しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ⑥~ | 旅は未知連れ酔わな酒

しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ⑥~

10月下旬秋の盛岡旧第九十銀行本店本館もりおか啄木・賢治青春館 旅行記

現代の街並みに溶け込むように、古き良き建物が残されている盛岡。岩手銀行旧本店に別れを告げ、そんな街並みを愉しむべく再び歩き始めます。

中津川沿いに進むと、すぐに現れるもりおか啄木・賢治青春館。先ほどの赤レンガ館より5か月ほど早く竣工したというこの建物は、旧第九十銀行本店本館として建てられたものだそう。同じ時代の建築ですが、こちらは近代のビルヂングへと通ずるような端正な雰囲気を纏っています。

10月下旬秋の盛岡町家の並ぶ鉈屋町
秋の日は釣瓶落とし。早くも弱まりはじめた日の気配を感じつつ、古い町家の並ぶ鉈屋町へ。この辺りは街道や北上川の河岸など、古くは城下町の玄関口として栄えた場所。緩くうねる古い街並みに、藩政時代からの歴史を感じます。

10月下旬秋の盛岡清掃中の大慈清水
渋い町家を愛でつつ歩くと、水場として使われている大慈清水が。前回訪れたときもそうでしたが、今は水が抜かれて清掃中。暮らしに溶け込む生活用水は、都市盛岡の中で現役としてこうして大切に残されています。

10月下旬秋の盛岡盛岡八幡宮の赤鳥居
古の暮らしの息遣いが宿る街並みを抜け、秋色に染まりつつある盛岡八幡宮へ。立派な赤鳥居の奥には、色付き始めの深い森が広がります。

10月下旬秋の盛岡色とりどりの菊の浮かぶ盛岡八幡宮の花手水
まずは手を清めようと手水へ向かうと、水面に浮かべられた色とりどりの菊の花。艶やかな秋色の競演に、旅先での季節感は一層深まるばかり。

10月下旬秋の盛岡盛岡八幡宮拝殿
340年以上もの長きに渡り、城下盛岡を見守り続けてきた八幡様。深い森に抱かれ佇むお社に、今回もこうして岩手で豊かな時間を過ごさせてもらえたことのお礼を伝えます。

10月下旬秋の盛岡盛岡八幡宮秋色の木々の間に聳える岩手山
今日は見えるかな?そんな淡い期待を抱きつつ振り返れば、大きな木々の間に聳える岩手山。秋色を纏いつつある色合いに、日差し弱まりゆく午後の空。なんだろう、この旅ももう終わりだという実感が急に湧いてきてしまった。

10月下旬秋の盛岡夕刻の菊の司の酒蔵
迫る夕刻の気配にちょっとばかりの切なさを抱きつつ、駅方面へと戻ることに。市街地の中、立派な酒蔵を持つ菊の司。今回の旅でもおいしいお酒を頂きました。

10月下旬秋の盛岡青銅の上ノ橋擬宝珠越しに眺める中津川
さらさらと流れる中津川を渡る、上ノ橋。欄干には飾られた青銅の擬宝珠は、400年以上も前に造られたものだそう。洪水の度に流出を繰り返すも、奇跡的に今なおこうして橋を行く人々の目を愉しませています。

10月下旬秋の盛岡夕刻の岩手県公会堂
中津川を渡り、盛岡の官庁街へ。その一画、渋い姿で佇む岩手県公会堂。県議会の議事堂として建てられた重厚な建築は、90年以上の齢を重ねた今でも現役として働き続けています。

10月下旬秋の盛岡秋色に染まる石割桜
盛岡らしい巨岩の割れ目から大きく枝を伸ばす、石割桜。樹齢360年を超えるという古老は、全身に秋色を纏い来る冬に備えているかのよう。

10月下旬秋の盛岡路地に残る土蔵と板塀
一旦翳り出すと、加速度的に夕闇が近づく秋という季節。その早さに気圧されつつ、夕暮れの気配が支配しつつある街並みを駅目指して進みます。

10月下旬秋の盛岡灯りの灯る夕暮れ時の開運橋
そしてついに戻ってきてしまった、開運橋。灯りをともし佇む姿に、思わず切なさがこみ上げる。行きはよいよい、帰りは寂しい。そう思えるということは、それだけこの旅も充実していたという揺るぎない証。

10月下旬秋の盛岡開運橋から望む岩手山の夕景
よし、仕方ないから東京へと帰るか。そう意を決して、優美なアーチへと足を踏み出します。橋上からは、夕暮れの空に雄大な裾野を広げる岩手山。今回の旅ではずっと頭を隠していましたが、最後にその美しい姿を見せてくれました。

今回も、本当に、本当に、良い旅だった。東京から出ることもままならず、想いを馳せることだけしかできなかった東北。その願いがようやく実り、2年ぶりに岩手へと戻ってくることができた。そんな今回の旅で得ることのできた様々な想いを胸に、暮れゆく南部片富士をいつまでも眺めるのでした。

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