなく接岸。
今回初めて辿った塩竈から松島への海路、より間近に感じられた中型船ならではの視座。そして何より、今までで今日が一番晴れている気がする。
胸のすくような鮮烈さ、そこに浮かぶ独特な島影。日本三景松島は、やっぱり海から眺めてみなければ。青さと煌めきに満ちた海旅が、また新たな想い出として胸へと刻まれるのでした。
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