高地で迎える静かな朝。窓の外を見てみれば、あたりは霧に包まれ真っ白な世界。その幻想的な眺めに一瞬見とれそうになりますが、今日は八幡平を歩く予定。これ、大丈夫なのかなぁ。
強まりつつある雨足の中朝の露天風呂を味わい、お腹も空いたところで朝食の時間に。朝もバイキング形式で、いかにもご飯に合いそうなおかずがずらりと並びます。
その中でも特に目立つのが山菜を使った品々。わらびのおひたしはシャキッとした食感とぬめりが美味しく、うどの煮浸しは独特の香りとちょっとした苦味が心地いい。
根曲がり竹の味噌漬けはご飯にピッタリのコクのある味わいで、ばっけ味噌はほろ苦く香るふきのとうの風味がたまりません。その他にも手造り感のある煮物やたらこ、焼鮭といったおかずと共に、ご飯をたらふく食べてしまいました。
静かな部屋に響く雨音に耳を傾けつつ、ごろりと微睡む食後の時間。出発までの怠惰をしばし愉しみ、チェックアウトし雨の中へと歩き出します。
強まる雨の中、ひたすら坂を上ること30分。ようやく『八幡平山頂レストハウス』になんとか到着。それにしても、寒い。夏なのに、寒い。8月で寒いということを経験したのは、20年以上前に訪れた宗谷岬以来のこと。日本って、広いなぁ。酷暑極まる関東と同じ国とは思えない。
窓際のオイルヒーターで何とか暖をとっていましたが、それでも一度芯から冷えた体は温まりません。ということで、軽食コーナーでちょっと早めのお昼を食べ、体の内側から温めることに。
カレーや牛丼、おでんといったメニューがあるなか、今回選んだのは源太カレー稲庭うどん。岩手産の牛すじを煮込んだというカレーは、牛のコクの中に広がるちょっとしたスパイシーさが特徴。すじもとろりと柔らかく、細麺の稲庭うどんによく絡みます。
美味しいカレーうどんにほっと一息つき、あとはひたすらじっと時間が過ぎるのを待つのみ。本来ならば散策に充てようと思っていた2時間ほどを、レストハウスの中でぼんやりと過ごします。
そしてついに、待ちに待った『羽後交通』の田沢湖駅前行きバスが到着。ちなみにこの路線、八幡平頂上発はGW、お盆、紅葉シーズン以外は平日運休となっているので、行程を組む際は要注意です。
濃い霧の中、巧みにハンドルを操る運転手さん。勝手知ったる道なのでしょうが、毎度のことながら山道を運転するドライバーさんの職人技に感服します。
標高を下げるにつれ、曇天ではあるもののすっかり晴れた霧。車窓には豊かな緑の中水を湛える八幡平大沼が見え、その周囲には思い思いの形で憩う人々の姿が。
夏という季節を愉しむレジャー客。絵に描いたような高原の風情を愛でつつ、心はすでに温泉へ。あの有名な温泉は、その名に負けぬ強烈さだった。今思い返しても、唯一無二の湯浴み体験。そんな大地の恵みとの出会いを目前に控え、逸る気持ちを抑えバスに揺られるのでした。
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