船旅への衝動 ~果てなき航跡追い求め 3日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

船旅への衝動 ~果てなき航跡追い求め 3日目 ①~

8月下旬太平洋フェリーいしかり吹き抜けのロビーを満たす朝日の輝き 旅グルメ

大海原の上で迎える穏やかな朝。いやぁ、よく寝た。なぜこうも船上ではよく眠れるのだろうか。そんなすっきりとした心持ちに包まれつつロビーへと向かえば、3層吹き抜けを満たす朝日の煌めき。

8月下旬太平洋フェリーいしかり本州と北海道の間に広がる太平洋も今日はものすごく穏やか
デッキに出て、全身に受ける太陽の眩しさ。あぁ、こんな時間がずっと続いてくれたら。そんな願いなど叶うわけがないと知りつつも、かけがえのないこの瞬間にどうしてもそう思えてしまう。

8月下旬太平洋フェリーいしかり朝日に照らされた白と青のファンネル
青空と白い雲、凛と立つ巨大なファンネル。この道中、幾度も見上げたこの雄姿。また逢えるその日まで。この航海の記憶を胸に灯しつづけるために、眼にこころに灼きつけておこう。

8月下旬太平洋フェリーいしかり太平洋にくっきりと残してゆくその航跡
名古屋から、太平洋に描いてきた遥かなる航跡。いしかりが刻んだ白さを、深い青が消してゆく。そんな姿をこうして眺めていられるのも、あと数時間になってしまった。

8月下旬太平洋フェリーいしかりデッキで船旅の感傷に浸りその余韻に包まれつつ朝食を
陸も見えず、電波も届かず。たぶんもう、本州を抜けて北海道の手前まで来ているのだろう。そう思うと名残り惜しくて。デッキでそんな感傷にひととおりこころを焦がしたところで、船内へと戻り朝食を。

せっかくなら全国区のものではなく東北のメーカーをと、ツルハドラッグで見つけたシライシパン。仙台はジョウセンの味噌を使ったツナマヨパン。まろやかなツナマヨにコクや深み、そしてちょっとした塩分を与える味噌の存在感が堪らない。

そしてお隣、岩手の岩泉牛乳を生地にもクリームにも使用した岩泉牛乳パン。ふんわりとしたパンに香るやさしいミルクの風味が、なんとなく郷愁を誘うおいしさ。

8月下旬太平洋フェリーいしかり朝日に煌めく太平洋を眺めながらの贅沢な朝食
そんな地元の味をより贅沢なものにしてくれるのが、この船窓。朝日に照らされ、おだやかにうねる青い海。揺れとまでは感じない程度、このゆったりとした乗り心地の記憶がまた僕を船旅へと誘うのだろう。

8月下旬太平洋フェリーいしかりはついに本州を離れ北海道に向け太平洋上を航行する
豊な朝ごはんをのんびり味わい、自室に戻ることに。愛知から始まり、静岡神奈川東京千葉茨城福島岩手青森とたどってきたこの航海。延々連れ添ってきた本州に別れを告げ、船はいよいよ北の大地へ。

8月下旬太平洋フェリーいしかり2泊3日を過ごし愛着の湧いた自室に別れを告げる
今回初めて利用したS寝台。2段寝台のあの秘密基地感も捨てがたいが、ちょっとプラスするだけでこのゆとりは魅力的だった。そんな今回の船旅を快適に過ごさせてくれた自室とも、お別れの時間。2泊3日を過ごしすっかり愛着の湧いてしまった空間に再会を誓い、荷物をまとめてデッキに向かいます。

8月下旬太平洋フェリーいしかりデッキに出れば苫小牧港がもうすぐそこに
甲板で北の大地がゆっくりと迫りくる様子を見てやろう。そう思い外に出てみれば、その予想は外れもう苫小牧港は眼前に。順調な航海により、少し早めに着いたのか。

8月下旬太平洋フェリーいしかりデッキで苫小牧港入港の様子を見守る船客
それにしても、今日の苫小牧は8月とは思えぬ涼しさ。デッキに佇みこうして海風を浴びていると、半袖では肌寒いと思えてしまうほど。天候のせいもあるだろうが、日本って本当に広いんだな。

8月下旬太平洋フェリーいしかりデッキから眺める苫小牧港フェリーターミナル
1,330㎞を紡いできたこの船旅も、もうまもなく終わりを迎える。ゆっくりと、しかし確実に接近してくる港の情景。その瞬間を迎えることが嬉しくもあり、それ以上に切なくもあり。

8月下旬太平洋フェリーいしかりは苫小牧港のボラードに係船索が繋がれ北の大地北海道と結ばれた
1都8県をなぞってきた海路も完結し、ついにたどり着いた最後の1道。海から引き上げられたロープが係船杭に繋がれ、いしかりはついに北海道と結ばれる。

8月下旬太平洋フェリーいしかりはもうまもなく北の大地北海道は苫小牧港に接岸
ゆっくりと丁寧に、その巨体を北の大地へと寄せてゆくいしかり。その様子を、感傷に染まりただただ見つめる。そしてついに、音もなく無事接岸。海に浮かぶ巨大な建造物は、遥かなる航跡を刻み本当にここまで来てしまった。

8月下旬太平洋フェリーいしかり徒歩下船開始までしずかなパブリックスペースで名残を惜しむ
終着地への入港という特別な儀式を見届け船内へ。そう急ぐ旅でもない。みんなは下船口に並んでいるけれど、僕はこの静かな空間でこの船との逢瀬の名残りを噛みしめよう。

