懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 3日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

懐かしく、そして未知なる瀬戸内へ。~讃備芸予を渡る旅 3日目 ③~

5月中旬の瀬戸内初めての今治駅 旅グルメ

向東バスストップから多島美と橋の連続を愉しむこと約1時間、しまなみライナーは今治駅に到着。バスはこの先街の中心に近い今治桟橋まで行きますが、寄りたいお店があるためここで途中下車。

5月中旬の瀬戸内今治名物焼豚玉子飯の元祖ともいわれる白楽天
駅から歩くこと10分足らず、お目当てのお店である『白楽天』に到着。この日は日曜日、お店の前は順番待ちの人で結構な混雑。ですがランチタイムはあの名物を中心にメニューを絞っているため、意外と早めに無事入店。

5月中旬の瀬戸内今治名物元祖ともいわれる白楽天の焼豚玉子飯
うわぁ、まわりのみんな旨そうに掻き込んでるよ。食欲中枢を刺激されつつ待つことしばし、お待ちかねの焼豚玉子飯とのご対面。

今や今治名物となったこの料理ですが、もとは老舗の中華屋さんの賄いとして食べられていたものだそう。そこで修業したこのお店の創業者が、独立の際にメニューとして提供したことが発祥とされています。

ドンと載った目玉の片目をざっくり潰し、下に隠れるチャーシューやご飯と馴染ませレンゲでひと口。その瞬間、本能で察知する甘美な中毒性。決して意外性のある組み合わせではなく、味も想像していたものに近い。でもその旨さは、それを軽く超えてゆく。

現代ではちやほやされがちなとろとろ系とは一線を画す、しっかりとした赤身のチャーシュー。いや、チャーシューではなく焼豚と呼ぶに相応しい、肉々しさを感じさせる凝縮感。

載せられた目玉焼きは、中華屋さんらしく高温かつ多めの油で焼かれた香ばしさが堪らない。白身部分は、下はバリっと上ふるり。黄身はほとんど生で、これがまたご飯や焼豚によく絡む。

そしてそれらとご飯の仲を取り持つのが、特製のしょう油ダレ。甘辛く、それでいて濃すぎず。全体をぐちゃっと混ぜて頬張れば、派手さはないがしみじみと沁みゆく旨さが口中を満たしてゆく。

片目をそのままの状態で味わい、続いて味変用として置いてある調味料のなかから辛くなるソースを垂らして後半戦へ。これがまた食欲をそそる旨辛さで、まろやか素朴だった味わいが華やかに変化。

旨いよ、旨い。シンプルながら、確実に期待を超えてゆく旨さ。これはダメだ。帯広で豚丼に出逢ったときの衝撃に似ている。意表を突くような刺激的な旨さではなく、さりげない中毒性が穏やかに、しかし確実に浸食してくる魅惑の味。どんどんどんどんレンゲが進み、あっという間に平らげてしまいます。

5月中旬の瀬戸内今治お堀に海水を引き込んだ今治城
はぁ旨かった。これは3日に一度は食べたくなるやつだ。シンプルな組み合わせだからこそ、焼豚のおいしさや絶妙な卵の焼き加減が光るのだろう。人々に長く愛されるには、やっぱり理由があるんだな。ありそうで、ない。東京では味わえぬ味覚の余韻に浸りつつ、近くの今治城まで行ってみることに。

5月中旬の瀬戸内今治日本三大水城のひとつである今治城山里櫓から城内へ
昨日訪れた高松城とともに、日本三大水城に数えられる今治城。この広々としたお堀にも海水が引き込まれ、かつてはお堀から海へと船で直接出入りできたそう。

5月中旬の瀬戸内今治別名吹揚城とも呼ばれた今治城跡に鎮座する吹揚神社
吹揚城の異名をもつ今治城、その城跡は現在は公園として市民の憩いの場に。ボールで遊ぶ子どもたちを横目に天守閣に近づいてゆくと、その入口には立派な石鳥居が。

5月中旬の瀬戸内今治別名吹揚城とも呼ばれた今治城跡に鎮座する吹揚神社にお参りを
かつての城名から名付けられたという、吹揚神社。市内に鎮座していた4つの神社を合祀し、明治5年にこの地に遷座されたそう。初めてこの街を訪れることのできたお礼を伝えます。

5月中旬の瀬戸内今治模擬天守である今治城天守閣
明治維新後にほとんどの建物が破却され、石垣と内堀に江戸時代の姿を遺すのみ。現在は、かつて存在していたとされる模擬天守が本丸の北隅櫓跡に建てられています。

5月中旬の瀬戸内今治城鉄御門から城外へ
昭和末期から、史料をもとに外観復元が進められてきた城跡。入城時に通った山里櫓は35年前、そしてこの鉄御門は18年前に復元されたそう。

5月中旬の瀬戸内今治城鉄の頑丈な守りが印象的な鉄御門
今治城における正面の入口であったという、鉄御門。表へと回れば木製の門扉は黒々とした鉄で覆われ、重厚感とともに迫りくる威圧感が印象的。

5月中旬の瀬戸内今治城お堀端から改めてその雄姿を眺める
かつて吹揚の浜と呼ばれた砂地に築城された今治城。満々と海水を湛える広いお堀、弱いはずの地盤に今なお遺される荒々しい石垣。その雄々しくも優美なお城の全貌を今一度眼に焼き付け、そろそろこの街ともお別れの時間。

5月中旬の瀬戸内今治大通りに面した今治市公会堂前に建つ巨大な船のスクリューオブジェ
当初はお城から駅までバスで戻る予定でしたが、思っていたよりも近いため歩いていくことに。桟橋前からのびるレトロなアーケードを通り、車の多く往来する大通りへ。するとそこには、金に輝く巨大なスクリュー。

日本屈指の造船の街として知られる、今治。17年前、自転車で駆け抜けたときも建造中の巨大船を眺めて感嘆したものだった。焼豚玉子飯の旨さに心酔し、白亜の水城を眺め。あのときは通過しただけだったけれど、ようやくこうして訪れることができた。

この街には、串に刺さない焼き鳥やせんざんきといった名物がまだまだある。今度は泊まって呑まなければ、だな。そんないけない妄想を胸に、小雨の降りだした道を急ぐのでした。

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