8月下旬、またも僕はここに立っていた。幾多もの旅客機行き交う羽田空港、その滑走する姿を見渡す展望デッキ。今年に入り何度目かの搭乗だけれど、旅立ち直前に眺めるこの光景はいつも胸を高鳴らせる。
冬の札幌、帯広から幕を開けた、2024年の旅。あの旅は、本当に偶然の産物だった。そして今回のこの旅も、北海道の翼のおかげ。
最近のスマホはとても賢く、ニュースに交えてエア・ドゥがまたセールやるってよ!と誘惑してくる。その開始日を見ると、明日から。あくる日ダメもとでHPを開いてみると、なんと往復釧路に空席あり。こうなったらもう行かねば、だよね。
ベア・ドゥちゃん、久しぶり!前回は最高の冬旅をありがとう。今回も僕を、晩夏の道東へと連れてっておくれ。
時刻は16時台、夕方へと向け離着陸が激しくなる時間。滑走路の手前でしばし渋滞に巻き込まれつつ、白いくまちゃんの翼はたんちょう釧路空港へと向けいざ離陸。
小型機らしく、急上昇で大空へと昇ってゆくB737。最近単通路機に乗る機会が多いせいか、もうすっかりこのサイズならではの機敏さの虜。あれよあれよという間に旋回し、遠ざかる下界にはきらきらと西日に染まる多摩川と東京湾。
黄金色に輝く機窓に目を細めていると、針路を北へととるため再び旋回。眼下には、東京ゲートブリッジに葛西臨海公園、そして現実を痛感するお値段となった夢の国。
前回は、行きも帰りもご本を読むベア・ドゥちゃんだった。今回僕を釧路へと連れて行ってくれるのは、カートに乗ったベア・ドゥちゃん。振り向き手を振るかわいい姿の横には、黒々とした夏の姿の日本最高峰。
愛らしいベア・ドゥと富士山の共演も束の間に、B737はさらに上昇を続けついに雲上へ。どこまでも広がる白い雲海、成層圏を感じさせる深い青。本来ならば神様しか眺めることのできなかったはずの、あまりにも神秘的な対比に息を呑む。
夏の夕刻前、西日に煌めく眩い機窓。小型機らしいまったりとした空気感に身を委ねていると、お待ちかねの機内サービスが。
もちろん今回も、北海道ぎょれんの北海道生まれほたてのスープを。本当にこれ、旨いんだよな。余分な装飾のない、ほたての良さを凝縮した最高のスープ。お腹へと落ちる前に、すっと心身に沁みてゆく。そんな優しい味わいが、これから向かう大地への期待を高めてくれる。
やっぱり北海道に飛ぶなら、エア・ドゥがいいな。赤い翼や青い翼とも違う、なんとなくアットホームな雰囲気漂う機内。飛び交う北海道弁も懐かしく、注文率の異様に高いほたてのスープの香りが機内に満ちるのもまた善き。
1月に初めて乗って以来、すっかり好きになったエア・ドゥ。今回も穏やかな空の旅を愉しんでいると、雲間からはついに北の大地が。
雄大に弧を描く海岸線、雲海から頭を覗かせる黒々とした山々。ベア・ドゥの描かれたウイングレットは夕陽に輝き、機窓に移ろう幻想にこころを震わせずにはいられない。
B737は、一点を定めたかのように意を決して最後の降下。白い雲を抜けたかと思えば、そこに広がる幽玄の世界。僕はこれから、ここに降り立つのか。緑に染まる大地との距離感に比例し増してゆく、未知なる旅への高揚感。
高校生の時に乗り換えのため立ち寄っただけで、今回初めてきちんと旅することになった釧路の街。何度旅を重ねても、この瞬間はゾクゾクする。未だ実感の湧かぬ僕を乗せ、北海道の翼はたんちょう釧路空港に無事着陸。
これから始まる、2泊3日。ここで一体、どんな旅と出逢えるのだろう。未知なる地への期待に胸を膨らませ、ベルトサインが消えるのを今か今かと待ちわびるのでした。
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