しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ①~

10月下旬藤七温泉彩雲荘雪から一夜明けた幻想的な朝 旅の宿

柔らかい明るさに起こされる、山の宿の朝。昨晩降った雪は、景色を一体どんな風に染めたのだろう。そんな期待を込めつつ窓を開ければ、頬を刺す冷気と共に流れ込むこの眺め。朝日の気配が溶け込む朝靄が、山々のみならず僕の心まで包んでしまうよう。

10月下旬藤七温泉彩雲荘雪景色の露天風呂
冷え切った体を温めるべく、凛とした空気の中朝風呂へ。すると残念ながら、露天風呂は凍結のため利用中止。脱衣所から最後の雄姿を眼に焼きつけ、木造りの渋い湯屋でひとり静かに白濁の湯を噛みしめます。

10月下旬藤七温泉彩雲荘雪と岩手山を照らす輝かしい朝日
源泉がドバドバと掛け流される内湯はちょっと熱め。湯上りの火照りを冷まそうと、ぴんと張った空気の中岩手山にご挨拶。まだ夜の名残りを宿す空、それを一気に染めあげようと昇る朝日。雲の下には南部片富士が裾野を広げ、太陽から色彩を授けられるのを待つかのよう。

10月下旬藤七温泉彩雲荘2泊目朝食
神々しさ。それを体現したかのような眺めを心に宿し、布団に転がりぼんやりと。そんな朝の隙間を愉しんでいると、お待ちかねの朝食の時間に。今日もテーブルにはおいしそうなおかずが並んでいます。

たらこや焼鮭ももちろんのこと、山で食べたい山菜たち。根曲がり竹の味噌漬けは、味噌のコクと根曲がり竹の風味が美味。ふき味噌や山うどのほろ苦さ、いぶりがっこの薫香も熱々の白いご飯を誘い、満腹になると知りつつもやっぱり2度もおかわり。

10月下旬藤七温泉彩雲荘今年最後の営業を終えようとする宿に別れを告げる
パンパンになったお腹を落ち着け、内湯で最後の一浴を。毛穴に心にと硫黄分を隅々まで染み込ませ、今年最後の営業を終えようとする宿に別れを告げます。

その刹那、「ありがとうございました。また来年!」と声を掛けられ、思わず胸が熱くなってしまう。

こちらこそ、今回も良い湯良い味良い時間を味わわせてもらい、本当にありがとうございました。毎年通えるほど簡単に来られる場所ではないけれど、絶対に、絶対にまた来ます。そう再訪を強く誓い、送迎車へと乗り込みます。

10月下旬藤七温泉彩雲荘の帰りに八幡平さくら公園でバスに乗り換え
実はこの日、路面凍結のため松川温泉までの区間は一般車全面通行止め。え?帰れない?会社にごめんなさい?と思っていたところ、宿の車の先導で山を下りれるとのこと。

我々の乗ったワゴン車を先頭にみんなで慎重に山道を進み、紅葉のきれいな秋の世界へと無事に帰還。季節を遡るという貴重な体験を経て、送迎バスの乗り換え地点である八幡平さくら公園へと到着します。

10月下旬八幡平さくら公園から望む岩手山南部片富士
輝く太陽に目を細め、全身に陽射しを受けつつ眺める岩手山。体を包む温もりに、先ほどまでの銀世界がまるで幻であったかのように思えてしまう。

10月下旬秋の八幡平青空と白い雲の下横たわる八幡平
愛する南部片富士の雄姿を瞼に焼き付け、盛岡へと向かう送迎バス(残念ながら廃止となりました)に乗り込みます。宿やペンションの並ぶ高原らしい道を抜け、開けたところで姿を現す八幡平。アスピーテと呼ばれる盾を伏せたような台地状の独特な山容を、ただただひたすら目で追います。

10月下旬秋の八幡平バスの車窓に広がる秋の長閑な景色
つい先ほどまで、僕はあの山の頂直下に居た。その余韻に浸りつつ、標高を下げるバスにただ身を委ねるのみ。

良い旅をした時だけに得られる、充足感と少しばかりの感傷。胸をチクリと動かすその感覚を抱き、秋色に染まる雄大な岩手の大地をぼんやりと眺めるのでした。

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