明治から大正にかけての建物に宿る往時の美意識に触れ、再び沼田の街歩きへ。すぐ裏手の路地には、味わい深い蔵造り。中は居酒屋さんになっているようで、こんなところで飲んでみたいと真っ昼間から吞兵衛の血が騒ぎます。
その隣にも、喫茶店の看板の掲げられた立派な土蔵が。住宅街に溶け込むように残される、古き良き建物。初めて訪れたけど、沼田は歩いていて楽しい街。
再び国道120号線沿いに歩いてゆくと、ガラス張りの小屋の中に大きな天狗を発見。ここ沼田には天狗伝説の残るお寺があるそうで、この大天狗面は夏のお祭りで担がれるのだそう。
立派な天狗に別れを告げ、次なる目的地を目指して進む道。時折現れる味わい深い建物に、見知らぬ街を歩く楽しさを噛みしめます。
商店街を外れて右折すると、小学校の入口に建つ冠木門が。ここにはかつて、沼田城の大手門があったそう。
そのまま小学校沿いに進み沼田城跡へ。現在は本丸や二の丸跡が沼田公園として整備されています。
戦国時代に沼田城を居城としていた真田信之と小松姫の石像。その後ろのこんもりとした部分に、五層にもなる立派な天守閣が建てられていたそう。
庭園や動物の小屋を愛でつつ歩いてゆくと、大きな間口が目を引く立派な町家が。築300年ほどというこの旧生方家住宅は、かつては薬屋として営業していたそう。
本丸、二の丸跡を抜け、北側に位置する捨曲輪へ。林の中を進み北端まで来れば、ぱっと広がる展望。眼下には薄根川の刻んだ谷が広がり、このお城がいかに高い場所に位置しているかが伝わります。
空からは風に乗って雪が舞い、遠くの山並みは白く煙り水墨画のような情景に。晴れている日には、この先に谷川岳が見えるそう。
捨曲輪で河岸段丘のスケールの大きさを体感し、再び本丸へ。ここにはかつて西櫓が建てられていたそうで、その石垣が今なお遺されています。
下から眺めれば、その荒々しい積み方から古いものであることが見て取れます。この石垣は真田氏時代に築かれたものだそうで、沼田城の貴重な遺構となっています。
天空の城下町の異名を持つ沼田。こうして見てみると、駅との比高はかなりのもの。上越線で何度も通っていた場所に、そこから見えぬ高台にこんな街が広がっていたなんて。その発見があるからこそ、旅することをやめられない。
古き良き情緒が残る城下町に別れを告げ、そろそろ駅方面へと戻ることに。広がる眺望に爽快感を覚えつつ、すごい勢いで下る坂道を進みます。
細い急坂を下りきると、榛名坂と呼ばれる通りへ。その脇には、これまた年代を感じさせる渋い建物が。壁に掲げられたホーロー看板が、その趣を一層深いものにしています。
さらに線路に向かって下ってゆくと、沼田の総鎮守である榛名神社が。鎌倉時代に創建されこの地に移って以来、500年近くもの間沼田の街を見守り続けています。
小雪の舞う中、重厚感漂う拝殿でお参りを。初めて沼田を訪れることのできたお礼を伝えます。
このときは予備知識もなく時間の余裕もなかったため見逃してしまいましたが、どうやら築400年ほど経つ社殿には美しい彫刻も施されているそう。これはまた、再訪せねばだな。
榛名神社へのお参りを終え、アンダーパスで線路をくぐり国道291号線へ。駅方面へしばらく進むと現れる『谷川のパスタ エルベ』で昼食をとることに。
グラスの赤をちびちびやりつつ待つことしばし、お待ちかねのスープ納豆とご対面。ちなみにこれでハーフサイズ。レギュラーを頼むとすごい量がくるようなので要注意です。
ボールにはやさしい味わいのスープが張られており、その上には自家製納豆や大葉、トマトのマリネ、天かす、パルメザンチーズ、ツナ、海苔といった個性豊かな顔ぶれが大集合。
添えられたレモンをきゅっと絞り、いざひと口。いや、これ何味だ?分からんけど、ものすごく旨い!国産大豆を谷川の水で仕込んだという自家製納豆は大粒ながらクセがなく、ふっくらほくほくとした豆の風味を愉しめます。
それぞれ主張の強そうなトッピングも、全体を混ぜて食べればあっと驚くほどのまとまりの良さ。それぞれの味わいがスープに溶け出し、それを吸った天かすやチーズ、納豆のねばりが麺に絡み不思議なほど調和のとれた味わいに。
なんだろう、何味なんだろう。表現する言葉が見つからないけど、フォークがどんどん止まらなくなる。口に運ぶごとに、少なくなってゆくボールの中身。それが切なく感じられ、食べ終えるのが惜しいと思ってしまう不思議なおいしさ。
納豆好きとして、出逢えてよかったと思える絶妙な逸品。ここでしか味わえぬ唯一無二の美味を噛みしめ、初めての沼田を舌でも大満喫するのでした。
コメント