8月下旬太平洋フェリーいしかりは1,330㎞の海路を紡ぎついに終着地苫小牧港に到着
そしてついに迎えた、下船のとき。長い航路を紡いできたいしかりは、旅客と車両を吐き出しほっとひと息ついているに違いない。今回も、本当に善き航海をありがとう。太平洋フェリー、また必ず逢いに来ます。

8月下旬太平洋フェリーいしかりから下船し1年ぶりとなる苫小牧港フェリーターミナルから歩き出す
時刻はもうすぐお昼どき。当初は目的のお店までバスで向かおうと考えていましたが、この涼しさなら苦もなく歩けそう。急遽予定を変更し、海天丸目指して歩きはじめます。

8月下旬太平洋フェリーいしかりを下船し海天丸に向かったところ臨時休業で落胆しつつ歩く港湾地帯
前回に続き、今回も北海道滞在は数時間。そんな短いなかでお寿司を味わうべく意気揚々とお店を訪ねてみると、なんと臨時休業。定休日も調べていったけど、そこまでは確認しなかったな・・・。

8月下旬涼しい苫小牧曇天に染まる漁港の情緒
まあ仕方がない。もう1箇所あてはある。落胆しつつそう自分を励まし歩く、港湾沿いの道。遠くまで見えているのに、なかなか進まない。心細さすら感じる殺風景な区画を抜けた先に現れた漁港の姿に、思わずほっと胸をなでおろす。

8月下旬涼しい苫小牧7年ぶりとなる海の駅ぷらっとみなと市場へ
フェリーターミナルから自分を鼓舞しつつ歩くこと45分、『海の駅ぷらっとみなと市場』に無事到着。ここは初めて太平洋フェリーに乗ったときに訪れた想い出の場所。とりあえず、開いててよかった。

8月下旬涼しい苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場8年ぶりとなるみなと食堂
2棟ある建物には、海の幸を食べられるお店がいくつも。ひととおり市場内を見て歩き、前回も訪れた『海鮮みなと食堂』にお邪魔することに。

8月下旬涼しい苫小牧海の駅ぷらっとみなと市場海鮮みなと食堂時価のおまかせ丼
値段の違うおまかせのどんぶりが3種類のほか、好みのネタを選べる海鮮丼や刺身定食も。そのなかで今回は、11種盛りのおまかせ丼を注文。前金で支払い待つことしばし、10分ほどで着席すればすぐにどんぶりが到着。

きめ細やかな本まぐろの赤身、とろりと脂の甘さの広がるとろ。かんぱちは歯ごたえしっかり脂ものり、甘いほたてやしっとりとしたかにも北海道らしくて堪らない。

おいしいお刺身とともに酢飯もどんどん進み、あっという間に残すところあとわずか。〆にと残しておいたのは、艶やかなぱっつぱつの球体に旨味の凝縮されたいくら、そして甘くとろりと消えてゆく礼文の生うに。名残惜しくも大好物2種を噛みしめ、大満足でお店を後にします。

8月下旬涼しい苫小牧出光カルチャーパークを抜け駅を目指す
時価というこのどんぶり、この日はこの内容とボリュームで税込3,800円。怪我の功名。海天丸にはふられたけれど、その結果こんな海鮮丼を味わえていいほうに転んでくれたな。

8月下旬涼しい苫小牧出光カルチャーパークの植物園サンガーデン
海の幸を満喫するという北海道でのミッションを無事完遂し、駅方面へ。少し待てばバスもありましたが、せっかくなので歩いてゆくことに。

8月下旬涼しい苫小牧出光カルチャーパーク苫小牧で見ることのできない植物の植えられたサンガーデン
ぷらっとみなと市場から北上し、芝生や池の整備された出光カルチャーパークへ。サンガーデンと名付けられた温室には、苫小牧では見られないという植物が植えられています。

8月下旬涼しい苫小牧出光カルチャーパークに生える北の大地らしい白樺の木
温かい温室内で豊かな緑を浴び、ふたたび涼やかな外へ。なだらかな小山の一角には、北海道らしい白樺の木が。ここにきて、ようやく北の大地まできたという感覚が芽生えてくる。

8月下旬涼しい苫小牧保存された王子製紙軽便鉄道の蒸気機関車と貴賓車
緑豊かな都市公園を抜け、大通りを歩いて駅方面へ。そうだ、その前にあそこに立ち寄っておこう。そう思い見にきたのが、かつて王子製紙軽便鉄道を走っていた保存車両。明治から戦後まで、この小さな列車が苫小牧と支笏湖を結んでいました。

8月下旬涼しい苫小牧駅
出光カルチャーパークや王子製紙を経てのんびり歩くこと30分ちょっと、苫小牧駅に到着。ここからは、次の船に向けた買い物の時間。駅前のドン・キホーテを眺め、その前から無料の送迎バスに乗りイオンモールへ。

海鮮丼食べて、公園や軽便鉄道を見て。北海道まで来てやったことといえば、それくらい。連日の猛暑で、ついに脳みそ溶けたか。我ながら唖然とする行程ながら、それでも愉しいのだから不思議なもの。今宵のアテをいろいろ見繕い、こんな旅も善いものだと静かなる悦びに浸るのでした。

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